TOP

ケンシロウ



登場:全作品
肩書:第64代北斗神拳伝承者 
流派:北斗神拳
CV:神谷明(TVアニメ、その他)
   河本邦弘(審判の双蒼星、リバイブ、パチンコ系)
   子安武人(新・北斗の拳)
   阿部寛(真救世主伝説シリーズ)
   河野泰治(ユリア外伝モーションコミックス)
   石川英郎(天の覇王)
   小西克幸(北斗無双、イチゴ味)
   古賀一史(DD北斗之拳)
   立花慎之介(DD北斗の拳)
   黒田崇矢(北斗が如く)
   [少年期]
   堀川亮(TVアニメ版)
   花輪英司(ラオウ伝 殉愛の章)
   儀武ゆう子(ユリア伝)
   下野紘(ラオウ伝 激闘の章)
   進藤尚美(真北斗無双)
  [少年期]
   堀川亮(TVアニメ版)
   花輪英司(ラオウ伝 殉愛の章)
   儀武ゆう子(ユリア伝)
   下野紘(ラオウ伝 激闘の章)
   進藤尚美(真北斗無双)

データバンク
身長:185cm(2018年時点では190cm)

体重:100kg
スリーサイズ:132・90・105
首の太さ:45cm
頭の大きさ:59cm
聴力:2km先のないしょ話も聞き分ける
視力:完璧な暗闇でも、生物であればオーラで光の下で見るようにみえる
動体視力:放たれた矢も止まって見える
嗅覚:猟犬なみ
腕の太さ:48cm
リーチ:187cm
足の太さ:63cm
足の長さ:股下92cm
靴のサイズ:29cm
身体の特徴:秘孔を突くために人指し指と中指は、二指禅で特に鍛えられている
味覚:特に毒物などには敏感に反応
声:さまざまな音、動物の鳴きまねができる
肺活量:8700c.c.
握力:計測不能
腕力:計測不能
脚力:計測不能
背筋力:計測不能
筋力:緊張時なら小口径の銃の弾でもはねかえす
足の速さ:100m9秒台
拳の速さ:百裂拳の場合,3秒間に50発
ジャンプ力:9m台
パンチ力:厚さ5mの岩も割る
キック力:200kgの男を25mも蹴り飛ばす
潜水時間:53分間
毒物耐久力:常人の致死量の5倍の青酸カリにも耐える
絶食耐久力:3ヵ月間食べなくても体力が衰えない
睡眠耐久力:1週間寝なくても耐えられる
記憶力:5万語を一度読むだけで記憶・反復できる
誕生日:1970年代
血液型:不明
得意技:北斗神拳以外にも南斗108派の技が使える
得意な武器:ヌンチャク,六節棍・投剣ほか
特技:体内に生体時計を持つ、誤差は一ヶ月で+-3秒
免許:一子相伝北斗神拳の免許皆伝
癖:闘う前に指を鳴らす
口癖:あまりに無口なため誰も知らない
趣味:新しい奥義の開発
好きな食べ物:世紀末では好き嫌いはいってられないのでない
尊敬する人:リュウケン・トキ・ラオウ・シュウ
理想の女性像:ユリア
好きな服装:動きやすく丈夫な革ジャン
病歴:なし
学歴:リュウケンによる超英才教育、特に中国医学には精通


年齢:26〜30歳  ←重要


 一子相伝の暗殺拳 北斗神拳の第64代伝承者。核戦争によって荒廃した世界で、愛のために戦い続ける男。数々の強敵(とも)との戦いの末に哀しみを背負いながら成長し、やがて救世主と呼ばれる存在となる。

 1970年代生まれ。実の兄にヒョウがいるが、その他の家族構成は不明。先代北斗神拳伝承者リュウケンの養子であり、ラオウトキジャギという三人の義兄がいる。婚約者はユリア

 赤子の頃、ラオウ、トキと共に修羅の国を発ち、リュウケンのもとへ。長年に渡って北斗神拳を学んだ末、次代の北斗神拳伝承者に選ばれた。その後、恋人のユリアと共に旅立とうとするが、南斗聖拳シンに襲撃され敗北。ユリアを強奪された上、胸に七つの傷を付けられ、絶望を味わった。その一年後、KINGと名乗り帝国を築き上げていたシンの元へと辿りつき、リベンジを果たす。しかし既にユリアは自ら命を絶っていたことが明らかとなった。

