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[第93話]
対決ジュウザVSラオウ!
今無敵伝説に終止符を!!


 旅を続けるケン達は、あとひとつ砂漠を超えれば南斗の都にたどり着く位置にまでに来ていた。更に雲のジュウザが動いたことにより、ケンと最後の将の出会いも順調に達成へと向かいつつあった。だが、将はその心に影を落としていた。ヒューイ、シュレン。そして今ジュウザまでもが自らのために血を流そうとしている。繰り返されるその凄惨な現実が、将の眼に哀しみを宿らせていたのだ。だが、リハクは言った。貴方がいるからこそ、この南斗の都には自由がある。この乱世には、平和をもたらす力を持つ貴方がいなければならない。そのためにならジュウザも喜んでその命を賭けるだろう、と。

 黒王から降り、本格的に戦闘体勢へと入るラオウ。だがジュウザは、そんなラオウに無防備のまま歩み寄ってきた。恐怖は戦いにおいて隙を生む。その事を熟知するジュウザは、自らの天賦の才によって、恐怖を感じる暇すら無い怒涛の攻撃を会得していたのだ。いきなりラオウに背を向け、そのまま蹴りを放つジュウザ。難なくガードしたかに思えたラオウであったが、その足は突如目の前から消え、ラオウの真下から現れた。その後も繰り出される変幻自在の蹴りに翻弄されるラオウ。そして最後に放たれた回し蹴りは、ガードしたラオウの片膝を地面へと着かせたのであった。天賦の才に裏打ちされたその我流の拳の威に苦戦を強いられるラオウだが・・・

 崩れ落ちた高速道路の高架下で、男たちの怒号が響いていた。いちゃもんをつけられた挙句、結局人違いだったという失礼極まりない扱いを受けた3人が、一人の男に対して怒り狂っていたのだ。しかし男は詫びを入れようともせず、さらに3人を挑発。いよいよブチ切れた彼等はそれぞれ武器をもって襲い掛かるが、その男・ジェモニの強さは尋常ではなかった。巨大な刀を軽々と操るジェモニは、その剛力でガードの上から押し切り、まず一人を殺害。更に刀に鎖を巻きつけてきた男を逆に放り投げ、襲いかかろうとしていたもう一人にぶつけるという荒業をやってのけたのだった。すっかり戦意をなくした二人をも、容赦なく切り刻んだジェモニは、満足そうにある数字を数え出した。9997・・・9998・・・9999・・・。それは、ジェモニが今までに切り刻んできた男達の数であった。

 あまりの暑さに、高架下の日影で休憩をとるケン達。だが、ケンとフドウは、周囲から漂う血の匂いに緊張を走らせていた。とその時、高速道路の上から、切り刻まれた死体が投げ落とされてきた。お前の胸に七つの傷はあるか。そう言って問いかけてきたのは、あのジェモニであった。相手が本当に七つの傷の男だと知ったジェモニは、記念の10000人目をケンシロウで飾れる事に歓喜する。しかし、ケンはそのジェモニの野望を、愚かな行為だと吐き捨てた。数多くの人間を殺した事を誇ることの虚しさ。それは、ケンシロウ自身が一番よくわかっていた。

 拳王刺客隊最強を自負するジェモニであったが、百戦錬磨のケンシロウの前ではやはりその力は子供同然であった。自らの得意とする泰山流剣舞術を、最初の攻防で見切られたジェモニは、飛び蹴りを喰らってアッサリとダウン。奥の手である二刀流・双頭剣で巻き返しをはかるが、振り回す刀は一度もケンシロウにかすることなく、最後は上空からの正拳突きを喰らって勝負は決した。背を向けたケンに襲い掛かろうとしたジェモニは、既に突かれていた秘孔輪雅によって、傷からの首を切り落とし死亡。ジェモニの刀が飾った10000人目は、そのジェモニ自身の首となったのであった。

 ジェモニを倒したケン達の前に、空に逆さまに浮かぶ城が現れた。それは、砂漠の熱さが生んだ、数キロ先の南斗の都を映し出した蜃気楼であった。目的の地が改めて近くに迫っていることを確信した一行は、先を急ぐ・・・


