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潘 玉玲/李 秀宝
はん ぎょくれい     り しゅうほう



登場:蒼天の拳(第2話〜)
   蒼天の拳リジェネシス
   蒼天の拳REGENESIS
肩書:拳志郎の女房 馬賊の頭目 青幇の頭首
CV:久川綾(アニメ蒼天の拳)
   冬馬由美(REGENESIS・ぱちんこ・リバイブ)

 潘光琳の妹。霞拳志郎の恋人であり、後の妻。記憶を奪われた後、馬賊の女頭目「李秀宝」を名乗り、その後は兄を継いで青幇の御大となる。

 幼い頃、兄の光琳や楊美玉と共に孤児院で暮らしていたが、翁洪元に引き取られて青幇へ。兄と二人で生活を送る中、行き倒れていた拳志郎と出会い、後に兄の許しを得て、恋人同士となった。しかし、結婚直前に拳志郎が日本に帰ってしまったため、自らは上海でその帰りを祈り続けた。
 その後、翁の策略に利用され、霊王の許婚として差し出されることに。それでも拳志郎を愛し続けたため、霊王の手によって記憶を奪われ、行方知れずとなった。

 その後の2年間は女馬賊「李秀宝」として生活。自分に生きる術を教えてくれた王欖把の死を受け、その遺言に従って上海の北大路剛士と会い、日本軍に帰順する意思を伝達。その中で、記憶の無いまま拳志郎と再会し、通師として接してきた拳志郎と共に日本軍との交渉に臨んだ。結果、拳志郎のおかげで処刑は中止となり、自らが犠牲になることなく帰順は成功。その後、徐々に記憶を取り戻し、思い出の地・平安飯店にて改めて拳志郎との再会を果たした。

 その後、怪我によって一線を退いた兄・潘光琳に代わり、新たな青幇の総帥の座に就任。杜天風率いる大湖弊に攻撃された際には、劉宗武を通じて潜水艦を用意するなど、兄をも上回る手腕と胆力で青幇を率いた。



 続編となる『蒼天の拳リジェネシス(漫画)』では、激化する日中戦争から身を隠すため、青幇の者達と共に廃寺に潜伏。姿を現した北斗の導師より、拳志郎が天斗聖陰拳との戦いに身を投じている事を知らされ、その身を案じた。
(現在も連載中)


 『蒼天の拳REGENESIS(アニメ)』では、流飛燕登場後のストーリーが原作から変更。青幇に対する中国政府軍からの攻撃が強まり、邸への爆撃によって兄・潘光琳が死亡。だがその哀しみの中でも御大としての強い心で弊を指揮し、エリカを狙うドイツ軍に対しても果敢に渡り合った。その後、激化する戦争や、ドイツ軍、ジェネシスといった組織の手から逃れるため、己たちを消息不明と偽装してインドネシアへ移り住んだ。
 4年後、ジャカルタにて孤児院を開いていたが、ジェネシスに居場所を突き止められ、エリカとヤサカが捕らわれの身に。二人を救出するため、紅華会の残党である田楽伝とも迷うことなく協力することを選んだ。また、飛燕の仇をとらんとする緋に対しては、女としての生き様を見せることで、拳にも勝る「女の強さ」を教えた。
 拳志郎が残り僅かの命となっても、決して弱さを見せることなく、今自分のできる事を全うする姿を貫き、同時に己が拳志郎の子を妊娠している事を緋鶴にのみ明かした。





 押しも押されもせぬ蒼天の拳のメインヒロイン。北斗の拳で同じポジションであるユリアさんが思ったほど出番がなかった事を受けてか、玉玲にはこれでもかというくらい潤沢なエピソードが与えられた。拳志郎との出会いや哀しき別離。記憶を抹消されて馬賊として生きる第二の人生。そして記憶なき状態での恋人との再会。死が迫る中でも己の過去を追い続け、上海に散らばる様々な記憶の断片をかき集め、遂に拳志郎と再会するそのシーンは、まさに蒼天の拳を代表する感動のシーンであった。アニメ版がここで終わらせたかった気持ちも良くわかる。


