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[第88話]
五車星ケンシロウに接近! 
フドウお前は何者!!


 リーダーのシュレンを失い、もはや勝機をなくした朱の軍団であったが、拳王に容赦という言葉はなかった。号令をかけ、一気に部下を突撃させる拳王。結果はやはり拳王軍の圧勝に終わったが、それでも朱の軍団の粘りは凄まじいものだった。彼等を奮い立たせる南斗最後の将の正体に、拳王はますます興味を深めるのだった。

 とある町へとたどり着いたケンシロウ一行。逃げ出したニワトリを掴まえようとして小屋に突っ込むフドウの天然ぶりに、バットやリン達はすっかり打ち解けていた。しかし、ケンの眼だけは、この大男が只者ではないこと見抜いていた。鶏を捕まえてもらった商人は、お礼にとケン達に卵を人数分渡してきた。彼は、病気で寝たままの娘に卵を腹いっぱい食べさせてやりたいという一心で、ニワトリ商になったという男だった。娘のために頑張るのは親として当たり前。男はそう言うが、そんな当たり前のことが出来ないこの世の中にケンは不幸な時代を見るのだった。

 うっかり卵を落としてしまったバットに自分の分を渡したりと、ますます信頼を得るフドウ。とその時、建物の陰からフドウに合図を送るものがいた。小便と偽って彼等の方へと赴くフドウであったが、その姿を見た一人の老人が、驚きの声をあげた。フドウの右腕にある五つの星。それが、南斗五車星である印だと言うのである。フドウが謎に包まれたなんと最後の将からの刺客だと知ったバット達は・・・

 フドウに合図を送ってきたのは、拳王の動きを伝えに来たリハクの部下達であった。拳王の前に敗れ去った同朋、風、炎。二人の死を無駄にせんと誓う、この山のフドウの狙いとは・・・

 町を出たニワトリ商を待ち構えていたのは、コグレ率いる野盗集団であった。問答無用に振り下ろされる剣を、為す術無くその身体に突き立てられる商人。ケン達がそこへ通りがかった時には、既にその命は尽き掛けていた。もう娘に会えない。自らのささやかな願いすら叶えられぬまま、無念のうちに商人は息を引き取った。そして、そのささやかに願いを奪いとった外道共の居場所は、立ち昇る黒煙が示していた。

 焼いたニワトリを頬張りながら、宴会を開く野盗達。だが彼等の笑いは、見張りに立っていた部下の弾け飛ぶ死に様によってかき消された。その死に様から相手がケンシロウだと知ったリーダー・コグレは、拳王軍に入るためのチャンスとばかりに部下達に攻撃を指示。だが一斉に飛び掛った数十人の部下は、これまた一斉に吹っ飛ばされ、絶命したのだった。しかし、コグレの顔に焦りは無かった。コグレと残る3人の部下、グズリ、ジラ、ナブリ。この4人が一体となって繰り出す必殺の拳、泰山流四束拳が、彼等の奥の手だったのだ。前後左右からバラバラに繰り出される矢継ぎ接ぎの連続攻撃に、防戦一方のケン。しかし、ケンの凄まじいまでの動体視力は、"あるもの"を捕らえていた。タイミングを計り、跳躍したケンは、コグレの背後をとることに成功。コグレが秘孔 頚接を突かれ、その動きを止められた瞬間、残る三人もピタリと動きを止めてしまった。他の三人に指令を出していたのは、コグレ。そのコグレの指令無しでは、残る3人はどう動いていいか判らなくなることを、ケンは見抜いていたのだ。追い詰められた4人は、たかが名もない男を一人殺しただけだと、己達の罪の低さを訴えようとする。しかし、その命の重さを理解しようとしない発言は、更にケンの怒りを増幅させただけであった。ヤケクソで襲い掛かってきた3人を簡単に撃退したケンは、バラバラで動く4人を一まとめにして爆死させたのであった。

 全て片付いたかと思ったその時、フドウが崖の上から飛び降りてきた。しかし、フドウの狙いは、岩陰に隠れていたコグレ一味の残党であった。怒りに打ち震える巨大なその腕を、悪党へと向けて振り下ろすフドウ。五車山峨斬。男の使った技は、間違いなく熟練した拳法の技であった。

 貴方をお迎えに上がりました。今までにない神妙な表情で、フドウはケンに跪き、そう言った。自らが五車星の人間であることを改めて語ったフドウは、ケンの力を見定めるためにあえて名乗らなかったことを説明。そして、自らの主である南斗六星最後の将がケンを待っていることを告げたのであった。

 山とケンシロウの接触には成功したリハクであったが、彼にはまだ拳王の進軍をとめるという難問が残されていた。未だ拳王は南斗の都の存在を知らないではいたが、それももはや時間の問題。もはや一刻の猶予もないリハクは、拳王を止められる残り一人の五車星に願いを託すが・・・

 岩壁の上に立てられた巨大な城。その城の側で横たわり、草笛を拭く一人の男に、リハクからの手紙が届けられた。将のために拳王の進軍を止めよ。ヒューイ、シュレン等の宿命の炎を燃え上がられたのと同様のその文を、いぶかしげに読み上げる男。だが男は、その内容を鼻で笑い、手紙を放り捨てた。俺は誰にも縛られず、自由気ままに生きる。その名の通り、雲のように自由気ままに生きるこの男が、残る五車星の一人、雲のジュウザであった。

放映日:86年9月11日


[漫画版との違い]
・拳王軍vs朱の軍団のシーン追加
・ニワトリ商が、娘の病気とかを語るシーン追加
・ニワトリ商を殺してチキンを食っていたのが、コグレ一味に変更。
・老人が、フドウの正体に気付き、ケン達に教えるシーン追加
・ケン対コグレ一味追加
・フドウが倒したのが、デカい男ではなく、岩陰に隠れていた雑魚に変更。
・リハクがジュウザに伝書〜ジュウザがそれを破り捨てるシーン追加


・名言
ナブリ「ニワトリなんて食うのは何年ぶりかなぁ」
ジラ
「このまったりとしてしつこくない味が口の中で渾然一体となって奥深い風味を作っているぅ」

岸朝子かおまいは。
・関西弁
アニメのニワトリ商は、千葉氏のオリジナルなのか、関西弁を喋る。原作の関西弁といえばコウケツだが、彼はアニメ未登場なのでアニメ北斗の関西人はこの商人だけであるといえよう。しかし、こうやって考えると、北斗の世界は関西人が少ない。ほとんど絶滅してしまったのだろうか。こういう世の中になったらどっちかつてえと関西人のほうがしぶとく生き残りそうな気がするんだけどな・・・
・あるだろ
「名もない男を一人殺しただけじゃねえか!」と言い訳を始めるコグレ一味に対し、「名もない男だからこそ、それを殺したお前達が許せん!」と怒るケン。
いや・・・・・・・
名前はあるだろ。多分。そこを否定していこうぜ。


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