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[第140話]
カイオウ悪魔の選択!
俺の全身には冷血が脈打つ!!


 シャチが辿り着いた、山中にある一軒の小屋。そこは、かつて己が北斗琉拳の修行中に利用していた場所であった。その小屋に住む老人コヨテは、久しぶりに逢ったそのシャチの姿に驚いた。右目につけられた眼帯。背中に抱えられ傷だらけの男。それらは、シャチの身に只ならぬ事が起こっていることを知らせるに十分な材料であった。

 傷ついたケンシロウをベッドへと寝かせたコヨテであったが、やはりその姿は死んでいるようにしか見えなかった。しかし、シャチは知っていた。北斗神拳には、体内の活動を最小限に抑えることで体力を回復させる術があることを。必ずケンシロウは蘇る。そう信じているが故に、シャチはその右目を捨てたのだった。彼が身につけた眼帯は、父赤鯱の形見の品であった。ケンの為に目を捨てた今の己の姿を、シャチは亡き父に誇るのであった。

 群将ケインの城には、カイオウからの廻状が届けられていた。修羅の国に楯突く二人の男、ケンシロウとシャチ。彼等を倒した者には第三の羅将の地位を与える。記されていたその内容に、ケインは喚起した。羅将に匹敵すると言われた実力を示す機会を、彼は待ち続けていたのだ。翌朝、街にはケン達の行方を追うケイン配下達の姿があった。彼等が二人の情報を掴むのに、さほど時間はかからなかった・・・

 食料を採りに出かけたシャチにかわり、コヨテはケンの看病を続けていた。野心に凝り固まっていたシャチの心を氷解させた男、ケンシロウ。彼こそがこの国の救世主である事を、コヨテもまた信じるようになっていた。だがその時、修羅達によって小屋の扉が蹴破られた。ケイン一味は、既にこの小屋がケン達の隠れ場所だと突き止めていたのである。寝ている男がケンシロウだと見抜いた修羅達は、ケンを渡すようコヨテに要求。しかしコヨテは、ケンの前で両手を広げた。ケンシロウを命を賭けて守らねばならないという思いは、もはやコヨテも一緒だったのである。しかし、修羅の刃は容赦なくコヨテの体を切り裂いた。崩れ落ちるコヨテの血がケンの包帯を赤く染める。そしてそれは、ゆっくりとケンの体の中に染込んでいった。ケイン様を呼ぶまでも無い。そう言って、一斉に刀を振り上げる修羅たち。しかし次の瞬間、突如響いた奇怪な音に、彼等は刃を止めた。それは、眠れる男に鼓動を蘇った音であった。青白い闘気と共に、ゆっくりと体を起こしたケンシロウの目には、怒りの炎が宿っていた。

 シャチが帰ってきた時、既に小屋はケインの軍に取り囲まれていた。しかし、ケイン達もまた目の前の異常事態に緊張を走らせていた。次の瞬間、眩い光と共に小屋は爆発。そこにあったのは、遂に蘇ったケンシロウの姿であった。相手は死にかけとタカをくくり、一斉に飛び掛かる修羅達。しかし、彼等の肉体は次々と宙に消し飛ばされていった。蘇ったケンの闘気は、修羅の身体をもってしても耐えられぬほど強くなっていたのである。唯一生き残ったケインは渾身の闘気波を放つが、今のケンにそんなものが通じる筈も無かった。傷一つ無いケンの姿に慄き、剣を手にヤケクソで襲い掛かるケイン。それに対し放たれたケンの闘気は、先程のそれを遥かに凌駕していた。滝を逆流させる程のその威力は、ケインの身体を完全にこの世から消滅させたのであった。

 コヨテは奇跡的に生き残っていた。そのコヨテの心、赤鯱の命、そして失われたシャチの目。その彼等の想いが己の傷を癒してくれた事を、ケンは知っていた。恩義に応えようと願いを聞いてきたケンに対し、シャチは躊躇無く応えた。俺の願いはお前と同じ、カイオウの命であると。