 バットリンと共に旅を続けるうち、三人の義兄が生きていることを知り、北斗の宿命に決着をつける旅へ。自らの名を騙って悪行を働いていた三男ジャギ撃破し、更にカサンドラに捕らわれていた次兄トキを救出。その中で、長兄ラオウが「拳王」と名乗りてこの世の覇権を握ろうとしていることを知り、伝承者としてその覇道を止めることを決意。マミヤの村にて対決に臨み、強い心の力で引き分けにまで持ち込んだ。その後も、強敵レイの死、恩人シュウの死、サウザーの悲劇、そしてラオウとの闘いに果てたトキの姿や、ユリアの兄リュウガとの闘い等を経て多くの哀しみを背負い、それを強さへと変えていった。

 拳王の覇権が間近に迫った頃、南斗最後の将と名乗る人物が、死んだとされていたユリアであることが発覚。彼女の待つ南斗の都へと走り、そこで鉢合わせたラオウと対決。哀しみを背負った者のみが成しうる北斗神拳究極奥義 無想転生によってラオウを恐怖させるが、思わぬ事態によりユリアを連れ浚われる結果となった。その後、同じく哀しみを知って無想転生を会得したラオウと最後の戦いへ。拳技互角の凄まじい激闘の末、最後は互いに無想の一撃を放ち合うも、背負った哀しみの差によって勝利。この世に光を取り戻し、永き時を経て遂に再会したユリアと二人で暮らすため、荒野へと去った。


 数年後、ユリアが死んだことで虚無に落ち、抜け殻となっていたが、ショウザの命をかけた闘いに心動かされて復活。北斗の軍のリーダーとなって戦い続けるリン、バットと再会し、圧政を続ける天帝軍との戦いへと乗りだした。敵の本拠地である中央帝都にて、元斗皇拳伝承者ファルコとの対決に臨むが、捉われていた天帝が救出されたことで闘い理由がなくなり、無益な闘いは終結。総督ジャコウの死と共に帝都は崩壊した。

 しかし、その混乱の中でリンが連れ浚われたため、彼女を追って海を渡り、修羅の国と呼ばれる地へ。修羅達との戦いの中で、かつて己がラオウ、トキと共にこの国から送り出されたという事、そしてラオウがいつかこの国を救うつもりであった事を知り、自らがそのラオウ伝説を継承することを決意。第一の羅将カイオウに大敗を喫するも、シャチ赤鯱の親子によって命を救われ、その逃亡の最中には北斗宗家の血が持つ無限の可能性を垣間見せた。

 怪我から快復後、魔神となった実の兄、第二の羅将ヒョウと闘い、その中で封じられていたヒョウの記憶を覚醒。北斗宗家の秘拳泰聖殿に隠されていること知らされ、そこにあった聖塔から、北斗神拳誕生の逸話、そしてカイオウに対抗するための秘拳を会得。悪を糧に戦うカイオウに対し、愛を掲げた拳で勝利を収め、およそ2000年に渡る北斗宗家の悲話に終止符を打った。

 本国へと帰還した後、ラオウの遺児リュウと共に新たな旅へ。様々な男たちとの出会いの中で、リュウが哀しみを知る心を身につけたため、もはや自分の役目は終わったとして彼の前から姿を消した。
 その後、雷のショックによって記憶喪失となり、運命の導きによって再びバット、リンと遭遇。バットを助けるために記憶の無いままボルゲと対決し、バットの叫びによって記憶と拳を覚醒。かつて己に憧れた少年が素晴らしい男へと成長したことを見届け、再び荒野へと旅立った。


 TVアニメ版では、原作には登場しなかった敵キャラクターとのバトルや、アニメオリジナルの北斗神拳奥義を数多く使用している。また、原作では節目ごとに微妙に衣装が変化するが、アニメでは第一部(ラオウ没まで)は上下青の服、シューズ、右側だけの肩当に統一。第二部(帝都編〜カイオウ没まで)は上下黒の服にブーツ、両側の肩当で統一されていた。
 尚、カイオウ没後のエピソードは、2018年現在まだアニメ化されていない。


 『蒼天の拳』では、第一話の冒頭にて、197X年に日本で誕生した場面が描かれた。立ち会ったリュウケンより、62代伝承者の霞拳志郎から名をとって、ケンシロウと名付けられた。当作品の主人公である霞拳志郎は、ケンシロウにとって義理の叔父にあたる。

 『新・北斗の拳』では、原作終了後の物語を舞台にストーリーが展開。秘孔術による医術を身につけた女、サーラと出会い、連れ去られた彼女を救うため、ラストランドへ。記憶喪失のビスタを神に仕立て上げることで、実質上国を支配していたサンガを倒し、一時的に平和をもたらした。だがビスタの薬を取りに出た隙に、国はサンガの息子であるセイジの支配下に。北斗神拳の一派である北門の拳を使うセイジを倒し、父サンガの呪縛に取り付かれたセイジの魂を救った。

