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華山鋼鎧呼法
かざんこうがいこほう



流派: 華山流
使用: ・牙大王 (対 ケンシロウ
 …北斗の拳(37話) アニメ版(29話)
・牙大王 (対 ラオウ)
 …劇場版 北斗の拳
・牙大王(対 レイ)
 …パンチマニア
登場: 北斗の拳/アニメ版/劇場版/パンチマニア/PS版/北斗無双


 自らの肉体を鋼鉄の鎧と化す呼吸法。体は黒く変色し、どんな攻撃も通用しなくなる。牙大王ケンシロウとの戦いで使用し、叩き付けられた鉄骨をひしゃげさせるほどの硬度を見せつけた。しかし秘孔大胸筋によって筋肉をぶよぶよの脂肪に変えられたことで効果を消失させられた。

 『劇場版 北斗の拳』では、拳王軍を相手に使用。兵たちを圧倒するが、ラオウ闘気波によって遥か彼方へと吹き飛ばされ、岩山に衝突。その後、全身にひびが入り爆死した。




 肉体が鋼鉄になるのは、北斗の拳では割とよくある事。しかしそれらはあくまで「鋼鉄並の硬度になっている」というだけ。だが華山鋼鎧呼法は違う。黒ずんだ肉体だとか、殴られた時の「グワングワワーン」といった擬音だとか、凹んだ箇所がポコン!と戻る時の様子から見ても、限りなく本物の金属に近い状態に変化していることは間違いない。


 呼吸法で肉体を硬化するのは現実の武術にも存在する。だが金属化となればそれはもう武道の域ではない。もっと別の、化学的なアプローチが必要になるだろう。


 調べた所、有機体を金属に変化させる方法は幾つかあるらしい。その一つが、レーザー照射を用いる手法。これは特定の波長の光を浴びせることにより、有機物質を構成する分子配列を変化させるというものだ。



 アニメ版では、鋼鉄化する前に牙大王の身体が発光していた。これが、上で述べたような「分子配列を変化させる光」なのかもしれない。つまり牙大王は、特殊な波長の光を体内から放射できる能力者であり、その光によって有機体(自分の肉体)を金属へと変化させているということだ。
 問題は、金属に変化した肉体をどうやってまた有機体へと戻すのかだが、もうそこまでは知らん。でんじろう先生に聞いてくれ。
 




 『劇場版 北斗の拳』では、ラオウの剛掌波を受けた牙大王が遥か後方の岩山まで吹っ飛ばされ、その後全身にヒビが入り、ニュルッニュルッと肉が飛び出しながら爆散するシーンがある。いや〜グロいですね。
 ここで注目して欲しいのは、肉の断層。これを見る限り、どうやら鋼鉄化しているのは表皮の部分だけらしい。まあ筋肉や内臓まで鋼鉄になったら生きていられないので、当然と言えば当然ではある。


 「こんな1cm程の厚みしかない鋼鉄であれだけの硬度を出せるものなのか?」と思われるかもしれない。だがそこは心配ご無用。何故ならこの鋼鉄膜の下には、華山角抵戯で鍛え上げられた筋肉があるからだ。ノーマル状態でも石柱や娥媚刺をものともしない筋肉の上に、更に鋼鉄の鎧を纏っているのである。これは硬いですよ。カッチカチですよ。そりゃ殴ってみろって余裕かましたくもなりますよね。


 だがこれにはマイナス面もある。鋼鉄を全身に纏っているのだから、当然その重量は相当なものであり、動きの鈍化は免れない。また関節までカチカチなのだとすると、かなり動きも制限されるはず。つまり攻撃面においては弱化している可能性が高い。事実、牙大王が攻撃に転じる場面は殆ど無いし、あっても頭突きが殆どであった。頭突きはあまり大きな動きを必要とせず、体重も活かせるので、華山鋼鎧呼法とは実に相性のいい攻撃手段と言える。流石は頭脳派である。


 しかしバトルの華と言えばやはり攻撃。いくら防御面を極めようとも、攻撃が当たらなければ勝ちは訪れない。何故牙大王はこんな偏った技を修得するに至ったのであろうか。


 その秘密は、おそらく彼の過去にある。



 牙大王の顔面を見て欲しい。縦に走る巨大な古傷が見て取れる。その大きさから見て、命に係わるほどの重傷であったに違いない。
 この傷は、かなり若い時分に負った可能性が高い。華山角抵戯を修得していたならば、こんな深い傷がつく筈がないからだ。まだ拳法もろくに学んでいない頃に、生死を彷徨うほどの重傷……それは若き日の牙大王にとって相当なショックであり、恐怖であり、トラウマとして刻まれたことだろう。もうあんな思いはしたくない。絶対に傷を負いたくない。そんな強い思いを抱いたが故に、彼は超防御特化型の拳法である華山角抵戯を修得し、更にその先にある華山鋼鎧呼法という奥義を身に付けるに至ったのではないか。牙大王にとっての華山鋼鎧呼法とは、顔と心の傷から生み出された痛みへの拒絶、あらゆる攻撃に対する絶対不可侵領域。それつまりATフィールドなのである。




 劇場版北斗の拳では、拳王軍を相手に披露し、体が赤く光った後、下腹部から徐々に鋼鉄化するという演出になっている。また、先程この技は攻撃面において弱いと解説したが、今作では少し叩いただけで敵がグチャグチャ潰れていくという異常なパワーまで付加されている。いや流石にやりすぎだわ。グロを描きたい欲が強すぎて必要以上にバフかけられている感じがする。


 ゲームでは「北斗無双」シリーズに頻繁に登場する。"頻繁"というのは、牙大王に限らず、巨漢の雑魚までもがこぞって使用してくるからだ。こんな奇妙奇天烈な奥義をベーシック技にしてほしくないし、硬くて超ウザいのでやめてほしい。