 彼女を一言で表わすなら「完璧超人」である。女性キャラクターとして、まさにスキがなかった。だがそれは最初からではない。李秀宝としての人生が、彼女をパーフェクトウーマンへと成長させたのだ。

 記憶を失う前の彼女には、「優しさ」と「美しさ」が備わっていた。瀕死の赤子が息を引き取るまで子守唄を歌い続けたその聖母が如き姿は、狂気の権化である芒狂雲が殺すのを止めてしまうほどであった。
 そして彼女は記憶を失い、女馬賊長の李秀宝としての人生を歩み始めるわけだが、ここで凄いのは、彼女は「変貌」したのではなく、ただ「成長」したのだということ。前の人生で持っていた「優しさ」「美貌」を一切失うことなく、更なる長所を身につけて舞い戻ったのだ。

 例えば「強さ」。以前の玉玲はどう見ても運動など出来そうになかったのに、僅か2年で馬の側面に身を隠してからの銃乱射というアクロバティックな技まで修得していた。もともと素質はあったということだろう。中でも銃の早抜きは、子供ながらに相当な強さを誇っていた羅門すら全く反応できないほどの速度を誇っていた。彼女が本気なら63代目伝承者はハゲる前にこの世を去っていたのだ。

 加えて「勇敢さ」。仲間を救うために銃を持った関東軍の前にたった一人で現れたり、自分ひとりの命を犠牲にして全馬賊の日本軍への帰順を申し出るなど、死を恐れない数々の武勇をみせつけた。だが拳志郎によると、その向こう見ずな性格は記憶を失う前かららしい。立場が変わり、最前線に出るようになったために表面化したのだろう。

 「賢さ」もそうだ。以前の彼女は字が書けなかったり、手紙を買いた後で相手の住所がわからなかったり、灯篭流しの意味を勘違いしていたりとドジっ娘な部分があった。しかし李秀宝となった後の彼女には、そういった隙は全く見当たらない。杜天風の武装戦を沈めるために潜水艦を用意するという発想も凄いが、宗武には杜が、拳志郎にはヤサカが、それぞれ船に居ることを隠しておくことで、揉め事を起こすことなく事態を解決せんとするその的確な判断力は、以前の彼女では難しかったと思われる。

 そして中でも特筆すべきが「カリスマ性」だ。女で、しかもあの若さで1500人の馬賊を束ねていただけでも凄いのに、その後更に上海を牛耳る黒弊の御大まで務めあげるという統率力。だが真に凄いのは、そのどちらにおいても部下達からの不満の声が全く出なかった事だ。馬賊やヤクザといったならず者達が、それぞれの組織で殆どペーペーの存在である彼女を、満場一致でリーダーだと認めているのである。北斗の拳にも、確かに女性のリーダーはいた。だがそれは、南斗正統血統や天帝といった、血の力に支えられたものだった。そういった力に頼ることなく、彼女と同等以上に組織を纏め上げられているのは、潘玉玲の持つ尋常ならざるカリスマ性故なのだ。そしてそれを支えるものこそが、上であげた「優しさ」「美しさ」「強さ」「勇敢さ」「賢さ」といった各スペックの高さであることは言うまでも無い。まさに完璧超人である。


 だが一つ、彼女に足りないものを挙げるとするなら、「人気」だろうか。完璧超人である彼女には嫌われる要素は無い。嫌われそうな行動も発言もほぼ無いと言い切れる。実際、嫌われてはいないだろう。だが、そのスペックに見合うだけの人気も無い・・・気がする。

 その理由はなんとなくわかる。おそらく彼女は完璧すぎたのだ。人の心を捉えるのは、えてして「欠点」なのである。不完全であるからこそ人はそこを肴に話を広げていく。不完全であるからこそ何とかしてあげたいと愛おしくなる。しかし玉玲の完璧さは、そういった所からのアプローチを一切許さないのだ。話題にしにくいキャラクターがイマイチ人気を得られないのは、ごく自然な結果と言えるだろう。


 ちなみに、TVアニメ版で彼女の声を務めた久川綾さんは、プレイステーション4専用ゲーム「北斗が如く」において、ユリアの声優を務めることになった。北斗と蒼天、双方のヒロインを演じた人物として、セーラーマーキュリーに匹敵する彼女のキャリアとなってほしい。