 『真救世主伝説 ZERO ケンシロウ伝』では、シンに敗れた後の空白の一年を舞台に物語が展開。奴隷として連れて行かれたゲッソーシティにて、哀しみを抱えた数多くの者達と出会い、非情の心を持って暴力の世を治めることが北斗神拳伝承者の宿命であると確信。シンと同じ南斗孤鷲拳の使い手であるジュガイとの対決に臨み、勝利を収めた。だがその後、シスカが仕掛けた爆弾によって街は崩壊。人々を救えなかった哀しみを背負いながら、再び荒野へと旅立ち、原作第一話であるリンのいる村へとたどり着くこととなる。

 WEB連載されていた『小説 ケンシロウ外伝』も、「ZERO ケンシロウ伝」同様、シンに敗れた後の期間を描いた作品となっている。未完のまま公式サイトが閉鎖したため、幻の作品となっている。





 世の中には様々な漫画があり、その作品毎に主人公が存在するわけだが、その中でもケンシロウの「主人公度」はトップクラスだと言えるだろう。北斗の拳は、ほぼ丸ごとケンシロウの物語であった。新血愁を突かれて以降のレイや、五車星編におけるラオウ様などに一時的に主役の座を奪われはしたが、それでも必ずケンシロウも物語に絡んできていた。漫画北斗の拳 全246話の中でケンシロウが登場しなかったのは、たった1話だけ。フドウがユリアとの出会いを回想する「第127話 鬼神となりて!の巻」、それ以外の全ての回に登場しているのだ。これは中々凄いことである。(64話も出て無いけど扉絵に居るのでセーフ)

 近年のバトル漫画は、主人公以外のキャラのバトルが多くなってきている。勝敗の予想が付かないことや、普段と違う多様なバトルを描けることで、人気を博しやすいからだ。一方で主人公は、能力もオーソドックスな場合が多く、地味なバトル内容になりやすい。その度合いが強くなると「主人公のバトルが一番つまらない」との声が上がり始め、結果的に作品全体の評価を下げることになる。脇役の人気に頼りすぎるのは、長い目で見れば決して良い傾向とは言えないのだ。
 武論尊先生はそれを早くから察していたのか、北斗の拳はそういった手法を選択しなかった。脇役同士のバトルも何度かあり、その度に高い人気は得たものの、それに頼ることはせず、ほぼケンシロウのバトル一本で通したのだ。にもかかわらず、そこにはクドさやマンネリ感は一切無かった。読者が飽きることのないよう、新しい展開、新しい敵、新しい設定を止むことなく練り続け、それを原先生が圧倒的な画力をもって表現することで、常に衝撃を与え続けたのだ。まさに制作側の熱意から生まれた究極の主人公だと言えるだろう。


 そんなケンシロウの人気、知名度の高さを証明するものがある。それは彼が、数ある漫画のキャラクターの中でも「最もパクられたキャラ」であることだ。正しくは「元ネタにされた」と言った方がいいかもしれない。

 ケンシロウはとにかく"真似しやすいポイント"が多い。劇画調での無表情フェイスに、アニメ版で強調されたゲジマユ胸の七つの傷、用途不明の肩当、激怒して服を破る演出、経絡秘孔という独特の技に、それとセットになっている「あべし!」や「ひでぶ!」といった断末魔「あたたたたー!」という怪鳥音とともに繰り出される無数のパンチ、そして「お前はもう死んでいる」という決め台詞。これらのネタが一度でも使われた漫画作品は、もはや数え切れないほど存在する。漫画をよく読む人なら、おそらく何度もそのオマージュシーンを目にしているはずだ。

 もちろん他の漫画作品にも印象的な容姿、台詞、技をもったキャラクターは多く存在する。怒って金髪になったり、秘密な道具を取り出したり、リングサイドで真っ白に燃え尽きたりするシーンなども、擦り切れるほどこすられてきたネタだ。だがケンシロウの凄いところは、それらに匹敵しうる「パクられポイント」を山のように有している所にある。場面が限定されず、あらゆるシーンでキャラターをケンシロウ化させられるのだ。故に彼はあれほどの頻度で各漫画に登場し続けることが出来るのである。

 近年では、北斗の拳を読んだことがないという若い読者も多いだろう。しかしそれでも上に挙げたようなケンシロウの真似を差し込めば、かなりの確率で北斗の拳からの引用だと気付いてもらえる。気付けなかったとしても、その元ネタから辿って北斗の拳に興味を持ってもらえる切欠になるだろう。そうやってケンシロウは益々多くの人々の知る存在となっていくのだ。圧倒的な個性の多さで人々を魅了し、他作品にそれを模倣させることで更に多くの人々へと拡散させ、いつまでも人々の記憶の片隅に残り続ける・・・。そんな潜伏感染ウィルスが如き方法で、ケンシロウは永遠なる時を生き続けるのである。




