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[第37話]
あえて愛を拒む!死を呼ぶ 
凶星を背負うがゆえに‥‥!!


 アミバを倒し、マミヤの村へと帰ってきていた一行。トキとはどんな男なのか、レイのその問いに対し、ケンはトキが伝承者を断念せざるを得なくなった事件のことを語りだした。

 心技体、すべてにおいて、トキは非の打ち所のない男だった。そして、誰もが彼を次期北斗神拳伝承者だと認めていた。だが、核の炎が世界を覆ったあの日を境に、トキの人生は大きく変えられてしまった。

 死の灰から逃げるため、ケンシロウ、トキ、ユリアの3人は地下の核シェルターへと向かっていた。なんとか時間までに辿り着くことが出来た3人だったが、まだ奥には子供が残っていると聞き、ケンとトキは彼等の救出へ出動。だが、トキが最深部の子供を連れ帰ってきたその時、悲劇は起こった。地震によって、扉の自動開閉システムが故障をきたしてしまったのである。扉を閉める方法、それは外から強い力で閉めるしか方法はなかった。絶望的なその状況に言葉を失う一同。だが、もはや一刻の猶予も無いことを感じていたトキは、突如ケンとユリアを突き飛ばし、シェルターの中へと押し込んだ。トキは、自らが犠牲となって扉を閉める事を選んだのだ。止めようするケンに笑顔を返し、トキはゆっくりと扉を閉門。兄を助けんと、なんとか扉を開けようとするがケンであったが、シェルター内からはそれを咎める声が響いた。今扉を開けるということは、何人もの子供の命を奪うことになる。そう思った女性が、ケンに非情の申し立てをしたのだ。どうすることも出来ず、扉の前で泣き崩れるケン。そしてその直後、死の灰は、優しき男の全身を覆った・・・

 一週間後。開かれた扉の向こうには、灰にまみれたトキの姿があった。衰弱した体で、何事もなかったかのように笑顔を見せるトキ。だが、放射能によってトキの体に巣くった病魔は、トキを北斗神拳伝承者の道から断念させたのであった。


 ケンのために力になりたい。そう思ったマミヤは、トキの居場所を探し出すための旅へと出た。数々の街を渡り歩き、バイクで荒野を駆け抜け、遂にマミヤはトキに関しての確かな情報を入手することに成功。己の肉体目当てに寄ってくる男達を殴り飛ばしながら、マミヤはある酒場にたどり着いた。マミヤの目的、それは酒場の奥でひっそりと商売を続ける占い師のオババであった。このオババがトキの行方を知っているとの話を聞き、やってきたのである。だが、トキの居場所を聞き出そうとするマミヤに対し、オババは突如マミヤの運勢を占い始めた。自分は今日死ぬ。占いによってその事を知っていたオババにとって、マミヤは最後の客なのであった。

 「あんたには悪しき星が集まっている。待ちかまえる運命は死。しかし運命に従うも運命、運命に逆らうも運命。万物を支配する星の運命さえも不変ではない。古き星死せば新しき星が生まれる。己の運命は己の手で切り開くのじゃ…」

 トキはカサンドラという街に捕らえられている。全ての占いを終えたオババは、マミヤにそう告げ、そして彼女をを裏口へと案内した。すでにその酒場には、カサンドラの処刑部隊が集まり始めていたのである。オババは自らの運命に従うため、その場に残ることを決めた。彼女もまた奇跡の村にてトキに命を救われた者の一人であった。

 マミヤと入れ違いで酒場へと現れたカサンドラの処刑部隊。彼等の役目は、トキについて知ろうとする者の抹殺であった。トキについて詮索を続けるマミヤを殺すため、情報を頼りにこの酒場へとやってきたのである。マミヤの居場所についての質問をはぐらかしたオババを、ザコルは容赦なく殺害。処刑部隊は再びマミヤの追跡を開始した。運命は己の手で切り開く。占い師オババの残した言葉を胸に、マミヤはケン達の元へとバイクを走らせる・・・

 とある教会の前で、マミヤはバイクをとめた。こんな時代に結婚式を行う滑稽な夫婦が居る。側に腰掛けていた老人からその話を聞いたマミヤは、静かにその教会の中へ。そこには、神に祈りを捧げ、己達の愛を誓う夫婦の姿があった。そしてその時、マミヤは、自分が想う人・ケンのことを思い出していた・・・

 その頃ケンは、レイに連れられて村を発ち、岩山の道無き道を歩いていた。レイは、トキの居場所を探しに村を出たマミヤと、ある場所で落ち合う約束をしていたのである。熱い女だ。愛する男のために身を張るマミヤを、レイはそう例えた。

