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泰山流四束拳
たいざんりゅうしそくけん



流派: 泰山流
使用: コグレ&グズリ&ジラ&ナブリ(対 ケンシロウ)
登場: アニメ版北斗の拳(88話)


 TVアニメ版北斗の拳に登場した、四人が協力して戦う拳法。盗賊団のリーダー・コグレと、その部下であるグズリ、ジラ、ナブリの四人が一体となり、緻密に計算された連携で止むことのない攻撃を繰り出す。その正確な動きは、司令塔であるコグレからの合図によって成り立っている。フドウによると、北斗神拳と言えども侮れない強さを誇るらしい。

 ケンシロウを相手に一方的に攻め続けるほどの強さを見せたが、コグレが指令を出していることを見抜かれ、秘孔 頚接でコグレが動きを封じられると同時に連携は崩壊。全員何も出来なくなり、敗北した。







 この拳の真髄は、緻密に計算された連携にあるという。確かに彼等はその連携でケンシロウとも渡り合えるほどの強さを見せた。だがその連携が崩された瞬間、彼らは何も出来ずに敗北した。「連携」こそが彼らの全てだったのだ。

 また彼等はこうも口にしている。「四束拳とは四人で一体の拳法!我等はこの拳法でこの乱世を生き抜いてきたのよ!」。そう、彼らが世紀末を生き抜けたのは、泰山流四束拳のおかげ。逆にもしそれを有していなかった場合は、今頃どこかで野垂れ死んでいたということだ。

 これらを踏まえて考えると、リーダーであるコグレをはじめ、グズリ、ジラ、ナブリの4人は、個々では大した実力者ではないと考えられる。おそらく雑魚に毛が生えた程度の力量であろう。

 だがそれ故に、この拳法の恐ろしさが浮き彫りとなる。たった4人の雑魚が、「連携」だけを武器に、北斗神拳伝承者と渡り合ったのだ。泰山流四束拳とは、圧倒的な実力差すらも埋めるほどの究極の連携というものを完成させた拳なのである。



 では彼らはどのようにしてその「究極の連携」を完成させたのか。その答えは簡単。ただひたすらに特訓したのである。

 何を当たり前の事を、と思われるかもしれない。だがこんなもの普通は誰も特訓しないのだ。通常、多対一の戦いで「多」が遅れを取る事など無い。4人もいれば数で圧倒できるからだ。故にそもそも連携など必要とされないのである。

 ただ、北斗の拳の世界には1人で100人を倒せる化け物がいる。それ故、多対一を想定した戦い方にも価値が生まれ、「集団殺人拳」と呼ばれる華山群狼拳なども生まれたのだろう。それでもやはり人数差によるアドバンテージは大きい。華山群狼拳にしても、数で押し込もうという考え方は拭えていないように思える。その点、泰山流四束拳は違う。彼らに甘えはない。何故なら弱者だから。己たちが蟻であることを自覚し、どうすれば象を倒せるのかを日々考え、修練に励んだ者達でなければ、この拳を体得することはできないのである。



 もしこの拳を南斗聖拳の上位クラスの拳士が行えばどうなるのだろう。もともとの人数のアドバンテージに加え、究極の連携術が加わるのだから、その力は絶大……ケンシロウをも凌駕する可能性も十分あると私は思う。

 だがおそらく、それが実現することは無い。上でも述べた通り、この拳を修得できるのは弱者のみ。己達の弱さを自覚し、連携に心血を注げる者のみが完成させられる拳なのだ。個人でも十分に強い南斗聖拳クラスの拳士が、果たしてその連携に命を投げうてるものだろうか。メンバーを信頼し合い、完璧なシンクロを成すための練習に日々を費やせるのだろうか。否、無理だ。一人でも勝てるのにこんな連携などに意味があるのか―――。誰か一人でもそう考えた瞬間、四人の呼吸は乱れ、連携は崩壊する。己の才の無さに絶望し、それでも勝利を諦めなかった者達のみが成しうる弱者達の最後の希望。それが泰山流四束拳なのである。



 ちなみに、4人の動きに指令を出しているのはリーダーのコグレだとケンシロウは言っていたが、具体的にその指令とはどのように出されていたのかと言うと…



 おそらくこの眼球の動きであると思われる。

 これだけで細かい指令の全てを伝達できるようになるには、相当な反復練習が必要だっただろう。やはり彼らが相当な努力家であることは間違いない。