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[第76話]
吠える狼に鉄拳を
今、トキが危ない!!


 行進を続ける拳王軍。その先頭を行く拳王は、天空に赤く輝く天狼星を目にした。血に飢えた狼は、その身を赤く染めるために動き出そうとしていた。

 かつてコウリュウの元へ向かう拳王に闘いを挑んだ野盗達(69話参照)。彼らは、とある村を支配する盗賊集団のリーダーだった。暴力を恐れ、従順に働く村人達に、満足げな笑みを浮かべる盗賊達。しかし、彼らの幸せの終わりは、突然に訪れた。リュウガ率いるリュウガの本隊が、彼らの村へと現れたのだ。今よりこの村は拳王様のもの。そのリュウガの言葉は、盗賊達の死を意味していた。リュウガの拳、そして統率されたリュウガ部隊の前に、次々と切り裂かれていく盗賊達。その殺戮の後に待っていたのは、村人達の捕獲だった。盗賊達にとっても拳王軍にとっても、彼等村人達はただの奴隷に過ぎなかったのである。村人達が次々と捕まる中、その中の一人ハルだけは、なんとか逃亡に成功するが・・・

 転がる盗賊や村人の死体。村は一瞬にして惨劇と化した。リュウガの身に飛んだ無数の返り血が、その残酷さを物語っていた。恐怖、そして暴力による統治。何時も通りの自らの仕事をこなしたはずのリュウガであったが、その瞳には何故か哀しみが漂っていた。しかし次の瞬間、その瞳は何かを決意したかのような強い光をもった目に変わっていた。村をガロウに任せ、荒野へと向かったリュウガの行く先とは・・・

 足に鉄球を着けられ、再び過酷な労働へと向かわされる村人達。しかし、その列の最後に居たのは、ケンシロウ、そして先ほど村を出たハルであった。砂漠で行き倒れるていたところをケンに救われたハルは、村のことを話し、ケンを連れてきたのである。ケンは解らなかった。自らを襲い、そして今度はこうして侵略へと走ったリュウガの真意が。それを直接本人の口から聞き出さんがため、ケンはこの村へと訪れたのだった。邪魔をするリュウガ部隊を蹴散らし、村の中へと入っていくケン。一方のリュウガ部隊も、相手がケンシロウといえども一歩も引くことはなかった。拳王軍団最強部隊としての誇りが、彼らを前へと進めていたのだ。だが、村を任された副官ガロウは、そんな彼らの剣を制止した。たとえ死を覚悟した剣であろうともケンシロウを倒せぬことは、ケンの強さを目撃したガロウが一番よく解っていたのだ。この俺に勝てばリュウガ様の居所を教えてやろう。主リュウガのため、ガロウはその剣をケンシロウへと振りかざす・・・

 ガロウの剣術、泰山流斬人抜刀術の前に防戦一方のケン。壱の太刀、弐の太刀を交し、そして参の太刀を跳躍で交したケンは、そのまま宙から初めて攻撃に転じるが、それも互いにかすり傷をつけるに留まった。しかし、相手の拳に脅威を感じていたのはガロウの方だった。そしてその強さは、いずれ主リュウガまでをも飲み込んでしまうことを、ガロウは予感していた。なんとしてでも此処でケンシロウを葬らねばならない。リュウガの為に命を賭けんとするその男は、斬人抜刀術 奥の太刀で勝負に出た。自らの背に剣と両手を回し、まるで無防備に特攻するガロウ。そこから放たれた左手をケンは瞬時に破壊したが、その手には剣は握られていなかった。フェイントの為だけに左手を犠牲にし、右手に握られた剣で相手を仕留める。それが斬人抜刀術 奥の太刀の正体だったのである。だが、ケンの拳士としての才は、寸前でそれを見切らせていた。腕に剣を刺させて防いだケンは、更に筋肉だけでその剣を弾き飛ばし、戦いの終わりを告げる拳の嵐をガロウへと浴びせたのだった。

 リュウガが向かったのはトキの村。死ぬ間際にガロウが語ったその事実は、ケンに衝撃を走らせた。リュウガの狼の牙は、今や拳士ではないトキをその標的に定めていたのだ。しかし、それが全てはリュウガ自身がケンシロウと戦うためであることを、ガロウは解っていた。そして、リュウガが求める巨木、それが誰であるかを、死に行くガロウの目は既に見抜いていたのだった。

