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[第2話]
必殺残悔拳!!
不毛の荒野に明日(あした)をみた!!

 村の外れに腰をおろすリンは、ケンが去っていった方角を見つめていた。いつかケンは帰ってくる。そう信じ、村の外でケンを待ち続けていたのだ。だが、日没が迫る頃、長老がリンを迎えに来た。夜中になれば盗賊が出る。そう長老に言われ、渋々村へと戻ったリンだったが、彼女のケンを思う気持ちは強くなる一方だった。

 胸に七つの傷をつけられ、地に伏すケン。そしてその傷をつけた男に連れ去られる恋人・・・。ケンの眠りを妨げたのは、そんな忌わしき悪夢であった。自らの気を落ち着かせるかのように、静かに胸の傷に触れるケン。その七つの傷の裏には、深く哀しい事情が隠されていた。とその時、ケンのもとへ一台のバギーが近付いてきた。乗っていたのは、バットであった。ケンとの旅を続けるにあたっての足として、バットは自らのハンドメイドのバギーを持ってきたのだ。

 早速そのバギーに乗って旅へと出た二人であったが、暫くの後、突如ケンは車を飛び降りて走り出した。ケンが辿り着いた先にあったもの、それは、悪党達に追い詰められる老人の姿であった。その老人、スミスは、村のために集めた種モミを持って帰ろうとしていたところを、KINGの軍団の一味、スペード達に見つかり、襲われていたのだ。そしてその一人の男の危機を、ケンは見逃せるはずはなかった。颯爽とスペード達の前へと立ちはだかり、老人を見逃すよう要求するケン。当然そんな言葉に従うはずも無く抵抗するスペード達であったが、彼の放ったボウガンの矢はケンの二本の指で捕えられてしまった。北斗神拳の奥義、二指真空把。ケンの前では、ボウガンの矢すら止まっているに等しいスピードだったのだ。投げ返された矢を右目に受け、スペード達は逃亡。だが、スミスの種モミは、既に彼らの手に奪われた後であった。

 おまえ、あの種モミを取り返して来い。自らをコソ泥の名人と自称するバットに、そう命じたケンだったが、バットはそれを拒否した。先ほどのスペードが所属するKIN軍は、絶対に相手にしたくない巨大組織だったからだ。しかし、バットにとってもっと敵にまわしたくないのはケンだった。ケンに嫌われるという事は、飯のタネがなくなってしまう事を意味していたからである。ケンの機嫌を取るため、バットは慌ててスペードのみとへと単身出発する・・・

 スペード達は、己達のアジトへと戻っていた。目の手当てを受けながら、先ほどのケンへの恨みを募らせるスペード。とその時、ハーモニカの音とともにバットが現れた。バギーをプレゼントするからKINGに入れてくれ。そう言ってスペード達に取入ったバットは、隙を見てアジト内に進入。タネモミ番の男をおもちゃのネズミで気をそらせ、素早く種モミを奪取。さらにはバギーが壊れたフリをして、車が暴走したと見せかけ、見事バットはスペード達から種モミを奪い返したのであった。その後、全てはバットの罠であったことを知ったスペード達は、抑えられない怒りとともにアジトを出発。皆殺しにしてやる!そう呟くスペードが向かった先とは・・・

 種モミを食べようとしていたバットにお仕置きするなどの一悶着もありながら、ケンは無事スミスの手に種モミを返した。スミスがこの種モミにこだわる理由、それは平和のためであった。種モミさえあれば毎年米が出き、争いは無くなる。今日より明日・・・今ある食べ物より、幸せな未来のほうが大切だとスミスは考えていたのだ。自らの命を賭してまでその明日にかけようとするスミスに、ケンは久しぶりに人間を見たような気持ちを覚えるのだった。

 無事にスミスを村に送り届けたケン達であったが、ケンは何も報酬を貰うことなく、さっさと村を出るようバットに告げた。村の中から聞こえる赤子の鳴き声。それは、誰もが飢えていることの証だった。そんな村から貴重な食糧を貰うことなど、ケンには出来なかったのだ。渋々了解したバットは、再びバギーを走らせて荒野へ。だがその時、ケン達と行き違いに、村へと向かう集団がいた。彼らは紛れも無く、あのスペード一味だった。車を飛び降り、急いで村へと駆けるケン。だが、時既に遅かった。地獄絵図と化した村の中、ケンの目の前で、スミスはスペードの槍に体を貫かれたのであった。死を目前に控えても、こぼれたタネモミを必死で拾い集めようとするスミス。だが、その手を更にナイフで突き刺し、高笑いを上げるスペードに、遂にケンの怒りが爆発した。

 ケンの両腕を鉄鎖で捕え、勝利を確信するスペード一味。だが彼らは、まだ北斗神拳の脅威を理解していなかった。スペードの放った斧を蹴り返し、片方の鎖を握る男の首を切断したケンは、もう一人の鎖の男との綱引きを開始。常人では使えない70%の潜在能力を引き出せる北斗神拳。その脅威のパワーに成す術無く力負けした男は、ケンの岩山両斬波で脳天を凹まされたのであった。後には引けないスペードは、二本の斧でヤケクソ気味にケンに特攻。しかし当然相手になるはずも無く、鼻の骨、両腕の骨を折られ、最後はこめかみに北斗残悔拳を喰らわされて勝負は決した。お前の命は残り七秒。自らの愚行を悔やむ暇も無く、スペードはその身を真っ二つに割ったのだった。

 その頃、リンのいる村では、水と食料の物々交換が行われていた。地下水の豊富なこの村には、食べ物と水を交換しに来る者達も多かったのだ。そしてその時、リンはある決断をしていた。村へと訪れたトラックに忍び込み、村を出ようと考えていたのだ。ケンに会いたい・・・。何処行くかとも知れぬトラックに揺られ、荒野へと旅立ったリンとぺルは・・・

 スミスの墓を作ったケンは、その場所に種モミを撒いた。誰よりも明るい明日を望んだスミス。彼の眠る土ならば、きっと種モミは芽を出してくれるはず。哀しき男の死を背負い、ケンは再び荒野へと旅立つのだった。

放映日:84年10月18日


[漫画版との違い]

[追加]
・リンが村の外でケンが帰ってくると信じて待ち続ける
・ケンがシンの悪夢で飛び起きる
・リンの村で、食料と水の物々交換が行われている。
 ※鹿の薫製で水2カン。宝石は交換不可

・リンが物々交換に来たトラックに潜り込んで村を出る

[変更]
・バットがバギーを手に入れて戻ってくる。以降も移動に使用。
・今回のスペードを含むKING四天王の入れ墨が「K」から「J」に変更

・スペード一味がタネモミをアジトに持って帰り、バットがそれを取り戻す
・残悔拳での死亡までの時間が3秒から7秒に



・バット大活躍
第2話はバット回と言っても過言では無いですね。タネモミ奪回作戦も見事なのだが、10歳そこらの年齢で車一台を組み立てるってのが凄いよ。ちなみにこのメカニック設定は、2018年発売のPS4用ゲーム「北斗が如く」で再利用され、ケンの乗るバギーをガンガンカスタマイズしてくれています。
・種モミ奪還作戦
作戦内容自体は大したことはないのだが、あんなゴロツキどものアジトに子供が単身で乗り込むという度胸がまず凄い。全然臆した感じも無いもんなあ。しかもちゃーんとミッションコンプリートしてるしね。こういうバットの要領のよさを活かした話ってのももっと見たかったなあ。
・世紀末を感じる台詞
「お、美味そうなネズミ!」


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