 ケイン敗北の報は、カイオウの耳にも届けられていた。未だ途絶えぬ北斗宗家の血に、苛立ちを募らせるカイオウ。そんな時、修羅から入れられたもう一つの報告にカイオウは反応した。第二の羅将ヒョウが、この城に向かっているというのである。無論その目的は恋人サヤカに会う事であった。ヒョウ様が来ればサヤカ様の機嫌もよくなり、リンを引き渡してくれるかもしれない。そうカイオウに告げる修羅であったが、カイオウはそれとは全く別の事に思案を巡らせていた・・・

 いつかこの国が平和になったとき、ヒョウと共に海を渡ってみたい。サヤカは自らの夢をそう語った。しかし、カイオウが羅将として君臨している限り、その平和が訪れない事を彼女は知っていた。いつか戻ってきたケンがカイオウを倒す。リンはそう語るが、兄を失うのもサヤカにとっては辛い事に変わりなかった。ヒョウに相談すればなんとかなる。そう信じ、恋人の到着を待ち続けるサヤカであったが。既にその背後には悪魔の手が迫っていた。

 サヤカの部屋に踏み込んできたのは、カイオウであった。リンをかばい、なんとかカイオウを説得しようとするサヤカ。しかし、彼の狙いはリンではなかった。破孔 無感補。サヤカに突かれたそれは、痛みを感じなくなる破孔であった。カイオウは、実の妹であるサヤカを殺すためにやってきたのである。この世に生きる全てがカイオウのために在る。新世紀創造のためには妹ですら殺す。それがカイオウの信じる覇道であった。放たれた魔闘気にその身体を貫かれるサヤカ。薄れゆくサヤカの意識の中には、やさしく笑う恋人の笑顔が浮かんでいた・・
放映日:87年11月19日


[漫画版との違い]
ケンが復活して滝を逆流させるのと、サヤカが殺されるシーン以外はほぼアニメオリジナル。ただケン復活のシーンは、ケイン一味らの襲撃等もあり、原作とは大きく変わっている。
・シャチがケンをかくまったのは、原作では山に張ったテントだが、アニメではかつてシャチが修行中に使用した小屋
・ケンをかくまった先に居るのが、原作ではレイアだが、アニメでは小屋の持ち主であるコヨテに変更。
・原作ではいつの間にかケンは復活していたが、アニメでは自らを守ろうとするコヨテの危機をうけて復活。
・原作ではただ闘気を放出させて滝を逆流させたが、アニメではケインを倒すための闘気で逆流する。
・ヒョウが城に向かっていると聞いて、カイオウが魔闘気を激しく噴出させるシーン追加。
・部屋に来たカイオウに対し、原作のサヤカは、ヒョウが来る事を喜々して告げたが、アニメではリンを連れ戻しに来たと思ってリンを庇った。同時に原作ではその場にいないはずのリンが、アニメでは居合わせる。
・カイオウのサヤカへの最初の一撃に、痛みを感じなくなる破孔という設定が追加。



・意外と豊かな修羅の国
シャチが修行したといわれる山地。川もあり、木もあり、狩りに出れば食料となる獲物もいる。自給自足できる能力さえあれば、この時代においては非常に豊かな場所だといえるだろう。っていうかこんな場所があるって時点で、修羅の国って海の向こうの国よりかなり豊かなんじゃないのか?川を真っ赤に染めてる事を考えても、水には全く不自由してないって事だろうし。うーん、カイオウさえいなきゃいい国になってたんだろうなあ。
・この男の血はわが血の中に!
胸についたコヨテの血を、じわ〜っと体内に吸収するケンさん。
もしかしてこれが噂の
愛羅承魂すか?
・寝起きだから

コヨテじいさんが切られた!
ケンさん復活!
おかんむり!
闘気爆発!
ドカーンって小屋まで粉微塵!
・・・て中にまだコヨテがあああああ!!!
じいさ―――――――ん!!
「だ、大丈夫ですっ」て生きてんのかよ!
すげーな


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