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KING編
(2話〜10話)

 荒野を往くケンシロウとバットは、盗賊集団が一人の老人を襲う現場に遭遇する。盗賊のボスの名はスペード。関東一円を支配する凶暴な組織集団「KING」の一員であった。スペード一味を撃退したケンシロウは、その老人・ミスミを村へと送り届けようとする。ミスミは、村の為にかき集めた種モミを持ち帰る途中であった。今日より明日・・・。今ある食料よりも、米を育て、食料を奪い合う事の無い世界を作りたい。そう語るミスミに、ケンシロウはこの世界から失われつつある「人間」の姿を見るのだった。

 ミスミを無事に村へと送り届けたケンシロウであったが、彼らが村を離れたまさにその時、復讐に燃えるスペード一味が村に攻め込んだ。急いで駆けつけたケンシロウであったが、既に村は惨劇の場と化し、ミスミはスペードによって殺されてしまう。怒りに震えるケンシロウは、圧倒的なパワーでスペード一味を打ち倒し、ミスミの眠る墓に弔いの種モミを撒くのだった。


 KING軍の本拠地、サザンクロスタウン。そこに居を構える軍団のボス・KINGは、スペードを倒したという七つの傷の男を誘き出すため、各地で村人たちを処刑を開始する。それを仕切っていた幹部の一人・ダイヤを成敗したケンは、闇に紛れてサザンクロスへと潜入し、三人目の幹部・クラブをも撃退する。そんな中、村の奴隷たちが焼印を押される血の十字架(ブラッディークロス)の形を目にしたケンシロウは、ある確信を抱いた。KINGの正体・・・それは、ケンシロウの胸に七つの傷を作った男、シンであった。

 兵士たちの捜索の目を抜け、KINGの居城へと潜入したケンシロウは、遂に宿敵・シンとの再会を果たす。そこに立ち塞がったのは、KINGの最後の幹部・ハートであった。秘孔への攻撃が届かぬその肉体の前に苦戦を強いられるケン。しかし、シンの傍らに、恋人ユリアの姿を発見したケンは、奥義・北斗柔破斬にてハートを打ち倒し、自らの成長をシンに示すのであった。

 一年前―――。ユリアと共に旅立とうとしていたケンシロウの前に、シンが現れた。ユリアに想いを寄せていたシンは、この世紀末の理にのっとり、力ずくでユリアを奪いに来たのだった。シンの欲望・執念の拳の前に敗れたケンシロウは、その胸に七つの傷を穿たれ、ユリアを連れ浚われたのであった。

 一年ぶりに相対したケンシロウの拳は、シンの力を遥かに上回っていた。ケンを変えたもの、それはシンが教えた執念の力に他ならなかった。ならばその執念の元を断ってやろう。そう言って、ユリアの身体を拳で貫くシン。だがケンの力は失われるどころか、更なる力を得てシンの身体を吹っ飛ばした。それは、執念に勝るケンシロウの「怒り」であった。

 急いでユリアへと駆け寄るケンシロウ。しかしそこにあったのは、精巧に作られたユリアの人形であった。ユリアは既に亡き人となっていた。己の為にシンが略奪と殺戮を繰り返すことに耐えられなくなったユリアは、自らその命を絶ち、シンの暴虐を止めようとしたのであった。富や権力・・・そしてサザンクロスの街。ユリアの心を掴む為に手に入れたものが、ユリア自身の心を傷つけていたことに、シンは気付くことができなかったのであった。

 経絡秘孔を突かれたシンの身体に最期の時が迫る。だがシンは、ケンシロウの拳では死なぬと告げ、ユリアと同じく城から身を投げた。そんなシンのために、ケンシロウは墓を作った。それは、シンが自らと同じ女を愛した男だからであった。



・関東一円を支配するKING軍
バットのこの台詞から、北斗の拳の初期の舞台は日本の関東地方だと言われている。実際のところ、関東一円とはどこまでの範囲を指すのだろうか。調べてみたが、どうやらハッキリとした線引きはないらしい。関東地方全てを指すものや、東京を中心とした正円の範囲だとも言われている。
ラオウ外伝の中で、ラオウが居城とするために奪った鬼巌城は、北関東の半分を支配する鬼王軍のものであった。この領土もまるまる拳王軍の支配下となったと考えられるので、初期の拳王軍は、茨城、栃木、群馬の北半分ほどを領土としていたということになる。これにKING軍の関東一円を合わせて考えると、
茨城、栃木、群馬の北半分が拳王軍、その南側がKING軍の領土であったのではないかと考えられる。しかしそれだけ隣接したのなら、ラオウは速攻でKING軍に攻め込んでいたような気もするが・・・・
・北斗神拳は残る70%の潜在能力を使う
よく言われる「人間は30%の力しか使っていない」というのは、普段の生活で出しているのがそれくらいというだけで、別に100%を出せないということではない。常に100%の力を出して生活すると筋肉が壊れてしまうため、自動的に脳が力をセーブしているのだ。その100%を出した時の力が、いわゆる「火事場の馬鹿力」と呼ばれるものである。そう考えるとケンのやっていることも大した事無い様に思えてしまう・・・・が、ケンシロウが見せるパワーは、そういったレベルで片付けられるものではない。どれだけ追い詰められた状況であっても、我々は決してあの超人的パワーを出すことはできない。つまりケンシロウが言う「残る70%の潜在能力」とは、火事場の馬鹿力とは根本的に違う、それこそ北斗神拳だからこそ引き出すことのできる神秘の力なのだ。
・ケンシロウ、ミスミの墓に種モミを撒く
なに?折角ミスミが守り抜いた種モミを無駄にすんなって?
いやいや、ちゃんと実りますよ!


