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[第1話]
神か悪魔か!?
地獄にあらわれた最強の男


199X年。世界は核の炎に包まれた。
海は枯れ、地は裂け、あらゆる生命体が絶滅したかに見えた。
だが、人類は死滅してはいなかった


 荒野を疾走する一台の車に、ならずもの達が襲い掛かる。荒廃した世界は、彼等Z軍のような盗賊集団が蔓延る世界と化していた。奪った食料で、空腹を満たすZ軍。だが、車に積んであった札束には何の興味も示さなかった。核戦争で滅んだこの世は、金の流通もない、彼等盗賊達が暴力によって支配する世界へと変わっていたのだった。


 荒野を行く一人の男がいた。暑さと疲労で力尽き、その場に伏す男。その時、男の目に幻覚が飛び込んできた。高笑いを上げる金髪の男。そして空の向こうで笑う女の顔・・・。それに心を奮い立たされたのか、男は再度その身を起こし、遥かな地平線へと向けて足を踏み出した。


 廃墟にたむろするZ軍の偵察隊の前に、先程の旅の男が現れた。自分達を無視するかのように通り過ぎようとするその男に対し、偵察隊達は男の足を投げ縄で捕縛。ジープに繋がれ、引きずられる男。だがその時、男の目が眩く輝いた。


 Z軍のリーダー、Z-666の元に、偵察隊が全滅させられたとの報が入れられた。駆けつけたZ-666が見たもの、それは人間の仕業とは思えない、凄惨な死体の転がる光景であった。唯一生き残っていた偵察隊の1人から、なんとかその場で起きたことを聞き出そうとするZ-666。しかし次の瞬間、彼は信じられないものを見た。「ほ、ほくと・・・」そう呟いた偵察対の男は、次の瞬間、突如あたまを風船のように膨らませ、爆死したのだ。部下達の死に激怒するZ-666であったが、彼等の変死、そして「ほくと」という謎の言葉に、何かを感じずにはいられなかった。


 そこから少し離れた場所にある、とある村。そこに住む少女リンは、ペットの犬・ぺルとともに、日常を過ごしていた。とその時、リンの耳に騒がしい声が聞こえてきた。タネモミを盗みに村へ入った少年、バットが捕まったのだ。縛り首だと脅されたはバットは、突如ハーモニカを吹きながら、ダンスを披露しはじめた。自らの芸で楽しませて、許しを得ようとしたのである。だが、空腹のバットに最後まで踊りきる体力は残ってはいなかったのだった。とその時、今度は井戸の方が騒がしくなった。井戸番の制止を無視して、勝手に水を飲もうとしてする男が現れたのだ。彼は、先ほど偵察対にひきずられていたあの男であった。村人達に捕らえられた男は、バットと共に村の牢屋へ・・・


 男のために水を運んできたリン。だが、彼女が鉄格子の中にコップを入れた瞬間、突如バットはそのリンの手をつかみ、捕らえた。彼女の腰についている鍵を奪い、脱獄しようとしたのだ。一緒に入れられている男にも、協力をもとめるバット。しかし男は協力するどころか、不思議な力でバットの腕に謎の激痛を走らせ、リンを助けた。自分が脱出することより、自分達を逃がした事で罪に問われるであろうリンの立場を優先させたのである。その男の優しさに惚れてしまったリンは、ケンのために再び水と、食料を運んできたのだった。


 自らの名をケンシロウと告げた男は、リンと話をしようとする。しかしリンは言葉を失った少女だった。家族を目の前で殺されてしまったリンは、その時のショックで喋れなくなってしまったのだ。辛いか?そのケンの問いかけに、リンは首を振った。彼女はどんなに辛い現実にも負けない、強い少女だったのだ。そんなリンに対し、ケンはその耳の後ろをそっと指で突いた。それは、リンが心の底から声を出したいと思ったとき、言葉を誘ってくれる"おまじない"であった。


