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泰山流双条鞭
たいざんりゅうそうじょうべん



流派: 泰山流
使用: ・ウイグル(対 空手家)
 …北斗の拳(53話) アニメ版(39話)
・ウイグル(対 ケンシロウ)
 …北斗の拳(55話) アニメ版(40話)
・ウイグル(対 レイ)
 …劇場版 北斗の拳
・ウイグル(対 トキ)
 …ラオウ外伝(アニメ版)
登場: 北斗の拳/アニメ版/劇場版/北斗の拳3/PS版/
ラオウ外伝/天の覇王PSP/リバイブ/モバイル真・北斗無双


 カサンドラの獄長ウイグルが使う泰山流の鞭術。二本の鞭を自在に操り、人間の目では見切れぬ程のスピードで相手を打ちつける。

 ケンシロウを一方的に攻め立てる程の強さを見せたが、その中で軌道を見切られ、鞭の尖端を結ばれるという屈辱的な方法で破られた。

 カサンドラから脱獄しようとした空手使いに対しても使用しており、その際は身体に鞭を巻きつけてバラバラにする奥義熊胴断波を披露した。
 




 鞭なのにスパスパ切断する熊胴断波の存在を無視すれば、基本的にはシンプルな鞭術と言えるだろう。とは言っても、そもそも鞭自体が相当特異な武器ではある。歴史上で見ても、刑罰や拷問、動物の調教、あとは特殊なプレイに使われるくらいで、実戦において鞭が使われた事は殆ど無いらしい。


 その理由は、鞭が「痛み」を与えることに特化した武器だからだ。鞭を皮膚に打ち付けられた者は強烈な痛みを感じるが、逆に言えばそれだけ。致命傷にはなりえないという事。打撲や骨折のように、相手の行動を妨げるような怪我は与えにくいのだ。
 またその「痛み」も、表皮に当たらなければ殆ど効力が無い。服の上からでも相当軽減されるし、鎧など着ていようものならほぼダメージはゼロだ。
 その他にも、扱いが難しかったり、接近戦に弱かったり、刀剣などですぐ切断される脆さ等、鞭にはあまりにも弱点が多い。某ジョーンズ博士の影響で広められた有能武器としてのイメージは、所詮はフィクションの中だけなのである。



 だが北斗の拳はフィクションなので、そんなロマン武器でも凶悪な拳法へと姿を変える。レイから太鼓判をもらう程の鞭の達人であるウイグル獄長と、あらゆる武器にチャレンジしちゃうアグレッシブ流派である泰山流があれば、鞭という存在を高みへと登らせることも可能なのだ。




 泰山流双条鞭最大の武器は、何と言ってもそのスピード。台詞から察するに、おそらくレイにはウイグルの鞭が見切れてはいなかったようだ。鞭を振った際に生じる破裂音は、地面を叩いた時のものではなく、鞭の先端が空気を切り裂いた事で生じたソニックブームだという。つまり音速を超えているということ。南斗水鳥拳伝承者が見切れなかったのも致し方ないのだ。

 ケンシロウは最終的に鞭同士の先端を結ぶという超人技を見せたが、そこに至るまでに相当数の鞭を浴びていた。時速300km/hのボウガンの矢を二本指でキャッチするような男でも中々見切れなかったという事実が、双条鞭のスピードがいかに驚異的であるかを証明していると言えるだろう。



 ただ、鞭が早いのは当然と言えば当然。一般人でもマッハを超えるのだから、騒ぐ程の事ではない。ただ、ウイグルの使っている鞭のデカさを加味すると話は変わってくる。

 パッと見は標準サイズのようにも思えるが、あの巨漢にフィットしているということは、実際はとんでもねえ太さ&長さの鞭なのだろう。おそらく通常の3〜5倍ほどはあると思われる。そんな特大サイズの鞭を振りまわして、通常のものと同様以上のスピードを出せている事が異常なのだ。それが生み出す威力たるや、最早普通の人間が耐えられるものではないだろう。綱引きの綱ほどあるもんが音速で打ち付けられるんだぜ。即死よこんなもん。当たったとこ全部消し飛びますわ。





 実際にケンシロウが鞭を喰らったシーンを見ても、その火力の高さが伺える。先述の通り、鞭は衣服の上から打っても大したダメージは与えられないが、泰山流双条鞭はなんと革ジャンを切り裂き、更には肩当てをも砕き割っている。その上であの鋼鉄の肉体から出血までさせているのだ。とんでもない破壊力である。ケンの表情が苦悶に歪むのも当然と言えるだろう。


 獲物の大きさと、それを振るパワー、そしてスキル。その全てが揃った時、鞭は「痛みだけ」という概念を覆し、肉や骨を砕き壊す破壊力を得る。そこにスピードとリーチの長さ、そして2本持つことによる手数の多さを加え、鞭を全ての武器の中でもトップクラスの存在への昇華させる事で誕生した拳法。それこそが泰山流双条鞭なのである。