・処刑された村人の背中にケンへのメッセージ
作中に日本語文字が登場したのってこれが最初で最後なんですよね。多分。
・北斗神拳は暗殺拳。闇の中で真価を発揮する。
作中で北斗神拳がほとんど暗殺拳として使われないのは何故だろうか。それは、暗殺をする意味が無いからである。北斗神拳が暗殺拳たる所以は、その拳の伝承者が英雄の守護者となり、平安を脅かす存在を影ながら抹殺するためである。誰にもその殺害方法を悟られないことで、乱世を招くことなく密かに時代を守護しているのだ。しかし北斗の拳の世界は、力がモノを言う時代。リーダーとして覇を唱えるのはいずれもケンシロウに負けず劣らずの闘士ばかり。シン、サウザー、ラオウらの寝室に忍び込んで暗殺することなど出来ないのだ。それが出来ないのなら、自らの存在を隠すことも意味が無いわけで、雑魚をチマチマ暗殺する必要もなくなる。故にケンシロウは、暗殺拳の伝承者でありながら、真昼間からモヒカン相手に大立ち回りしているのである。
・ハート
どんな攻撃もやわらかく包み込んでしまう特異体質を持つハートだが、彼の最も脅威的な所は別にある。それは、攻撃力だ。あのケンシロウをビンタ一発で脳震盪を起こさせたというのは凄い。しかもガードの上からである。ケンシロウはラオウのハイキックをもガードで凌いだのだから、単純に考えればそれよりも威力が上という事になる。また、自分の腹の前にいる相手を叩こうとしても遠心力がのらないので、彼の100%のビンタは更に強力であることは明白だ。もしかしたら彼の肉体は全身がゴムのようになっており、その伸縮の反発力を用いることで凄まじい破壊力を実現させているのかもしれない。
シンがケンの胸に七つの傷を穿った理由
それは、ケンシロウのパワーを無力化にするためではないかと思われる。ジード編の注目点でも書いたが、「真救世主伝説北斗の拳 ZEROケンシロウ伝」において、あの傷を付けられたケンシロウはうまく気が練れなくなっていた。つまりあの北斗七星の位置は経絡を繋ぐ要所であり、そこを破壊することでシンはケンシロウを著しく弱体化させたのである。傷の癒えたケンシロウが己よりも強くなったりせぬよう、シンはあの傷をつけることで保険をかけていたわけだ。失敗に終わったのは、ケンシロウの潜在能力を量り違えていたからだろう。
また、あの七つの傷だけがいつまでも残り続けているのも同様の理由だと思われる。体内の気が集中する箇所を、闘気を込めた指先でじっくりと破壊されたケンは、北斗神拳の拳士として再起不能となったはずだった。だがケンの体に流れる北斗宗家の血は、破壊された経絡を無理矢理修復させ、穿たれた傷そのものを経絡の中継箇所として再利用したのである。つまり今のケンの肉体は、あの傷がある状態こそが「正常」であり、むしろあの七つの傷なくしては力を発揮しない身体となっているのである。
・ユリアの正体は人形
あれを作ったということ自体がもう狂気だけど、あの精巧な人形をモデルが手元にない状態で作ったという事実が更に恐ろしいですよね。おそらく写真も無いし、事前に型取りしたなんてこともないだろうから、全てはシンの記憶のみを資料に製作したということだろう。つまりシンはユリアの肉体を立体的に100%完璧に記憶していたということになる。それもこれも全ては愛が成した奇跡なんだろうなあ。うん、キモい。


【TVアニメ版での主な変更点】
アニメではスペード、ダイヤ、クラブ、ハートの他にも多数のKING軍幹部や傘下の軍団が登場。諜報や斥候などを担当するKINGの右腕的存在であるジョーカー、軍団を纏める大将軍バルコムの他、南斗聖拳諸派を使う拳士達がケンシロウと戦う。それに伴いアニメオリジナルのエピソードも多数存在する。
KING四天王の頭にあるアルファベットがKからJに変更されている。
クラブと戦うのは原作ではサザンクロスだが、アニメではドラドの街。
ハートと戦うのは原作ではシンの居城だが、アニメではケン達が解放した捕虜と共に逃げているところにハート軍団が現れて戦うというエピソードに変更されている。
リンがケンシロウ達と再会するのは原作ではGOLAN編だが、アニメではKING軍に捕らえられ、ドラドの町で働かされていたところを助けられる。
サザンクロスのある場所が「悪魔の目の中」という地であるという設定に。原作とは違い、長い旅の末に辿りつく。
アニメではGOLANやジャッカル一味(ウォリアーズ)もKING軍の配下という設定に。
バットが自作したバギーが登場。以降ケン達もそれに乗っての移動が多くなる。
ミスミの種モミが一度スペードに奪われるがそれをバットが取り戻しに行くエピソードが追加
原作ではユリアが死んだ時期が明確にはわからないが、アニメではケンシロウがサザンクロスに到着する前日となっている。

≪Z編 GOLAN編