●ケンシロウは18歳ではない


 「ケンシロウの年齢は18歳」だという情報がネットで広まって久しい。
 だがこれは完 全 な る デ マ で あ る。


 この情報のそもそもの発端となったのは、かつてテレビ朝日系列にて放送されていた「シルシルミシル」というTV番組だ。その2009年10月8日放送分において、様々なアニメキャラクターの年齢を紹介するという企画があり、そこで「ケンシロウの連載開始時の年齢は18歳」と放送されてしまったのだ。

 だがこのような設定が公式から発表されたことは一度も無い。


 何故番組がこのようなデマを放送したのか。その理由は容易に想像がつく。当時「北斗の拳 年齢」で検索すると、必ず最初にヒットするWEBサイトがあった。そのサイトで公開されていた北斗の拳キャラクターの年齢考察の中で、「ケンシロウの年齢は18歳」と記述されており、番組は特に真偽を確認することもなくこの情報を電波に乗せてしまったのである。
 番組、サイト両方共に、ケンシロウと同じ年齢のキャラとしてシンを併記しており、そしてどちらにも「連載開始時の年齢」という注釈が添えられていた事を考えると、サイトが情報元であることはまず間違いない。メディアのずさんな取材が招いた悲劇と言えるだろう。


 それでもその考察内容が誰しも納得する完璧な内容ならば私も文句は無いのだが、残念ながらとてもそうとは言えない。他所様を悪く言うようで少々気が引けるのだが、その発端となったサイトの開設日は1998年。そして2000年の9月を最後に更新は止まっている状態だ。情報としてはかなり古い。そして考察の内容量も、わずか300字程度の簡素なものだっだ。実際サイトの管理人様も、「この考察は強引なもの」だと記述しておられ、更に別解釈での考察で違う年齢も掲載しておられる。にもかかわらず、メディアはその一部だけを切り取り、さも公式であるかのようにこの情報を流し、この誤解が蔓延した現状を作り出したのだ。許しがたき所業である。



 ならば、ケンシロウの本当の年齢はいくつなのか。

 その答えは、1986年に刊行された「北斗の拳 SPECIAL」の中にある。





Q:核戦争が199X年ということは、今、ケンシロウたちは、学生なのですか?

A:ケンシロウの年齢は、26〜30歳くらいの設定で描かれていますから、設定の西暦を仮に2005年とすると、1986年現在では、7歳から11歳となります。


「26歳〜30歳」

これが現時点で唯一、公式本に記載されているケンシロウの年齢である。どの期間とは書いていないが、本の内容は全て第一部(ラオウ様没まで)を扱ったものなので、当然その期間のケンシロウの年齢の事を指しているものと考えられる。




しかし、それを妨げるものがある。

羅将ハンが語った
「赤子のケンシロウは
 二十数年前に修羅の国より送り出された」

という内容の台詞だ。

 この発言に嘘がないとするなら、ハンを倒した時点でのケンシロウの年齢は20代、つまり21歳〜29歳ということになる。ケンシロウはラオウ様を倒してから長期に渡って姿を消しているので、第一話時点となると、これよりもかなり若いはず。キャラクターの成長具合(主にバットとリン)から、経過年数を導き出した場合、第一話からラオウ撃破までが約3〜4年、ユリアとの隠遁生活が約6〜7年、帰還から帝都崩壊〜渡航で約1年、合計およそ10〜12年が経過したと考えられる。これを先の年齢から引くと、第一話時点でのケンシロウの年齢は、最大でも19歳となってしまう。某サイトの年齢考察が、ケンシロウ18歳説を導き出したのも、ほぼこれと同じような計算式を用いたからであった。



だがこの説には大きな問題がいくつもある。


■キャラクターの見た目に頼りすぎている

 経年数を殆どキャラクターの成長具合から導き出しているというのは、あまりに根拠として頼りない。もとより北斗の拳という作品において、見た目の年齢はほとんどアテにならない。近年では、蒼天の拳にてエリカが僅か一年程の間にとんでもない成長を遂げた。故に、少年少女だったリンとバットが大人になったからといって、6〜7年は経過しただろうと軽々に判断してはいけないのだ。

→約1年→



■ケンシロウがマミヤより年下になる

 ケンシロウがマミヤの村にたどり着くのは、物語の進行度からして第一話からおよそ1年前後であろう。仮に第一話ケンを18歳とするなら、この時点でおよそ19歳ということになる。しかしマミヤはこれより以前にユダに連れ浚われており、しかもその日は彼女の20歳の誕生日であった。ここからマミヤはユダのもとからの脱走し、女を捨てて戦士として戦えるだけの実力を身に付け、誰しもが認める村のリーダーとなり、そして村に巨大なバリケードを作った。普通に考えれば3年以上はかかりそうなものだが、超ハイペースでやって1年で全て終わらせたとしよう。それでもマミヤの年齢は21歳という事になる。つまりケンシロウより2歳以上年上という事になってしまうのだ。両者の関係性から見て、その可能性は限りなく低い。

