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杜天風
とてんぷう



登場:第154〜194話
肩書:大湖弊のボス
流派:瓶切り

 秘密結社「太湖幇」の御大。瓶切り(手刀で人体を切り裂く技)の使い手。非常に用心深い性格であり、危険を感じると直ぐに逃亡する。女性に興味が無いほどの博打狂であり、麻雀、競馬、ドッグレース、ハイアライ、カジノのサイクルを繰り返している。大の負けず嫌いで、麻雀でアガられると直ぐに瓶切をかましてしまうため、部下達のほとんどが義手になっている。

 かつて金貸し屋の劉宗建を殺害し、自宅から金品を全て強奪。その際、居合わせた息子の劉宗武を気まぐれで見逃すも、宗武の心には深いトラウマとして刻まれ、長年宗武の悪夢の中に現れ続けた。

 数年後、大湖弊の総帥として闇世界の権力者にまで上り詰め、やがてその野望は上海へ。国民党に取り入って抗日運動隊の支隊長の座におさまり、青幇を上海から追い出そうとした。その後、己の命を狙う宗武と、青弊の御大である玉玲に次々と刺客を差し向けるも、いずれも失敗。遂には競馬場で宗武に追い詰められるが、用心棒として雇ったヤサカのおかげで何とか生還を果たした。

 その後、自らの隠れ蓑として武装輸送船を購入。更には全身に高圧電流が流れる秘孔指突防御装置を纏うことで、防備を固めた。だが青弊が用意した潜水艦に魚雷を撃ち込まれ、船はあえなく沈没。更には宗武の目の前に浮上してしまい、高圧電流で反撃したものの、最後は海に蹴落とされ、感電死&溺死した。享年58歳。





 劉宗武!遂に最大のライバルくさいのが出てきた!とワクワクしていたら、なんかよくわからん肥満のヤクザが出てきて宗武のヘイトがそっちに向いてしまった。拳志郎との決着を心待ちにしていた身としては、大変イライラさせられたものです。ギャンブル狂だとか、ビミョーな強さとか、秘孔指突防御装置とかいう発想とか、そういったキャラ設定はとても良かったのだけど、敵としては正直物足りなかったかな。潘も文麗もノミの孔もヘッケラーも口をそろえて「杜天風はヤベエ」みたいな事を言ってたけど、どうもしっくりこなかったんですよ。だって拳志郎と宗武の二人を敵に回してたようなもんでしょ。どっちがヤベエかわかったもんじゃないよ。

 そんな超人二人が待ち受けているというのに、彼が上海まで乗り込んでこられたのは、ヤサカという最強の用心棒を手に入れることができたからだろう。たしかにあの拳法を見れば頼もしく思えるだろうが、それでも万全を期すなら、ヤサカが二人を倒したあとで上海入りすればよかった。火事場泥棒という甘い汁に誘われ、軽率に宗武達の前に姿を現してしまったのは、用心深い彼らしくない行動と言える。

 だが彼には、もうひとつ頼りになる存在があった。それはあの秘孔指突防御装置・・・ではなく、国民党の協力だ。国民党統局と裏で繋がった杜天風は、党の戦闘機を使って潘光琳の屋敷を爆撃させるという暴挙まで起こした。それほどの協力を得るためには、杜自身が上海入りし、抗日行動隊の支局長として活動する必要があったのだ。だが実際は、戦争をする"フリ"だけして、彼自身はのうのうとギャンブルに興じていた。自らの欲望のため、彼は中国で高まる反日感情まで利用したのである。う〜む、確かに大悪党だ。

 ただ彼の誤算は、思ったほど国民党の協力が得られなかった事だろう。確かに戦闘機は出撃させられたが、その他に目立って党が協力した場面は見受けられなかった。杜としては、紅華会がフランス軍をボディーガード同然にしていたような関係を描いていたのではないだろうか。それが実現しなかった理由はいくつか考えられる。行動隊の幹部達に潘の息がかかっていた事。戦争をサボってることがバレた事。国民党の向世昌大佐を(麻雀のいざこざで)殺したのがバレた事などだ。だが私としては、裏で章烈山が動いていた可能性を挙げたい。父・章大厳の想いを知った章烈山は、心を入れ替え、国民党の大幹部として国のために尽力することを誓った。今は中国がひとつとなって日本と戦わねばならないとき。そんな時に杜天風個人の野望ために軍を動かすなどあってはならない。そう考えた烈山が、大湖弊には協力せぬよう党内に布令を出していたのではないだろうか。もちろんその中には、青幇や拳志郎に対しての詫びの心も含まれていた・・・なんて裏設定があったりしたら、素敵じゃないですか?ちょっとは烈山の汚名も漱がれませんかね?