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泰山流斬人抜刀術
たいざんりゅうざんじんばっとうじゅつ



流派: 泰山流
使用: ガロウ (対 ケンシロウ)
登場: アニメ版北斗の拳(76話)


 TVアニメ版北斗の拳に登場したリュウガの副官・ガロウが使う泰山流の剣術。その鋭い剣さばきは、一振りで人体を真っ二つにしたり、廃ビルを切り裂くほどの鋭さを誇る。また次々と型を変えることで相手に剣筋を読ませず、時には虚をつくような技をも用いる。ケンシロウの攻撃を紙一重で見切るなど、防御面にも優れている。

 ケンシロウとの闘いにおいて、壱の太刀、弐の太刀、参の太刀、奥の太刀と、次々と型を変えながら攻め立て、最後は片腕を犠牲にしてまでケンシロウに短剣を突き立てたが、力及ばず敗れ去った。




[泰山流斬人抜刀術 壱の太刀]



上段の構えから剣を振り下ろす一撃。ケンシロウに回避されたが、その場にいた部下を真っ二つにする威力を見せた。



[泰山流斬人抜刀術 弐の太刀]



脇構えの型で突進し、剣を真横に薙ぎ払う。伏せて回避された。



[泰山流斬人抜刀術 参の太刀]



下段の構えから、真上へと剣を切り上げる。弐の太刀と連携して使うことで効果を発揮すると思われる。跳躍でかわされたが、頬に傷をつけた。



[泰山流斬人抜刀術 奥の太刀]



剣を背に隠し、左右どちらの手で攻撃するか読めない状態で突進する。その真の狙いは、剣を防がれた後にもう片方の手に握った短刀を突き立てることにあり、目論み通り左手を破壊されながらも、右手の短刀をケンの左手に突き刺すことに成功した。しかし鍛えられた筋肉の前に刃は通らず、反撃された。





 武器が不遇な北斗の拳においては、剣も例外ではない。いや、武器のメジャー度から言えば一番酷いかもしれない。だって原作でも首長処刑刀術白爪妙拳くらいだし、アニメ入れても泰山流剣舞術コレの4つしか出て無いんだぜ。数も少なけりゃラインナップもヘッポコすぎる。


 しかしその中で言えば、この泰山流斬人抜刀術は可也マシな方である。ガロウの武者スタイルを完全無視して西洋の剣を使っている時点でマトモとは言い難いが、それでも一番「剣術」はしてる方だろう。ケンシロウとそう変わらない体格なのに、これだけ破壊力のある剣撃を繰り出せるということは単なる力任せではない証だし、型を次々と切り替える闘い方や、肉を切らせて骨を断つ奥の太刀などを見ても、しっかりと練られた戦法を備えていることが伺える。


 その割には頬のかすり傷しか与えられない惨敗だったので、強さに疑問を抱く方もいるかもしれない。だが私から見れば、十分に見せ場は作れていたと言える。

 まずは弐の太刀で突進したときの、ケンシロウの後退だ。ケンがバトル中にあれほど高速で後方に下がるのは記憶にない。それほどガロウの剣に気圧されていたという事だろう。ラオウ様の天将奔烈を受けても「俺にも後退はない!」と言い放った男をああまで下がらせたのは高評価に値する。



 さらに注目すべきは、奥の太刀を受けたケンシロウの大リアクションである。短剣を左腕に突き立てられたケンは「ぷんたあああああああ!」という声にならぬ声を上げていた。ケンが大声を出すシーンは、殆どが奥義を出す前の気合であり、こんな風に攻撃を受けての叫ぶのは実に珍しい。シンに七つの傷をつけられた時以来ではないだろうか。結果的には無傷であったものの、この奇声を引き出せただけで十分な戦果であろう。

 というか、ケンシロウと普通に渡り合えてる時点で凄い。そこらの剣士であれば、斬撃を躱されて秘孔とか、剣をパーンを破壊されて終わりよ。そういう展開にならなかったという事は、ケンシロウも攻めあぐねていたという事。捨て身である奥の太刀を出さなければ、もっと闘いは長引いていた可能性は高い。



 と、これだけでも十分高い評価を与えていい泰山流斬人抜刀術であるが、その真価はまた別のところにある。この流派の名を思い出して欲しい。泰山流斬人"抜刀術"……そう、抜刀術なのだ。刀を鞘に納めた状態から、相手が間合いに入った瞬間に抜刀して斬る「居合い」こそが、ガロウの最も得意とするところなのである。

 居合が活きるのは、室内にいたり、普通に歩いたりしているときに突如敵に襲いかかられた時。まだ臨戦態勢にない状態から瞬時に刀を抜き、後の先をとれる所に強みがある。しかしケンシロウとの闘いでは正面からの立ち合い。ガロウも終始抜き身であったため、居合いを行う機会が無かったのだ。もちろん剣技も高いレベルにあるのだろうが、やはり最も得意とする居合いを行った時に勝負はどうなっていたのか、見てみたかった思いはある。



 実はガロウが居合いを出そうとしたシーンがある。彼が初登場したアニメ73話、城へと戻ってきたラオウに対し謀反の意思を見せた場面だ。だがリュウガの制止により未遂に終わり、結局剣は抜かれなかった。

 一見するとただの無謀な企てにしか思えないシーンである。だが後に明らかになるガロウの実力、そして抜刀術を得手としているという情報が加われば、見方も変わるというもの。そもそもガロウの目的は、リュウガに天を握ってもらう事であった。そう、彼が最も斬りたかったのはラオウなのだ。本来なら己が敵うはずもない拳王と言う名の巨木。そこに勝機を見出すならば、一瞬の隙を突いた奇襲より他に無い。彼の泰山流斬人抜刀術は、その僅かな好機を逃さぬために磨き上げられた剣なのかもしれない。