 ボルゲ編では、マミヤがケンシロウに敬語を使っている場面も確認できる。制作側が、明らかにマミヤを年下として描いている証拠だと言えるだろう。


 つまりマミヤと出会った時、ケンシロウは最低でも22歳、第一話時点で21歳には達していないとおかしいのである。



■199X年は、1999年をイメージしている

 文庫版北斗の拳15巻の巻末にある原哲夫先生のあとがきの中には、このような記述がある。



「199X年は1999年をイメージしていたとのこと。

 一方、蒼天の拳第一話の中で、ケンシロウが生まれたのは197X年だと記されている。197X年から1999年までは、最短でも20年。つまり核が落ちた時点でケンシロウは最低でも二十歳に達しており、そこからの伝承者決定までの期間や、シンに負けてからの一年間を加えると、第一話時点でのケンシロウは22歳以上であると考えられる。




■ケンシロウの失踪期間は「10年」

 年齢考察においてやはり重要なポイントになるのは、ラオウ様を倒した後にケンシロウが戻ってくるまでの期間の長さであろう。それに関し、原作者である武論尊氏はこのように発言されている。




 このインタビューは、「北斗の拳 -LAST PIECE-」(2015年)の公開にあわせて掲載されたものである。そう、まさにその空白期間に起こった出来事を描いたスペシャルエピソードだ。そして武論尊氏はその空白期間を「十年間」と発言しておられるのである。

 最初のザックリとした計算では、空白期間を「6〜7年」とした結果、第一話時点のケンシロウは最大でも19歳となった。これを10年に訂正して計算しなおすと、ケンシロウは更に若返って16歳ということになってしまう。
先ほどまでの考察とまた食い違う。



■「20数年」が「29年」であることは無い

 ケンシロウ18歳説を立証するには、ハンが言った「20数年」を「28年〜29年」と解釈するより他に無い。

 だが辞書を引くと、「数年」というのは、2年から6年の間と記されている。つまり「20数年」というのは最大でも「26年」なのだ。

 それを元に考察しなおすと、やはりケンシロウの年齢は最大16歳ということになる。そこに武論尊氏の「十年間」発言をも組み込むなら、13歳だ。


13歳↓



【結論】

 上記の通り、色々と説を挙げることはできるが、現状では定まった答えを導き出すことは出来ない。頼りにする情報によって22歳以上になったり、13歳以下になったりとバラバラだ。

 逆に言うと、14歳から21歳の間では無いということ。

つまりケンシロウが18歳は絶対にはありえない



 そして理論上はありえても、やはりあの見た目で13歳以下というのは無理がありすぎる。ならばハンの「二十数年前」発言を無視し、22歳以上と考えるべきであり、それなら最初のムック本にあった通り「26歳〜30歳」で良いではないか、というのが私の結論だ。もともと100人から先を覚えられないハンであるし、あの時は致命の秘孔を突かれて朦朧としている状態であった。多少年数を言い間違えることもあろう。

 だが連載終了から30年以上経過した今でも、未だ原作者の口から明確な答えが語られていない以上、それはもう「無い」と考えるべきなのかもしれない。ケンシロウを年齢不詳にしておきたいと原作者が考えているなら、それに従うのがファンである我々の使命と言えるだろう。

ま、そういうことにしておこうじゃないか(ナンシー関風)。




●七つの傷が消えない理由

 ケンシロウの胸には、かつてシンによって付けられた北斗七星型の七つの傷痕がある。あまりに特徴的なこの傷は、ケンシロウのトレードマークとして知られ、物語序盤の頃は「ケンシロウ」という本名よりも、「七つの傷の男」と呼ばれる事のほうが圧倒的に多い程であった。

 その後もケンシロウは、永い旅の中で、いくつもの傷を受けてきた。シンよりも遥かに強い男たちと戦い、そして強力な奥義も数多くその身に受けてきた。にも関わらず、最終的にケンシロウの身体に残ったのはこの七つの傷だけであった。どんな深手の傷も驚異的なスピードで治してしまうケンシロウの身体も、胸の北斗七星だけは何年経っても消すことが出来なかったのだ。

