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[第122話]
帝都崩壊!ジャコウ
せめて地獄で夢を見よ!!


 娘、アスカのために自らの拳で時代を変えた男、アイン。その英雄の亡骸を抱え、バットはケン達の前へと戻ってきた。バットから事の全貌を伝えられたケンとファルコは、この無益な戦いが遂に終わりを告げたことを知る。二人に残されたもの、それはすべての元凶であるジャコウの討伐のみであった。

 なんとか城壁の上へと避難したジャコウは、ケンとファルコを葬るために新たな仕掛けを発動。爆発によって城壁を倒し、ケンとファルコをその下敷きにする事に成功する。だが、眩い光と共に石壁は崩壊。その下からは、何事もなかったかのように、ジャコウに怒りの視線を向ける二人の男の姿があった。怯えるジャコウは、今度は残った帝都兵達にトドメをさすよう指示を出す。二人を倒した者には帝都の長の座を与える、との餌に釣られ、飛び掛っていく帝都兵達。だが、負った傷も、使い果たした体力も、ケンにはハンデにすらならなかった。先程自分達にむけて放たれたあの大きな鉄の矢を手に取ったケンは、まるでその重みを感じさせない様子でそれを振り回し、帝都兵達を一瞬にして撃退したのであった。

 ジャコウに残された手駒は、緑光将軍タイガのみとなった。総督の座をちらつかせ、タイガをケン達に嗾けようとするジャコウ。しかし、信任厚き部下であるはずのタイガから帰ってきたのは、お前が行けとの冷たい返答であった。天帝も助け出され、総督という立場も失ったジャコウなど、もはやタイガにとってはどうでもいい存在だったのである。しつこく泣きついてくるジャコウを突き放し、タイガはいずこかへ消えたのだった。

 もはやなんの手立ても無くなったジャコウは、一目散に逃亡。だが、悪の元凶であるジャコウを、ケンが見逃がすはずはなかった。階段を駆け上るジャコウに向かい、ケンは渾身の力で鉄の矢を投げつける。矢はジャコウの左頬をかすめ、中央帝都の壁へと突き刺さり、そこから溢れ出した水は再びジャコウの体を押し流した。ジャコウが流れ着いた先、それは怒れる二人の男の待つ、ジャコウの死に場所であった。

 後ずさるジャコウを追い詰め、トドメをささんとするファルコ。だが、体力を使い果たしたその体は、まともに歩く事さえままならなかった。ファルコの膝が折れたのを見たジャコウは、これならば勝機があると判断。もしファルコに勝てたなら見逃してくれとケンに約束を取り付け、ジャコウは例の鉄の矢を手に取り立ち上がった。狙ったのは勿論義足。しかし、渾身の力で殴りつけたにもかかわらず、ファルコの義足はびくともしなかった。武器として鍛えられたその義足は、ジャコウ程度の力ではとても折れる代物ではなかった。ならばと今度はその体めがけて振り下ろしたジャコウであったが、結果は同じ。逆に矢を奪われ、ファルコに叩きつけられたジャコウは、骨も砕けんが程の痛みに身をよがらせる。完全に計算が狂ったジャコウは、恐怖に顔を引きつらせ、許してくれと懇願する。だが、この男の圧政によって失われた命、己が殺してきた心の痛みは、謝って許されるようなものではなかった。金色に輝く右手が、ジャコウの顔面を掴む。消え失せろ!全ての怒りを込めた金色の炎が、ジャコウの顔を醜く歪ませ、そしてこの世から跡形も無く消しさったのであった。

 中央帝都の崩壊、ジャコウの死により、圧政の時代は終わりを迎えた。奴隷達は解放され、そして救い出された天帝ルイもまた、光の下へと帰ってきた。改めて天帝を守る星として、生還したルイの下へ跪くファルコ。だが、その命も全てはファルコいてくれたからこそ守られたものであることを、ルイは知っていた。己のために心を殺し、涙を流し、命を賭して闘ったファルコ。ぼんやりと映る瞳の先にいる、その男の傷をぬぐう事が、いまのルイの仕事であった。報われた末の、涙の再会。その光景こそが、アインが命を賭けて望んだ光景であった。父の生き様が残したこの奇跡を、必ずアスカに伝えるよう、バットはアインの亡骸に誓うのであった。

 全てが終わったかに思えた。しかし、最初に異変に気付いたのはミュウであった。先程までいたはずのリンの姿が消えていたのである。リンは、帝都内に残されたサイヤや、他の逃げ遅れた者達を救うために、再び城内へと戻っていたのだ。

 溢れた地下水の流れる帝都の地下で、サイヤは気を失っていた。リンにより助けられたサイヤは、殺気立った帝都兵うろつく帝都内から脱出しようと試みる。だが、その二人の前に立ちはだかったのは、タイガであった。帝都に見切りをつけ、且つファルコにも恨みを抱くタイガは、彼等の手の届かぬ地へと赴こうと考えていた。その手土産として、タイガはリンを選んだのである。サイヤを一撃で撃退したタイガは、リンを当身で眠らせ、帝都を後にする。その手には、ファルコが仕掛けた爆弾の起爆装置が握られていた。