 村の長老が帰ってきたと同時に、ケンシロウの身体検査が始まった。ケンがZ軍の一味でないか、その身を調べる村人達。しかし、そこにあったのはZの刺青ではなく、胸に刻まれた鮮やかな七つの傷であった。そしてそれを見た瞬間、長老の頭の中にとてつもない不安が過った。その傷が描いていたのは、正しくあの北斗七星の形。北斗現れるところ乱有り・・・北斗に纏わるその不吉な伝説を、長老は知っていたのだ。そして、その不安が早くも現実のものとなった。遂にZ軍が、村を襲撃してきたのである。ケンを再び牢へと閉じ込め、戦場へと向かう村人達。だがリンは、その戦場へ向かう前に、ケンの牢の中に鍵を置いていってしまった。自らの死を予感したリンは、せめてケンだけでも逃げ切ってほしいと考えたのだ。だが、今から少女が殺されようとしているそんな状況を、ケンには見逃すことなど出来なかった。そしてケンは、その状況を変えられるだけの力を持つ男であった。おもむろに鉄格子をつかみ、力でその鉄格子を破壊したケンは、急いで戦場へと駆ける・・・


 牢獄から出たケンが見たのは、既に人質として囚われていたリンの姿であった。ありったけの食糧を持って来い!!リンをその手に握り締め、村人達に降伏を要求するZ-666。そして、その悪鬼達にケンが近付こうとしたとき、奇跡は起こった。「ケ――――ン!!来ちゃだめ―――!!」それは、言葉を失ったはずのリンの叫びだった。ケンの"おまじない"、そしてリンの心の叫びが、彼女に言葉を取り戻させたのだ。だが、そこで人々が目撃した奇跡は一つだけではなかった。歩み寄ってきたケンを始末せんと取り囲むZ軍団。だが、彼らはケンの蹴りを受けたかと思うと、次の瞬間、その身は怒号とともに激しく爆ぜた。一拳に全エネルギーを集中し、肉体の経絡秘孔に衝撃を与え、内部の破壊を極意とした一撃必殺の拳法、北斗神拳。ケンはその必殺拳の使い手だったのである。目の前の男が偵察隊を殺した犯人だと確信し、激怒するZ-666。しかし、リンを人質に取る卑劣なZ-666に、ケンもまた激怒していた。北斗神拳の奥義、北斗百裂拳。ケンの高速の連続突きが、Z-666の体をとらえる。その衝撃でZ-666は吹っ飛び、そしてその手からこぼれ落ちたリンは、無事にケンの腕の中に救出されたのであった。激しく吹っ飛んだ割に痛みを感じなかったZ-666は、再度その身を起こし、ケンに攻撃しようとする。だが既に彼の体は死んでいた。北斗神拳の真髄、経絡秘孔への衝撃をあたえられていたZ-666は、体を不自然に変形させ、その体を肉片へと変えたのであった。


 村を去るケンの背中を、涙で見送るリン。自らが不幸を招く存在である事を知るケンは、己が村を出ることこそが、リンにとっての最良の選択であると判断したのだ。北斗神拳の使い手ケンシロウ、そしてその強さに惚れ、この時代を生きていくために利用せんと考えるバットの旅が始まった。

放映日:84年10月11日


[漫画版との違い]

[追加]
・荒野でケンシロウが倒れてユリアやシンの幻影をみる
・Zの偵察隊がケンシロウと接触した場面
・リンの愛犬ペルが登場
・リンが、井戸の見張りの男の頬にキスをして水を分けて貰う
・盗みを働いたバットでダンスを見せて許してもらおうとする
・バットが捕まったのは4回目
・リンの家族が殺されるシーン

[変更]
・ケンシロウが網にかからない。かわりに勝手に井戸の水を飲もうとして捕まる
・バットの小便もらしがカット



・第一話
記念すべき第1話…なのだが、特に書くことは。ない。なぜならほぼ原作通りだから。ここでは主にアニメ版ならではの部分にツッコミを入れていきます。ヨロシク。
・ペル登場
アニメ第一話の大きな出来事と言えばリンの愛犬・ペルの登場ですよね。結構長期間に渡って登場するワンコロですが、それに見合うだけの活躍の場は然程ありませんでしたね。この当時のアニメヒロインは、なにか一つ小動物を連れているというのが定番だったんで、それに倣った結果生み出されたキャラクターなのかもしれません。まあリンがヒロインかと言われると甚だ疑問ではあるのだが。

アミバ編にて、「行き倒れたリンを救う」という唯一の見せ場を作った後、ストーリーがシリアスな展開になっていくにつれ登場回数も激減。70話を境にパッタリと姿を消してしまいました。
・バットのハーモニカ
やけに耳に残るメロディなんですよね・・・。携帯電話が普及し始めた頃、なぜか私はこのメロディを自作着メロで作って着信音にしてました。もちろん誰にも「あ、それ!」なんて言われなかったですけどね。


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