 私が思うに、おそらくあの傷の部分は、体細胞が死滅しているのだと考えられる。状態としては、修羅の国に渡った際のファルコの胸の傷と同じだ。ケンシロウとの戦いの中で秘孔戈穴を突かれたファルコは、同じ箇所に自らの指を突っ込み、闘気によって細胞を死滅させた。これにより秘孔の流れを止めることに成功したが、その代償は大きく、修羅の国へ渡る頃になっても傷は完治しなかった。ファルコとケンシロウの闘いは凄絶を極める死闘であり、他にも多くの傷を受けたはずなのに、結局この傷だけが残ったのだ。この事からも、細胞を死滅させて出来た傷は、他の傷よりも圧倒的に治りが遅いことが判る。いや永久に治ることはないのかもしれない。

 しかし、それが何故ケンシロウの七つの傷にも該当するのかというと、シンの南斗聖拳もまた闘気を用いているからである。北斗や元斗と違い、南斗は闘気と無縁のように思われているフシがあるが、そんな事はない。剛掌波のように気の塊を放つ事は出来ないかもしれないが、肉体に気を満たして攻防力を高める事は、南斗に限らず、実在の拳法においても多く取り入れられている奥義である。普通に考えて、人間がいくら筋トレしたところで、岩や人体をスパスパ切れるはずが無い。あの破壊力や切断力を生み出しているのは、気による肉体の強化、そして硬化を用いているからに他ならない。

 あの時、ケンシロウの肉体を穿ったシンは、その指先に気を込めて細胞を死滅させたと考えられる。その根拠は、あの時のケンシロウの痛がり方だ。ニードルナイフやボウガンの矢をいくら受けても顔色一つ変えないケンシロウが、シンの南斗虐指葬の時だけは、指をおよそ3cm弱ほど突き入れられただけで絶叫していた。つまりそこには、物体が肉体に刺さったという事以上の「何か」が起こっていたはずなのだ。その「何か」こそが、体細胞の死滅。指先に込められし闘気によって、ケンシロウは体内の細胞をジリジリと滅殺され、その壮絶なる痛みが彼を悶絶させていたのである。

 猛烈な痛みを与え、そして傷の治りも遅い。そんな有用な攻撃ならば、他の拳士たちも愛用しそうなものだが、おそらく実戦には不向きな技能だったのだろう。何故なら、体細胞を死滅させるには長い時間を要するからである。あの時、ケンシロウは四肢の腱を切られて動けなかったので、シンは数秒間に渡って指を突きいれ、高級ステーキを焼くが如くじっくりと細胞を死滅させることが出来た。しかし通常のバトルにおいては、あれだけ長時間指を入れっぱなしにさせてくれる筈もない。故に実戦の最中に相手の細胞の死滅させることは殆ど不可能なのである。



 以上の理由から「細胞の死滅説」を推したいところであるが、それ以外にもう一つ提唱したい説がある。それは、あの傷に込められたシンの強い思いだ。

 某るろうに漫画の主人公も、決して消えることのない十字傷を持っている。作中の解説によると「強い思いを込めてつけられた傷は、その者の思いが消えぬ限り消えない」のだという。つまり、ケンシロウの七つの傷が消えないのもまた、シンの残した強い思い・・・死しても消えぬ程のユリアへの激情の愛が原因なのではないだろうか。
 北斗の拳には、女への愛に生きた男は数多くいる。だがマミヤを想うレイも、ユリアを想うジュウザも、レイアを想うシャチも、皆ほぼ悔いのない最期を迎えた。だがシンは、最後までユリアへの心を手に入れることが出来ず、悲哀のうちに死んでいった。その悔恨の念が、ケンの胸にいつまでも七つの傷を残存させているように思えるのだ。

 この「強い思い説」は、単なるオカルト妄想のようにも思えるかもしれない。だが作中には、七つの傷にまつわる更なるオカルティックな現象が起きている。最終章にあたるボルゲ編の冒頭、ケンシロウは雨空に浮かぶユリアの泣き顔を見た後、落雷の衝撃で記憶を失った。注目すべきは、その落雷の直前、ケンシロウの七つの傷が光っていた点だ。

 一体何が起こったのか理解しがたい状況であるが、シンがあの七つの傷に込めたのが「ユリアへの激情の愛」であるとするなら合点が行く。つまり、あの時ユリアが現れたのは、七つの傷を形成する「己への愛」に呼応したからなのだ。死を司る星である北斗七星の星列が、冥界へと繋がる魔方陣の役割を成し、死者であるユリアの霊を現世へと呼び出したのである。
思い出してみるといい。悪魔を召還した時、魔方陣がどうなるか。そう、光るのだ。あの時の七つの傷の発光現象は、冥界のユリアとの交信成功を意味していたのである。