 多くの病人や怪我人が列を作る村。そこが、トキの村と呼ばれる場所であった。死期を間近に控えたトキは、リンとバットと共に、無料で人々の治療を行う診療所を開いていたのだ。自らの治療を受け、満面の笑顔で帰っていく患者達。その人々の笑顔が、トキはなにより嬉しかった。残り少ない命の中で、できる限り多くの人々を救いたい。時折訪れる体の痛みも負けず、トキは最後の至福の時間を生きていた。そんな診療所を崖の上から見下ろす男、リュウガ。時代の為、拳王による恐怖の統治を成す為、リュウガは今再びその拳を振るうことをユリアに詫びるのだった。

 足の怪我が快方に向かっていることを、嬉しそうにトキに報告する老人。その笑顔にトキも屈託のない笑いを返すが、もうそんな時が長く続かないという現実が、リンの悲しみを誘っていた。しかし、その時はリンの思うより遥かに早く訪れた。天狼星の男リュウガ。トキの命を狙う狼が、遂にトキの前へと現れたのだ。奇襲の矢からはなんとか老人を守りきったトキであったが、もはや至近距離から放たれた矢を返す力は、トキには無かった。深々とその矢を胸に受け、崩れ去るトキ。天狼拳からリンを守るため、再度その身を呈する事は出来たが、もはやトキの体は戦うことは出来なくなっていた。全てはケンシロウとの戦いのため・・・自らが魔狼と化した理由を問われたリュウガは、そう答えた。トキを殺すことでケンシロウの怒りを引き出し、本気のケンシロウとの闘いを実現させることが、リュウガの目的だったのである。リュウガの拳にケンシロウが倒れた時、それはラオウという巨木が世の制覇を成し遂げる運命であることを意味する。ケンシロウとラオウ。時代がどちらの巨木を必要とするのかを見定めるため、リュウガはトキを殺さねばならなかったのだ。しかし、そのリュウガの言葉は、トキの心をも動かした。残り少ない自分の命が次の時代の礎となるならば本望。そう言ってトキは、無防備にリュウガの前へと立った。それは、己が死を覚悟したというトキの合図であった。頭は下げぬぞトキ!!時代の為に悪名をかぶらんとする魔狼の拳が、トキの胸に突き刺ささる。迸る鮮血の中、リンはそのトキの最後を伝えんと、ケンに心の叫び送るが・・・

 リンの声に応えるかのように、夜空を見上げるケン。そこにあったのは、北斗七星を切り裂く一本の流れ星であった。それは、ケンシロウ、そしてラオウに、今一人の北斗の男が地に落ちたことを予感させるのだった。
放映日:86年6月5日


[漫画版との違い]
・リュウガがとある村を全滅させるイベントが削除。
・盗賊達の治める村をリュウガ達が奪うシーン追加。原作のリュウガの返り血はその時に浴びる。
・ハルに連れられてその村にきたケンシロウがガロウと戦うシーン追加
・原作では死に掛けの老人からリュウガがトキの所へ向かっていることを聞かされるが、アニメではガロウから。
・リュウガがトキの診療所を崖の上から見下ろすシーン追加
・足の報告にきた老人は、原作では射抜かれて死ぬが、アニメではトキの体当たりで救われる


・R指定
原作のリュウガの不可解な行動である、村人大虐殺。これがなくなっているんですよね。これは当然といえば当然です。だって意味がわからないから。まあもともとリュウガの行動自体に意味がないんだけどね。貴方がケンちゃんを巨木だと認定したらどうだというのでしょうか。ハンコでも押して貰えるのか?いいように考えれば、ケンにその事を自覚させるためだと取れないことも無いが、そこまでせにゃ動かされない主人公の無責任ぶりを疑ってしまう。とにかくリュウガの行動には意味がない。だから意味がない大虐殺もカットしてOK!もっと言うならトキの殺害も意味が無いんだけど流石にそれはね・・・
・セコ狼
リュウガはセコい。ヘタレだ。何故トキと戦うために矢を持ってきたのか。何故病人のトキ相手に矢を使うのか。それは多分トキが怖かったからだ。死にかけでもトキはトキなんだから負けるかもしれないと思って、一応弓矢を持ってきたんだよね。それで矢をかわせないと解ったから直接天狼拳で切りにいったんだよね。うんうんわかるよその気持ち。でもアンタはヘタレだ。
・プンッ
ガロウ切りかかる。ケンシロウ腕にそれを突き刺してガードする。ケンシロウ吠える。そして剣は筋肉に「プンッ」とはじき出される。・・・・・抜けるかよ普通!ニードルナイフの時とはわけがちがうぞ!ゴムゴムの実かよ!
あと関係ないけど、刺されたときの叫び声
「とぅんぱぁー!」が好き


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