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[第102話]
迷える巨人ラオウ!
俺は愛など信じない!!


 嵐の一日が過ぎ、夜を迎えた南斗の城では、死者達の弔いが行われていた。娘トウを天国へと送る炎を見つめるリハクは、ユリアの守護という己の宿命を果たせなかったこと、そしてその宿命のために命を捨てたトウの死に応えてやれなかったことに対してただ無念を感じるのであった。そして、拳王の後を追った部下達も黒王のスピードについていけず、残念ながらラオウの行方は掴めないままだった。

 激しく繰り出されるケンシロウの攻撃にうなされながら、ラオウは眼を覚ました。拳王と呼ばれた男は、もはや夢に怯えるほどにまで追い詰められていたのである。そんなラオウのもとに不気味に笑いながら現れたのは、拳王軍団のウサ。自らの体の手当てを行ったのはそのウサかと問うラオウであったが、ウサはニヤつきながらそれを否定した。傷ついたその体に包帯を巻いたのは、ラオウが連れ去ってきたユリアその人だったのだ。物陰から姿を現したユリアは、ラオウを見つめながら言った。私は今でもケンを待っている。貴方は敗れ、傷ついた一人の戦士だと。そんなユリアの態度を見たウサは、これはチャンスだと進言した。今ユリアの気は拳王にあると思ったからだ。だがそれを聞いたラオウは憤怒し、ウサの頭を一撃の下に砕いた。心轢かれた女から情けを受けることは、ラオウという男にとって最大の屈辱だったからである。もはやラオウが望むのは、拳王という名ではなかった。悪鬼となり修羅と化し、魔王となりてケンシロウを倒す。ラオウの野望は今、天を握る覇道から打倒ケンシロウへと移ろうとしていた。

 眼の見えぬまま荒野をゆくケンシロウ。その行く手に立ちはだかったのは、ジャドウ率いる拳王軍団のバイク部隊であった。ケンシロウの眼が見えぬことを知ったジャドウは、バイクの排気音でケンの聴覚を撹乱する作戦を指示。唯一の頼りである耳を潰してしまえば、自分たちの動きを知る術はなくなると考えたのである。しかし、ケンシロウの中で生きるあの男は、かつて同じ状況の中、その危機を難なく乗り越えた。南斗白鷺拳のシュウ。眼でも耳でもなく、心の目で相手を見切る彼の奥技は、北斗神拳奥技水影心によってケンシロウの中に刻み込まれていた。取り囲むジャドウの部下たちを、華麗なる足技で切り刻むケンシロウ。それは紛れもなく、南斗白鷺拳の奥技、烈脚空舞であった。一人残されたジャドウは、右手に備え付けられた巨大な槍を掲げてケンシロウへと突撃。難なくかわしたケンはそのまま顔面へエルボーを叩き込もうとするが、ジャドウはメットの中に隠していた槍でそれを迎撃した。予期せぬ二段構えの槍で肘を突き立てられるケン。しかしそんな小細工でケンの命を取れるはずもなかった。力任せにその槍をヘシおられたジャドウは、そのまま裏拳で顔面を殴りつけられ、勝負は決したのだった。

 倒れたジャドウの頭を踏みつけ、ラオウの行き先を問うケン。秘孔によっておまえは勝手に喋り出すが、喋らねば死ぬ。その言われたジャドウはまるで意思とは無関係であるかのようにラオウの行き先を指差し、喋りだした。しかし、ケンの言ったことは冗談であった。ジャドウは秘孔のせいではなく、単に死の恐怖に負けて行き先を教えてしまったのだ。しかし、行き先を吐いてもジャドウの体は固まったままであった。悔い改めるまで寝ていろ。無理に動かせば本当に死ぬ。そう言って立ち去ろうとするケンシロウに向かい、二度も騙されるかと体を起こし始めるジャドウ。しかし、その体が完全に起きた時、彼に待っていたのは忠告どおりの死であった。ジャドウが示した方角、北に向かい、ケンシロウは再び歩き出した。

 ラオウの居城。テラスに立ち空を見上げるユリアは、ラオウに連れ去られた今でも、ケンシロウを待ち続けるという宿命を胸にその時を待ち続けていた。一方ラオウは、巨大な石像に囲まれた暗室で一人苦悩していた。無想転生を会得したとはいえ、末弟のケンシロウに恐怖を感じてしまったという事実。それは、かつて自分が絶対にありえないと言い切った、あってはならないことであった。

 北斗の修練場で実践に限りなく近い組み手を行うラオウとケンシロウ。しかし、未だ未熟なケンシロウと、既にすさまじい剛拳を身に着けていたラオウとでは、あまりにも力の差は大きすぎた。放たれる拳を防御することすら出来ず、その身に攻撃を受け続けるケン。このまま一方的な展開で終わるのか、そう思われたとき、ケンは後に開花させるその才の片鱗でラオウに一矢を報いた。ラオウのパンチに合わせるかのように放った蹴りを、ラオウの喉へと直撃させたのである。だが奇跡とも言えるその一撃も、ラオウにダメージを与えるには至らなかった。逆に足を捕まれ、無防備なその体に高速の拳を打ち込まれるケン。吹き飛ばされたケンの頭を踏みつけながらジャギは言う。伝承者は諦めろ。お前とラオウの兄者では格が違うのだと。だがケンは、そんな言葉に耳を貸さず、再びラオウへと挑んでいった。しかし、二度目の奇跡は起きなかった。顔面に強烈な一撃を喰らいその場に崩れるケン。その首を押さえつけ、とどめの一撃を叩き込まんとするラオウ。ラオウは直前でその拳を止めた。完全な敗北であるにもかかわらず、未だ光を失わぬケンの瞳の力がそれを止めたのだ。不満の残る決着に不服を言うジャギであったが、ラオウに言わせればこれは弱者である末弟への余裕に過ぎなかった。しかし、トキの見方は違っていた。一昨日より昨日、昨日より今日。ケンシロウは確実に力を付けてきている。そしてそれを感じているのは戦ったラオウ自身であるはずなのに、ケンに止めをさそうとはしない。その理由は、将来ケンシロウが強敵として自らの前に立つことをラオウ自身が望んでいるからではないかと感じたのだ。だが、ラオウはその憶測を一笑の元に臥した。ケンシロウが俺を抜くことなど未来永劫ありえない。そして、もし俺の前に経つようなことになった場合、その時こそ止めを刺してやる、と。