 そしてその後、ケンシロウは何故か記憶を失うことになるわけだが、これも七つの傷との関係があるのかもしれない。
 カイオウがヒョウの記憶を消したときに突いた破孔は(背面から見てだが)北斗七星の形をしていた。もし表面の同様の位置にも記憶抹消の秘孔があったとするなら、ケンシロウの七つの傷の位置とピッタリ符合するのだ。
 更に注目すべきは、あの時ケンシロウの傍に落ちた落雷である。秘孔に効果を及ぼすのは「気」だが、電気もまたシナプスを通じて人体に効果を齎すエネルギーだ。あの時、ケンシロウの傷を光らせていた霊的な力に雷の電気が引き付けられ、ケンシロウの体内へ。1.21ジゴワットの電気は、気と同様の効果を齎し、傷と同じ箇所の秘孔、すなわち記憶抹消という効果を引き起こした・・・。これがあの雨夜に起こった事件の真相なのではないだろうか。

 えっ…と、何の話してたんだっけ儂…




●何故ケンシロウの服は再生するのか

 ケンシロウの怒りが頂点に達したとき、筋肉が驚異的にパンプアップし、衣服が弾けとぶことがある。しかもかなり細かくビリビリに千切れるので、もはや修繕は不可能と見ていいだろう。にも関わらず、すぐ後のシーンではもう服が復活していることがある。これに関し「漫画だから」の一言で片付けられない人も多いようなので、その理由を考えてみよう。


 まず言いたいのは、ケンシロウはイメージほど服を破っているわけではないという事。原作では10回にも満たない。それなのに何故これほどまでに「毎回服を破っている」という印象が強いのかというと、すべてはアニメの所為である。アニメの第一部、シンを倒すまでのケンは確かにほとんど毎回服を破っている。そしてそれよりも重要なのはオープニングだ。83話〜109話の「SILENT SURVIVOR」が主題歌となっているオープニングを除く、全152話の内の125話のオープニングで、ケンシロウは毎回服を破っているのである。ついでに続編である「新・北斗の拳」のOPでもやっている。

アニメ1話〜82話OP アニメ110話〜152話OP 「新 北斗の拳」OP

 たかがオープニングだと馬鹿にしてはいけない。アニメ「巨人の星」で、星一徹が毎回ちゃぶ台をひっくり返し返しているイメージがあるのは、エンディングの影響だと言われているのは有名な話だ。北斗の場合はオープニングで、しかもパターンを変えてまでやっているのだから、さらに強力な洗脳度をもっていた可能性もある。

 だが原作では破っていなくても、アニメではストーリー上でも数多く破っている。計30回以上はビリッといっているだろう。

 しかしこれは簡単に説明できる。よく見ればわかるのだが、アニメでケンが服を破るときは、中の赤いTシャツだけを破り、ジャケットはスルリと後ろに脱いでいる場合が殆どなのだ。


 そして第10話で確認できるように、ジャケットだけはその後にちゃんと無傷で持ち帰っているのだ。全部破っているイメージがあるのも、やはりアニメのオープニングの影響が強いといえるだろう。

 ジャケットの代わりはなかなか無いかもしれない。しかし無地の赤いTシャツなんぞ、チョイと探せばそこらの死体でも身に付けているはずだ。もし無いときは赤く染めればいいだけだし。染料はそのへんにいくらでも転がっているしね・・・。
 
 それでもやっぱり何度かはジャケットごと破っている(もしくは破られている)ことは事実だ。これに関しては、どこかから新しいのを探してきたと考えるしかない。おそらくあの猛暑が続く世紀末で、あんな暑そうな服などだれも着なかったため、割と簡単にストックできたのだと考えられる。バスト132cmのケンに合うサイズの服はそうそう無さそうなものだが、北斗の世界において体型はタブーである。

 あとアニメ23話でケンシロウが靴の綻びを自分で縫って直しているというシーンがあり、これを見て「服もケンシロウが自分で縫っているのではないか?」と思われる方もいるようだ。だが破るときは気持ちいいくらい細切れにして破いているので、あれを修復するのは現実的に無理だろう。細かい破片とか絶対どっか飛んでってるだろうし。




●メイキング・オブ・ケンシロウ

 「鉄のドンキホーテ」の連載を終えた原哲夫氏は、次に描く作品の主人公として、李小龍(ブルース・リー)のような拳法家をイメージしていた。当時の編集者であった堀江信彦氏に相談しところ、「中国武術の中には人間を爆破させられるものがあるらしい」という胡散臭い情報を与えられ、その要素を入れて描き上げられたのが、フレッシュジャンプ1983年4月号に掲載された「北斗の拳(読みきり版)」であった。
 現代の日本を舞台に、一子相伝の北斗神拳の伝承者が悪に立ち向かうというストーリー。その主人公である「霞拳四郎」。彼こそが初代「ケンシロウ」である。爆殺拳法以外に決まった設定が無かった霞拳四郎は、前作「鉄ドン」の主人公である黒須元のイメージをそのまま継承し、明るい性格、饒舌、そして少年の面影残る容姿という、まだ本家ケンシロウとは程遠いキャラクターであった。

