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Z編
(1話)

199X年 世界は核の炎に包まれた!!
海は枯れ 地は裂け
あらゆる生命体が絶滅したかにみえた
だが・・・人類は死滅してはいなかった!!

 荒野を行く一台の車を目掛け、バイクに乗った暴漢達が武器を手に襲い掛かる。彼等の名は「Z(ジード)」。荒廃した世界が生んだ盗賊集団であった。村人たちはあっという間に惨殺され、Z達は奪った水や食料を貪る。文明の失われた世界は、暴力によって支配する世界へと変貌していた。

 そんなZのもとに、火急の報せが飛び込んできた。偵察隊が何者かに殺されたのだという。駆けつけた団のボス・ジードが目にしたのは、身体の内部から爆ぜたような異形の死体であった。その内の一人が最期に言い残した言葉「ほくと」とは・・・・

 水を求めて砂漠を彷徨う一人の男。とある村で罠にかかり、投獄されたその男―――ケンシロウは、コソ泥の罪で捕らえられた少年バット、そして牢の見張りを任された少女リンと出会う。リンは目の前で親兄弟を殺されたショックから、言葉を失ってしまっていた。自らに水と食料を与えてくれたリンに対し、ケンシロウは軽く頭部に触れ、こう告げた。喋れるようにおまじないをした。あとは彼女の心次第だと。

 Zの一味かを調べるため、長老の前に引き出されるケンシロウ。その胸に刻まれた七つの傷・・・死を司ると言われる北斗七星の星列は、長老に戦慄を走らせた。そしてその不安は、すぐに現実のものとなった。Zが村へと襲来してきたのである。女子供も皆殺しにするZが相手では、リンも容赦なく殺される。それを知ったケンシロウは、おもむろに鉄格子を掴み、超人的な力でそれをひん曲げて屋外へと飛び出した。そこで彼が目にしたのは、ジードの腕の中に捕らわれたリンの姿であった。
自らに歩み寄ろうとするケンを見たリンは、声を上げて叫んだ。
「ケ――――ン!!来ちゃだめ―――!!」
声を失ったはずのリンの心の叫びを生んだもの。それはケンシロウが持つ神秘の力に他ならなかった。

 立ち塞がるZのメンバーに、ケンシロウの回し蹴りが炸裂する。数秒後、その男たちの頭部がボンと破裂した。北斗神拳―――。かつて中国より伝わったとされるその暗殺拳は、一拳に全エネルギーを集中し、肉体の経絡秘孔に衝撃を与え、内部からの破壊を極意とした一撃必殺の拳法であった。その死に様から、偵察隊をやったのが目の前の男であることを確信し、激怒するジード。そんな、自らの倍ほどの身の丈のあるジードに向かい、ケンの高速の連続拳が叩き込まれる。北斗百裂拳。その攻撃は、蚊に刺されたほどの痛みもなかった。だが経絡秘孔を突かれたジードの肉体は、既に死んでいた。数秒後、彼の体は、血飛沫を撒き散らしながら肉片へと姿を変えたのであった。

 村を去るケンシロウと、その後ろをついていくバット。自らが不幸を招く存在である事を知るケンは、己が出て行くことが最良の選択であると知っていたのだった。リンは、その去り行く背中をいつまでも見送っていた。




・199X年 世界は核の炎に包まれた!
最近はどこぞに配慮してか、「核」という表現を控えて「最終戦争の炎」とかいう言い回しにされる事が多くなっているのが哀しい。核廃絶ってそういうことじゃないんじゃないのか。
・旧札を持っている村人たち
聖徳太子が描かれた「C号券」と呼ばれる一万円札は、1986年に発行停止となり、その後は福沢諭吉が描かれた「D号券」へと変わりました。しかし北斗の拳の舞台は199X年以降であるにも関わらず、第一話に登場する村人たちは大量の「C号券」の札束を持っていました。
「古札マニアだった」とか、「どこかの金庫に長年しまわれていた札を持ち出した」という可能性も考えられるが、もしかしたら北斗の拳の世界では、
核が落ちる90年代もC号券が使われていたのかもしれない。あの世界は、我々の住む世界とは微妙に異なる平行世界である。それは核が落ちる前の時代も同じ。我々の世界は平安を保っているが、
向こうの世界では90年代に核が落ちるほど世界情勢が不安定だった。そんな中でお札のデザインを変更しようなんて悠長なことをしている場合ではなかったのだ。
・胸の傷を繋ぐ線
第一話のケンシロウが七つの傷を披露したとき、その傷同士が線で繋がっているのが見て取れる。しかしこれは後の回では綺麗に消えてしまっている。単に設定が固まっていなかっただけともいえるが、その答えとなるヒントは「真救世主伝説北斗の拳 ZEROケンシロウ伝」にある。あの作品の中で、シンに七つの傷をつけられたケンシロウは、うまく気が練れなくなっていた。つまりあの北斗七星の位置は、ケンシロウの経絡を繋ぐ要所だったわけだ。ケンシロウがもしその経絡の流れを回復させる為に強引に経絡に気を流したのだとすれば、七つの傷を繋ぐ経絡が異常をきたし、それが体表に現れたのだとしてもおかしくは無い。それがあの星を繋ぐ線の正体ではないかと考えられる。そして経絡が完全に回復した後は、その跡が綺麗サッパリ消えてしまったというわけだ。
・中国より伝わった北斗神拳
北斗の拳の中では、北斗神拳が生まれたのは修羅の国であるという所までしか明らかにされませんでしたが、後に蒼天の拳の中で、ちゃんと北斗神拳の創始が三国志時代の中国であることが明かされました。18年後にちゃんと設定を回収されているのが凄い。
・Zは女子供も皆殺し
Zの手に掛かれば村人たちは1分経たずに皆殺しにされるのだという。たいした手間でもないというわけだ。だがZはリンを人質にとり、村人たちに降伏を要求した。残虐非道な集団のように思われているが、意外と(悪党の中では)話の通じる相手だったのではないだろうか。少なくとも次の相手であるスペード一味に比べれば・・・
・おまえはもう死んでいる
は、原作第1話では言っておりません。正しくは「おまえはもう死んでる・・・」です。
「おまえはもう死んでいる」は原作59話、拳王親衛隊のカシムに言ったのが最初で最後です。


【TVアニメ版での主な変更点】
リンの愛犬「ペル」が登場。暫くの間、ケン達と旅をともにする。
掴まったバットがハーモニカを吹いてのダンスを披露して見逃してもらおうとする
村でケンシロウが掴まるシーンが、仕掛け網にかかるというものから、井戸の水を勝手に飲もうとしていたところを水番に掴まるというシーンに変更されている。

KING編