 無尽蔵に繰り出されるジュウザの蹴りにどうすることも出来ず、一旦間合いを開くラオウ。ジュウザの天才を改めて実感するラオウは、遠い日の出来事を思い出していた。

 十数年前・・・木に登り、鳥の巣の中の卵を取ろうしていたのは、幼き日のトキであった。そこに通りかかったラオウは、いい方法を見せてやると告げ、強烈な一撃を幹へと炸裂。木の上の卵をとるならその木を倒せばいい。それがラオウの考え方であった。だが、その倒れた木の下に卵はなかった。犯人はジュウザであった。木が倒れる寸前にその下を駆け抜けたジュウザは、労せずして卵を手に入れていたのである。ラオウの強引なやり方を馬鹿にすると同時に、自らのスマートなやりかたをみせつけることでラオウを挑発するジュウザ。それを受けたラオウはジュウザへと歩み寄ろうとするが、当然そんな無益なケンカをジュウザが好むはずはなかった。ラオウの隙をつき、その額へと卵をぶつけたジュウザは、一瞬にして姿をくらましてしまったのだった。やり場の無い怒りに身を震わせるラオウであったが、それをなだめたのはリュウケンであった。リュウケンの拳士としての目は、ラオウに劣らぬほどのジュウザの才を見抜いていた・・・

 ラオウが間合いを開けたのには理由があった。攻めに転じれば威を発揮するが、防御にまわれば脆さを露呈する。それが我流の拳の弱点だったからだ。その読み通り、攻めへと移ったラオウに対し、ジュウザはただその攻撃をかわすことしか出来なかった。しかし、ジュウザにはまだ秘拳が残されていた。我が拳は邪拳ゆえ、種明かしは一回きりよ!そう叫び、全力でラオウへと突撃するジュウザ。しかし、相打ち狙いかに思われたその特攻は、ラオウの予想を大きく裏切った。高々と跳躍し、ラオウの頭上を越えていったジュウザが着地したのは、黒王号の背の上であった。今までラオウ以外に背を許したことの無い黒王号は当然のように大暴れでジュウザを振り落とそうとする。だが、鬣を引っ張るジュウザと目が合った瞬間、黒王号はいとも簡単に静まってしまった。黒王号がジュウザを主と認めたもの、それはその瞳に宿った強い意志であった。

 ジュウザが合図を送ると、拳王軍の上に巨大な岩が次々と転がり落ちてきた。ジュウザの狙い。それは、黒王号やバイクといった拳王の足を完全に奪うことにより、この場に拳王を止めておくことだったのだ。これが雲のジュウザのやり方よ!まんまと策にはまった拳王を小馬鹿し、黒王号を駆って退散するジュウザ。見事に一杯喰わされ、苦虫を潰した表情を浮かべるラオウであったが・・・

 見事なまでの大勝利に、大騒ぎで帰路につくジュウザの仲間達。だが、当のジュウザの顔は冷静さを保っていた。あと二日。自らが拳王を止めねばならない時間をそう伝えられたジュウザは、やはりその命を捨てねばならぬことを確信していた。滴り落ちる大量の血・・・紙一重でかわしたはずの拳王の蹴りは、ジュウザの横腹に深い傷を負わせていたのであった。
放映日:86年11月6日


[漫画版との違い]
・ジェモニとのやりとり全て追加
・岩を落とすのが、原作ではフドウの軍だが、アニメではジュウザの仲間達



・蜃気楼
ジェモニを倒したケンの前に現れる、蜃気楼の南斗の都。蜃気楼として現れるものは、よほど特別な状況で無い限り、10キロ前後のところにあるものが浮かび上がるという。まあ今後の展開から見る限り特に問題がある距離ではないので、大体そんなもんだろう。ただ問題は、南斗の都が周囲を高い崖に囲まれた、窪んだ地にあるという事だ。蜃気楼は、蜃気楼として見えるものよりも低い位置からでないと観測することが出来ないので、蜃気楼で南斗の都が見えることは普通に考えてありえないのである。ま、野暮なツッコミだけどね
・生き残るべくして
シュレンの火矢攻撃。更にジュウザ達による落石攻撃。あれだけの攻撃を受けたのに、当たり前のように無傷で生き残っているザク様はやっぱ強いのだ。


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