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北斗の拳5
天魔流星伝 哀★絶章







1992年7月10日に東映動画が製作、発売したスーパーファミコン用ソフト。北斗の拳を題材としたRPGの第三弾。2000年の封印から目覚めた魔皇帝を倒すため、天帝の血を引く主人公が仲間達の力を得て成長していくストーリー。

 セガサターン版北斗の拳と並ぶ残念ゲーとして名高いこの作品。特にその奇妙奇天烈なシナリオは、両親を殺されたリンが如く、そのショックで声を失う人が続出した。本来ならパラレルワールドなんだから何をやったって文句の付けようはないはずなのだが、それを踏まえてもファンにこのストーリーを受け入れろというのは正直酷な話である。ツッこまずにはいられないポイントがあまりにも多すぎる。小学生30人が一週間知恵を絞って書き上げたような、壮大な馬鹿シナリオである。

 今でこそ存在を受け入れられるようになったが、やはり当時の一番の問題は「天帝拳」の使い手なる完全オリジナルキャラクターが主人公だった事だろう。ケンシロウやレイやトキといった原作のヒーロー達が惜しげもなく登場するのに、主役はいつも見知らぬアイツ。これでは盛り上がるものも盛り上がらない。もし主人公をPTから外せるシステムが搭載されていたならば、殆どのプレイヤーが原作キャラで固めた4人で旅していたであろう。こんなキャラゲーに、原作キャラを超えるほどに強いオリジナルキャラなど誰も望んではいないのである。

 敵役の魔皇帝軍の設定が薄すぎたのも失敗の1つだろう。前作北斗の拳4では「表南斗に追放された裏南斗六聖拳」「元斗皇拳と北斗琉拳が融合した元斗琉拳」といった、安易ながらも子供心にワクワクさせる設定の敵が登場してきたのだが、本作はそういった敵側の設定が全くない。魔皇帝が「魔皇拳」を使うというだけで、その配下の者達はどんな拳を使っているのか全く明らかにされないのだ。そんなわけがわからん奴らに、原作キャラのヒーロー達が苦戦させられるような展開を見せられても、面白かろう筈がない。

 それでは原作に登場したキャラの扱いはどうなのかと言われると、これも決して褒められたものではない。ケンが岩に潰されて死ぬのをはじめ、レイが変な仮面を被らされたり、アインが自分で割った岩に潰されたり、シンが酒に溺れたり、ファルコがジャコウに幽閉されたりと、目を覆いたくなるような英雄達の有様が次々と登場する。しかしこれだけ多くのキャラが登場している割には、一応それぞれに見せ場は用意されているし、こんなストーリーの中ではよく頑張った方だとも言える。シュウやユダに関しては原作以上の活躍もしているし、全く救いようがないというほどでもない。ただやはり、この魅力あふれる猛者たち全員が、主人公を補佐するだけの存在であることが物語を盛り下げている事は間違いない。本来天帝とはそういう存在なのかもしれないが、実際にやられると凄い違和感だ。まるで全員が天帝をワッショイする妖術にかけられているかのようである。

 勿論RPGとしてもクオリティは低い。特に目新しいシステムが組み込まれたわけでもなく、どこも変わり映えしない街並み、ダンジョンと、SFCのスペックが全く生かされていない。まあ前作から僅か1年ちょいでの発売という期間の短さから考えても、大幅な進化は期待など臨むべくもないのだが・・・。ただ1つ、子供心にツボにはまったのは、敵が死ぬ時の「あーっべっしっ!!」の断末魔ボイスである。これがなかなか爽快で、奥義で敵を一掃した時などは大変心地よかったりする。他のRPGでは真似できない、北斗ならではの部分であろう。あべしだけでなく、もう少しバリエーションがあれば、それだけで作品の評価も上げられたのではないかと思う。そういえば前作のレビューでも同じような点を褒めたな。やはり北斗の拳という作品の置ける断末魔というものの存在は限りなく大きいのであろう。

 次作の北斗の拳6からは、時代に乗っかって格闘ゲームになってしまったため、結局この作品を最後に北斗の拳のRPGは製作されていない。まあガンホーが出したオンラインゲームも一応RPGのようなものなのだが、それも7億の赤字を出す大失敗に終わってしまった。やはり北斗の拳という作品はRPGとは相性が悪いのかもしれない。