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北斗の拳 レイ外伝 蒼黒の餓狼
ストーリー キャラクター 流派・奥義



北斗の拳 レイ外伝


[原案]
武論尊・原哲夫
[作画]
猫井ヤスユキ


北斗の拳 レイ外伝 蒼黒の餓狼

は、レイを主人公とした北斗の拳からのスピンオフ作品。妹アイリの行方を追い、アスガルズルへと辿り着いたレイが、街の支配を賭けた争いに巻き込まれつつ、人々との出会いを経て義星の宿命に目覚めるというストーリー。また、レイが如何にして南斗水鳥拳の印可を受けたのといった、過去のエピソードも明らかになる。

 レイは北斗の拳の中でも屈指の人気を持つキャラクターであるが、その位置付けはあくまで「脇役」。ラオウ、ユリア、トキといった面々と比べると、それほどストーリーの本筋に関わっているわけではない。だがそれは、最も外伝を描くに向いているキャラクターであると言ってもいい。人気があるが故に外伝を望むファンも多いだろうし、また脇役であるが故に原作と矛盾を生むような縛りを気にせず、自由にストーリーを描くことが出来る。南斗水鳥拳先代伝承者のロフウや、その妻のリンレイなどといったキャラクターは、まさにそのフリーダムに描けるという利点が生んだ名キャラクターだったと言えるだろう。

 本作は、ほぼ女だらけの色町「アスガルズル」を舞台にストーリーが展開するのだが、個人的には一作品を消費すにはステージが狭すぎたのではないかと思う。確かに女だけの街という発想はアリだと思うし、ミステリアスな女王エバも斬新なキャラだったと思うのだが、終始女だらけというのはいささか極端すぎたのではないか。
 あえて王道を行かず、今までの北斗の拳にはない展開で勝負してみたという気概はわからんでもない。しかしこのストーリーでは、最初から北斗ファンの支持が少なかろう事は予想できていたはずだ。それでもこの設定を通した原因はなにかと言われれば、やはりそれは作者が「女性を描きたかった」というのが大きな理由だろう。もともと作者の猫井ヤスユキ氏は、商業誌よりも同人誌のほうを主としておられる漫画家さんであり、作品のエロ率も高い。このレイ外伝でもそのカラーは色濃く現れており、巨乳から貧乳までこれでもかというくらいに乳を放り出しまくっているのだ。最初は雑誌の売り上げを伸ばすための安易なエロシーン挿入かと思っていたのだが、ここまでやられるともう作者の趣味だと考えざるをえない。
 これには実は前フリがあり、増刊コミックバンチ誌上における対談において、猫井氏は原先生より「何かに縛られずに自分の感性で描くのが一番です。逆に僕の真似っこで描くほうが面白くない。もっと思いっきり既存の『北斗の拳』をぶっ壊して欲しい」との御言葉を頂いているんですな。その言葉通り、猫井氏が己の感性を武器に描き挙げたのがこの作品というわけだ。誰が悪いというわけではないが、少なくともこの言葉がレイ外伝を猫井ワールドにつっ走らせた要因の一つであることは間違いない。

 ただ、これだけエロシーン頻発の漫画の割には、ストーリーがそれほど悪いわけではない。「宿命」という便利な理由付けではあるものの、アイリ捜索という目的をうまくズラし、自然な形でレイをアスガルズルに留まらせている。狂気に走ったかつての師との決戦という筋書きも、確実に盛り上がる設定だ。最終決戦がやけに唐突に始まった感はあったものの、後腐れなく綺麗に纏まっていると思う。
 だがサブストーリーのほうは、正直余計な演出が多いように感じた。特に原作の主要キャラを意味もなくポンポン登場させる薄っぺらい扱い方は、伝説のクソゲー、SFC「北斗の拳5」を思い起こさせる。中でもロフウの処遇を決めるために開かれた南斗六聖拳会談は、全く持って意味がわからなかった。あのサウザーが、半ば敵対しているに等しい者達を集めて話し合い、最終的に出た結論が「放置」とは、もはやギャグ以外のなにものでもない。オリジナルキャラならばともかく、原先生が魂を吹き込んだキャラクター達を、内容もなく登場させるような行為は控えて欲しかった。