 ありえないと言い切ったその事が、今現実としてラオウの前に立ちはだかっている。苛立ち、そして未だ残る恐怖の感覚に耐え切れず、闇雲に目の前の石像を壊するラオウ。しかしその時、ラオウの中にある記憶が蘇った。恐怖がもたらす体の戦慄き。その感覚を、かつてラオウは経験したことがあったのだ。若き日のラオウにただ一度恐怖を感じさせた男、それは鬼の気迫を持つ巨人であった。ケンシロウとの戦いで感じた恐怖が気の迷いか否か、それを確かめる術はもうその巨人の鬼の気迫を飲み込むことで確かめるほかにはなかった。

 南斗の城にいるリハク達は、見たこともない異常な天候を目撃していた。すさまじいスピードで流れていく雲。それは、ラオウが動き出したことを示すサインであった。しかしユリアを手に入れた今、ラオウが何故に、何のために動こうとしているのかは、リハクの力をもってしても読むことはできなかった。

 リハクの部下であるオルとキラからの伝令により、南斗の城での一件はフドウ達のもとへも届けられていた。将を奪われ、ケンシロウが眼を負傷するという危機を迎えた今こそ、五車の男であるフドウが立たねばならぬ時。だが、フドウは躊躇っていた。己が出向けば、また子供達が危険に晒されてしまう。子供達か、将か。選ぶ事の出来ない二択を迫られるフドウ。そんな悩める父に答えを示したのは、他ならぬ子供たちであった。僕たちなら大丈夫。そう言って子供達は、フドウの甲冑を運び、父へと手渡したのであった。

 だがその時、峡谷に叫び声が轟いた。断崖の上…リハクの兵を斬殺したのは、
ラオウ自らが率いる拳王軍団の本隊であった。ラオウの目的、それはフドウであった。今でこそ善のフドウとして慕われる男、山のフドウ。だがその中に眠るは鬼の血。ラオウは、かつてそれに恐怖を感じた過去があった。ケンシロウに勝利するため、鬼の血を飲み込む。それが、ラオウが恐怖を拭い去るために選んだ方法なのであった。
放映日:87年1月15日


[漫画版との違い]
・戦争後の、南斗の城の兵士達のシーン追加
・ラオウが、フドウと戦うことを決めるまでの一連の流れが追加。
・ジャドウがでてくるのは原作ではラオウの城行った後だが、アニメではその前
・原作のジャドウは一人だが、アニメでは部下を引き連れて登場。
・原作ではジャドウは即死だが、アニメではその後ラオウの行き先を問うやりとり
・アニメではジャドウを倒しても視力回復しない
・修行時代のケンvsラオウの実践組手のシーン追加。
・リハクが雲の動きからラオウの動きを感じるシーン追加
・崖の上で見張りについていた海の兵団の男が拳王軍団に落とされるシーン追加。


・修行時代
こういう修行時代の過去が出てくるとアニ北マニアにはたまらんわけです。本編に比べて比較的謎に包まれてる修行時代。いろいろと情報があふれています。
まず今回ので明らかになったのは
、トキとジャギの関係。原作では殆ど接点のなかった二人ですが、今回トキがケンの実力を認めるような発言をした際、「馬鹿。なぁに言っやんでえ」と、兄を敬う気持ちゼロな発言。ジャギはトキの実力は認めていたそうですが、基本的に嫌いだったんだね。もしかしてケンシロウが嫌いなのの延長線上なのかもしれんけど。
そして
ケンと拳王様の実力差。もう容姿から見て、おそらくこの場面は伝承者決定まで1年をきっていると思われます。その時点で未だ大人と子供の実力差の二人。私は哀しみさえなければ最後の闘いでも拳王様のほうが上だったと思っていますが、それでもあの時点では力や技の差はさほど無いようには思う。哀しみ以外でも相当差を詰められていたんだなあと実感させられます。
しかし全員揃ってるのに
ハゲはどこで何してんだよ。
・すごいぞジャドウさん
原作ではケンさんの目の怪我を治した神の血を持つ男として崇められたジャドウ。しかしアニメでは残念ながら、返り血が目に行かなかったというのもあってか、そんな描写なかった。しかし!アニメのジャドウ神はまた違ったすごさを見せた。ケンの動きを見たジャドウさんはなんと「それは南斗白鷺拳、烈脚空舞!」とコメント。ちょっと前まで南斗白鷺拳の存在すら知らなかったケンさんとはえらい違いの博学ぶり!すごいよ!ジャドウさん。


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