 読みきり版が1話、2話とも好評だったことを受けて、いよいよ「北斗の拳」が週間少年ジャンプにて連載されることになった。様々な人選の末、武論尊氏が原作者として選ばれ、氏のアイデアが加わったことで、ケンシロウも大きなモデルチェンジを遂げる。

 まず世界観と共に、映画「マッドマックス2」の要素がふんだんに盛り込まれた。拳法と肉体の力で時代を変えていく話にするには、核戦争で滅んだ世界観が最適だったからだ。無法の荒野に佇むケンシロウ、そして丘の向こうから飛び出してくるバイクの集団。脳内でそういうイメージを描いたとき、武論尊氏は作品の成功を確信したという。

 そしてその世界観に合わせるため、ケンシロウの外見も、メル・ギブソン演じる主人公マックスの容姿がほぼ丸々取り入れられた。上下レザーの衣装に片側だけの肩当などは笑ってしまうくらいそのままだ。読みきり版のときの幼い印象が消え、筋骨隆々スタイル抜群の青年になったのも、この映画の影響だと思われる。


 性格面や細かい所作には、原先生が大ファンであった松田優作の要素が多く取り入れられた。映画やドラマの中での松田さんの仕草、振る舞いを大きく膨らませて描くことで、ケンシロウに無口でアウトローな要素が加わり、これまでの「漫画の主人公」の定番イメージを変えることに成功したという。

 そもそも無口な主人公というは、武論尊作品の定番でもあった。ケンカが起こる場合、仕掛けてくるのは大抵チンピラ側であり、主人公は常に受身であるため、どうしても寡黙になる。故に考えるべき台詞も少なくて済み、勝利した後の決め台詞だけで良いから楽なのだと。ケンシロウの場合は、その決め台詞においても「お前はもう死んでいる」という、読みきり版に登場した印象強いフレーズがあったため、新たに考えるまでもなかったという。


 その他にも、「バットマン」のニール・アダムス、「ターザン」や「コナン・ザ・グレート」のフランク・フラゼッタらの画集にあった筋肉美を、そしてシルヴェスター・スタローン、アーノルド・シュワルェネッガーといった当時の大スターらの要素も取り入れ、「拳四郎」は「ケンシロウ」へと大きく進化していった。


 そして当初からのモデルであるブルース・リー要素も更に勢いを増し、ガンガン作中に盛り込まれていった。その一部をご紹介しておこう。


「死亡遊戯」での構え







・「燃えよドラゴン」でのヌンチャクのポーズ






・「燃えよドラゴン」での傷舐め




・「ドラゴンへの道」でのステップ




・「ドラゴン 怒りの鉄拳」でのゆっくり手を動かす構え




 その他にもブルース・リーの映画をモチーフとしたシーンは数多くあるが、中でもやはり有名なのは「あたっ」「あたたた〜!」という怪鳥音であろう。終盤になって達観したケンシロウは、殆ど構えることすらなくなっていったが、この怪鳥音だけは最後まで使われ続けた。


 このように、様々なキャラクターを混ぜに混ぜて生み出されたケンシロウであったが、肝心の「設定」のほうは全く決まっていなかった。相変わらず「相手を爆発させる拳法の使い手」ということ以外に何一つ定まらぬまま連載が開始されてしまったのである。あの特長的な七つの傷でさえ、「入れ墨感覚のファッションアイテム」として付けたというのだから驚きだ。

 もちろんケンシロウの旅の目的も決まっていなかったのだが、武論尊氏の一声で「女のため」であることに決まった。そこからユリアが生まれ、そして彼女を浚った男としてシンが生まれ、そのシンと七つの傷を結びつけて、あのエピソードが生まれたのだという。これを思いついたとき、武論尊氏は自分の事を天才だと確信したらしい。

 だがシンを倒した事で、ケンシロウは再び旅の目的を喪失。また新たな設定を考えねばならなくなった武論尊氏は、ケンシロウの前身である「霞拳四郎」の名前をみて「"四"が入っているということは四男だから、兄を三人登場させよう」という案を思いつき、ラオウ、トキ、ジャギといったキャラクターを創作。これによりケンシロウは確固たる旅の目的を得て、同時にケンシロウというキャラクターもこの時点でほぼ完成を迎えた。

 ・・・まあ大分経った後に、また故郷とか実の兄とかいう新設定が追加されるのだが、それはまた、別のお話。