 リンを助けに向かうケン達の前にサイヤが姿を現した。リンが拐われ、起爆装置が奪われた事をサイヤが告げた瞬間、その仕掛けが発動。爆風で吹き飛んだサイヤをなんとか守ったケンであったが、崩れ去る中央帝都の向こうからリンを探し出す事は、もはや不可能であった。地下水の流れに乗り、タイガはリンを抱え、いずこかへと消えたのであった。哀しき運命から未だ逃れられぬ、妹リンの身を憂うルイ。しかし、それが運命ならば、ケンがリンを救う事もまた運命。北斗は再び天帝を守る星として、リンの救出を誓うのであった。

 墓地へと運ばれたアインの亡骸を前に、最後の別れをする一同。静かに父の顔に触れるアスカに、涙は無かった。気丈なアスカは、自分が泣けば父が静かに眠れないと思い、涙を堪えていたのだ。そんなアスカがケンに差し出したのは、アインの愛用していた手袋だった。ケンに使ってもらう事が、父が一番喜んでくれることだと、アスカは感じたのである。アスカと、そしてかつての強敵達と同じように己の心の中に刻み込まれたアインのため、ケンは大粒の涙を流すのであった。

 タイガとその手下達は、夜の荒野をひた走っていた。目的地に着き、トラックの荷台から降ろされたリンが見たもの、それはこの世には残っていないと思われていた、海。死の海と呼ばれるそれは、この世にたった一つだけ残された海であった。そしてこの海を渡った果てには、底知れぬ恐怖に包まれた国があるのだという。リンをその国へと連れて行き、ケンやファルコを誘い出す事。それが、タイガの考える復讐劇の全貌であった。
放映日:87年7月9日


[漫画版との違い]
・一旦城壁に逃げたジャコウ達が、壁を爆破し、ケンとファルコに岩壁を倒して押しつぶそうとするシーンが追加。
・鉄騎団がやられた後、ジャコウがタイガに泣きつくが裏切られるシーン追加。

・開放された奴隷達が帝都から出てくるシーン追加。
・ジャコウが流された水は、原作では自然噴き出たが、アニメではケンの投げた矢で壁に突き刺さって溢れ出した。
・故にアニメでは、ケンが矢を投げた後にジャコウが流されるため、アニメで鉄騎団に掛かるよう命じるときはまだケンの近くにいない。(一旦避難した城壁の上にいる)
・ジャコウが矢でファルコの体を殴るのが、右肩から左肩に変更。
・原作では残された兵と勘違いして、ジャスクを助けてしまい、さらわれるが、アニメでは潜んでいたタイガにさらわれる。
・サイヤ、ジャスクの棍棒でやられる→タイガの放った闘気でやられる、に変更
・墓地でのアインとの別れに、ファルコ、ミュウ、ジョセフが参列。逆にマミヤ、アイリ、既に死んでいるギルもいない。故に原作ではマミヤの村だと思われるが、アニメでは別の場所なのだと思われる。
・マミヤの「泣いてもいいのよ」の台詞などが、ミュウに変更。
・リンが死の海の海岸へと運ばれ、海の向こうに修羅の国があることを告げられるシーン追加



・ざまぁKANKAN!
ジャコウが今回口にした「ざまぁKANKAN〜!」。今の若い人は知らない人も多いと思うので、一応説明を。ざまぁKANKANとは80年代末くらいによみうりTVで放映されていた、森脇健児、山田雅人の二人が司会を務めたトーク番組のこと。私自身も幼かった&言うほど見てなかったのであまり覚えていないが、最初の頃にハガキを読んでいるだけのころが最も人気があり、後半に下手糞な舞台劇みたいなのや素人参加のコーナー等を始めてからつまらなくなったように記憶している。今の森脇、山田しか知らない人にはにわかには信じられないかもしれないが、けっこうキャーキャー言われてたのですよ、この頃は。
・サイヤ人
名前は某最強宇宙種族であるのに、とってもヘタレなサイヤさん。今回も半ば彼の所為でリンが拐われてしまいます。が、流石というか、名前に偽りなしな場面が。それは時限爆弾の爆風で吹き飛ばされたとき。おそらくは北斗の拳史上で最も大きな爆発であると思われるこの爆風を至近距離で背に受けたにも関わらず、ぴんぴんしてます。吹き飛んだところをケンにキャッチはしてもらえてはいますが、ふつう自分の体がぶっ飛ぶくらいの爆発を喰らったらその場で死にまっせ。おそらく、地下での気絶、タイガに半殺しにされた死の淵からの復活により、戦闘力が増したんでしょう。この時点でハンくらいには勝てるはず。
・キルザファイ
子門真人の代表曲と聞いてたいやき、ホネホネロックよりも先にこれが思い浮かべば真のアニ北ファンと言っても良い、北斗アニメ最強の挿入歌がいよいよ初登場です。かっこいいのも勿論ですが、ファルコ死亡時、ハン戦時など、曲の使いどころが神がかっているのも最強挿入歌たる所以だと思います。WIND & RAINも合わせて、北斗2は本当に挿入歌の使い方が上手い。


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