 夫婦の幸せに祈りを捧げ、教会を後にするマミヤ。だが既にその教会の前には、例のカサンドラ処刑部隊が到着していた。トキを嗅ぎ回る者は殺す。自らに与えられた任務どおりに、マミヤをその手にかけようとする隊長ザコル。マミヤもなんとか抵抗しようとするが、ザコルにはどんな攻撃も通用しなかった。あっさりと捕えられたマミヤに対し、ザコルは依頼者の名を吐かせるための拷問を開始。捻られるマミヤの腕関節が、軋みを上げる。だが後少しで骨が折れるかという時、その処刑に歓声を贈る者達が次々と爆死し始めた。その死骸の向こうから姿を見せたのは、ケンシロウとレイの2人であった。この教会は、マミヤとレイが決めた待ち合わせ場所だったのだ。相手が誰とも知らずに襲いかかった部下達は、北斗神拳と南斗水鳥拳の前に次々と死亡。やっと目の前の男がケンシロウだと知ったザコルは、マミヤを人質に必死の抵抗をみせる。だが、トキがカサンドラに捕らわれていることをマミヤが言った瞬間、マミヤの人質としての価値はなくなってしまった。任務を果たしたマミヤは、あっさりと己の死を覚悟してしまったからだ。もはや勝ち目はないと判断し、隊員達は全員逃亡。残されたザコルに秘孔を突いたケンは、己のカサンドラ襲来を首領に伝えるよう指示し、そのままザコルを深い眠りの中へと落としたのだった。

 危機を脱したことで力が抜け、その場にへたり込んでしまったマミヤ。そんなマミヤに手を差し伸べたケンであったが、引き起こした彼女に対し、ケンは非情にも村に帰るよう指示した。己の問題に他人を巻き込みたくないというケンなりの優しさだったのだ。しかし、マミヤは帰らなかった。自分がユリアの変わりに少しでもその苦しみをすくい取れるなら・・・例え自分が愛されないことがわかっていても、マミヤはケンのために少しでも力になりたかったのだ。その2人の報われぬ愛のために、レイは教会の鐘を響かせた。

 眠りから覚めたザコルは、バイクに乗って一目散にカサンドラへと帰還。だがそこでザコルが見た物は、散乱する部下達の死骸であった。彼等は逃亡の罪によって、獄長ウイグルに処刑されてしまっていたのだ。同じく敵前逃亡をしたザコルに対しても、ウイグルは処刑を決定。巧みな鞭捌きで逃げるザコルを捉えたウイグルは、激しく鞭をうちつけ、ザコルの身を鮮血に染めたのであった。カサンドラの鳴き声をケンシロウの弔い歌とせんがため、ウイグルの鞭は更にその血を求めていた・・・
放映日:85年7月25日


[漫画版との違い]
・ケンが一度マミヤの村に帰ってきているシーン追加
・ケンがマミヤの村で、トキが死の灰を浴びた事件を話す(原作ではカサンドラに着く直前)
・核シェルターへと逃げるとき、ケンやトキが地下通路の更に奥まで子供を助けに行くシーン追加
・ケンに扉を開けないでとシスターが頼むシーン追加
・トキが核シェルターに入らなかった理由が、定員オーバーから、故障で外から閉めねばならなくなったに変更
・マミヤがトキの情報を求めて聞き込みを繰り返し、占い師に会い、その後占い師がザコルに殺されるまでのイベント追加
・ザコルの部下がケンシロウと知らずに襲い掛かり、やられるシーン追加
・秘孔から目覚めた後、カサンドラに帰ったザコルが、逃亡の罪でウイグルに殺されるシーン追加


・シェルターの謎
必ずと言っていいほど誰もがツッコむシェルターの一件。「つめたらまだ入れるやん」。原作の描写では、どうつめても2人までしか入れないはずのシェルター内に、どう見ても大人3人分以上のスペースがあるのだ。アニメスタッフも流石にツッこまれるのをわかっていて作品を作ることが出来なかったのか、「扉の故障で外から閉めなきゃ駄目」という最もらしい理由に変えていた。
やっぱりアニメスタッフも気になってたんだね・・・
・残念でした
トキの名を徹底的に汚しきったはずのアミバドクター。でも実際はマミヤの聞き込み結果から判るように、あんまり世間的にトキ=殺人気のイメージって定着してないのよね。残念!奇跡の村の生き残りは全員木人形にしておくべきでしたねドクター。


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