 とまあ上記の通り、北斗外伝の中でもいろいろと問題視される部分の多い作品なのだが、画に関しては個人的には高く評価している。レイのもつ「女性的な美しさ」という特徴を、十二分に描けていると言っていいだろう。上記の原先生との対談の中でも、猫井氏の絵がレイを描くのに向いている事は双方共に認めている。
 おそらく氏がレイ外伝を描くことになったのも、その女性を描く技術を認められてのことなのだと思う。バトルシーンに関しては少し物足りない点はあるが、静止画やカラー絵のカッコ良さは他の北斗外伝の中でも随一と言ってもいい。原作者をつけ、おっぱいを描きたい衝動を抑えることさえ出来れば、もっともっと評価の高い作品を仕上げられてのではないかと残念でならない。




作品キャッチコピー

妹のアイリを奪った者への復讐を誓った、"荒野の餓狼"・・・・「胸に七つの傷を持つ男」を捜し末世を彷徨う。優雅華麗にして残虐非道な必殺拳!新たに蘇るレイの南斗水鳥拳がすべてを切裂く!


掲載誌

週刊コミックバンチ

連載開始:286号(07年5月11、18日合併号)



タイトルリスト
Volume.01 閃く南斗の義星は聖か邪か!?
Volume.02 往く道
Volume.03 アスガルズル
Volume.04 女の城
Volume.05 聖母
Volume.06 安らぎ
Volume.07 死地
Volume.08 南斗昔日
Volume.09 奈落へ
Volume.10 天地合一
Volume.11 終末の印可
Volume.12 綱渡り
Volume.13 孔雀の拳
Volume.14 暴虐の狼煙
Volume.15 陥落
Volume.16 虜囚
Volume.17 蠢動
Volume.18 動地
Volume.19 因果の鎖は繋がった
Volume.20 母の中へ
Volume.21 強さ
Volume.22 無法の網に囚われて
Volume.23 滅殺
Volume.24 破軍の男
Volume.25 乱陣
Volume.26 無法の拳
Volume.27 真の継承者は
Volume28 魔獣降臨
Volume29 負の遺産
Volume30 掌の上
Volume31 立ち塞がる壁
Volume32 対立の行方
Volume33 狂鳥乱舞
Volume34 爪痕
Volume35 女心と
Volume36 動乱再び
Volume37 相容れぬ者
Volume38 謀る者たち
Volume39 野獣再臨
Volume40 策謀の行方
Volume41 盟友
Volume42 魔獣と野獣
Volume43 野獣たちの調べ
Volume44 B・B
Volume45 見せしめ
Volume46 仮面の素顔
Volume47 愛憎の極致
Volume48 決戦の地へ
Volume49 水鳥拳の運命
Volume50 忘我
Volume51 宿星のもとへ
Volume52 秘話
Volume53 天駆ける水鳥
Last Volume 再び




ハンチ増刊号特別読み切り(全2話)

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―華麗なる復讐者―


北斗の拳 レイ外伝
−華麗なる復讐者−

は、レイを主人公とした読みきり外伝作品。増刊コミックバンチに全二話で掲載されたが、ストーリーが繋がっているわけではない。「北斗の拳レイ外伝 蒼黒の餓狼」の単行本にも収録されなかったため、2009年11月現在では眼にすることが難しい作品となっている。
第一話は、ケンシロウ達と出会う前のレイを描いた作品。妹を捕らわれた幼い少年に己を重ね合わせ、南斗水鳥拳で悪党たちを蹴散らすというストーリーとなっている。
第二話は、かつて優しかった少女カレンが、拳王配下となってマミヤの村に侵攻してくるというストーリー。尚、カレンは、「蒼黒の餓狼」にもゲスト的なポジションで登場している。



掲載誌
増刊コミックバンチ 北斗の拳トリビュート号(06年4月5日増刊号)
週刊コミックバンチ増刊 蒼天の拳トリビュート号(07年1月8日増刊号)