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[第36話]
ふりかえる過去はない!
ただ悪を憎みトキを撃つ!!


 ケンとリンを探して奇跡の村へとたどり着いたレイ達。彼等の姿を見つけ、駆け寄ってきたのは、リンの犬・ぺルであった。ペルが主人の居場所を示すかのように吠える先。そこにあったのは、禍々しく聳え立つトキの城であった・・・

 弟への恩情の証である背の傷を見たケンは、自分に攻撃することは出来ない。ケンの甘さを知るトキはそう確信していたが、ケンの平手打ちは容赦なくその横っ面を叩いた。ケンの非情の血の前では、相手が恩人であろうが兄であろうが関係なかったのだ。迷いの消えたケンの拳は、最早トキに見きれるスピードではなかった。散々殴られた上、もはや気配すら捕らえることすら出来なくなり、完全に劣勢に追い込まれるトキ。だが、夫の上で泣きくずれているユウの母親をみた瞬間、トキにある秘策が浮かんだ。ユウの母をその手に捕らえたトキは、彼女を抱えたまま跳躍。母親を盾にしてケンの間合いに入ろうと考えたのである。そして、その予想通りにケンが母親をキャッチした隙を、トキは逃さなかった。秘孔 戦癰。トキの発見したその新秘孔を突かれたケンの体は、ビクとも動けなくなってしまった。自らを一瞬でも怯えさせた恨みを晴らさんと、無防備なケンにトキの拳が飛ぶ・・・

 トキの居城へ向かおうとするレイ達の前に、ネバダ率いるアミバの親衛隊が立ちふさがった。だが、レイの顔を見た途端、親衛隊長のネバダの表情は一変した。2人は古い知り合いであり、過去を知る者同士であったのだ。そして、その焦るネバダの表情は、レイにある事を悟らせてしまった。とにかくレイを殺してしまえば問題はない、そう考えたネバダは部下達に攻撃を指示。しかしレイやマミヤどころかバットにまでバカにされた親衛隊は、あっという間に全滅。結局ネバダはレイに道案内させられる羽目となったのであった。

 木人形と化したケンに、罵声と攻撃を浴びせ続けるトキ。だがその時、切り刻まれたネバダの死体と共にレイが現れた。そして、再会したレイの口からもたらされた言葉に、ケンは耳を疑った。目の前のこの男はトキではなく、かつてレイと共に南斗聖拳を学んだアミバなる男だというのだ。アミバとネバダは昔から2人でつるみ、悪行を繰り返していたコンビだったのである。そして、すべてを暴露されたアミバは、ついに偽のトキという仮面を剥がしたのであった。

 己の天才を誰も認めようとしない。それが、アミバを狂気に走らせた原因であった。今まで自分をバカにした連中を見返す為、トキになりすまし、ケンを倒して、北斗神拳伝承者となろうとしたのである。そして、その己の才を強調するかのように、目の前に倒れる無様な正当伝承者を足蹴にするアミバ。しかし、アミバの余裕もそこまでだった。ケンは、突如その身を隆起させたかと思うと、次の瞬間、ゆっくりとその身を起こし始めたのた。北斗神拳の奥義の一つ、秘孔封じによって、アミバの秘孔を封じ込めてしまったのである。本物のトキが突いたならば、俺でも秘孔を破ることは出来なかっただろう。己とトキとの実力の差を示唆するそのケンの台詞にアミバは激怒した。アミバにとって、トキより劣っているといわれることは、何よりも屈辱的なことだった。

 苦しまれに放った鷹爪三角脚をアッサリ破られたアミバは、背後の部下達にケンを襲うよう指示。しかし、部下達は一向に動こうとはしなかった。彼等は、いままで目の前の男をトキだと思ってきたからこそ命令を聞いてきたのである。己達の頭が偽のトキであったと知った部下達は、防具を捨て、リンも解放。誰しもがトキを認め、天才である己を認めようとしないその現実に、遂にアミバはキレた。アミバのトキに対する異常なまでの嫉妬心。その発端となったのは、奇跡の村で起こったある事件であった。

 トキの噂を聞いたアミバは、奇跡の村へとやってきていた。村人達の信頼を一身に集めるトキに嫉妬心を抱いたアミバは、自らが救世主に成り代わろうと、足の悪い老人に接近。自らが習得した秘孔で、老人の脚を治そうとする。トキ様に直して貰ったからもういい。その老人の言葉を無視し、無理矢理秘孔を突くアミバ。だがその誤った秘孔は、老人の足を更に悪化させてしまうこととなった。とその時、異常事態に気が付いたトキが現場へと駆けつけてきた。アミバの顔をはたくように押しのけたトキは、正しい秘孔を突き直し、なんとか老人を救うことに成功。しかし、アミバは怒りにその身を震わせていた。顔をはたかれたこと、そして自らの未熟さを公にされた事が、彼のプライドを傷つけたのだ。怒りに身を任せ、トキに襲い掛からんとするアミバ。だが、トキの鋭い技のキレの前に、アミバは全く動くことが出来なかった。そしてその時、己の才を見下されたアミバの中には、トキに対する強い復讐心が生まれたのだった。

 くだらない理由でトキと北斗神拳の名を汚したアミバ。腐りきったその男に制裁を与えんとするケンに対し、アミバは遂に奥の手を出した。己の発見した新秘孔を使用し、自らの体を人間とは思えないほどに膨らませてきたのだ。アミバ流北斗神拳と称するその肉体で、ケンに立ち向かわんとするアミバ。だが次の瞬間、突如アミバの腕が破裂したかと思うと、その強靭な体は空気の抜けた風船のようにしぼみ始めた。既にケンは秘孔を突き、アミバの両手を破壊していたのだ。攻撃手段を失い、戦意喪失するアミバに、ケンは怒りの北斗残海積歩拳が炸裂させた。

 秘孔膝限をつかれたアミバの体は、己の意志とは無関係に後ろへと歩き出した。背後に広がる断崖絶壁へと向かい、その歩を進ませるアミバ。手首から先が消し飛んだ腕では、秘孔を突いて止めることもできなかった。天才のこの俺が何故!自らの犯した罪を理解せぬまま、城下へと身を投じるアミバ。そのまま宙でその身を粉々に破裂させたアミバだったが、彼が今際の際に残した「拳王」という言葉が、ケン達の頭に引っかかっていた。

 この世紀末の世を支配しようとしている男。レイも、拳王の噂をそこまでしか知らなかった。もしやトキはその拳王に捕らわれているのかもしれない。そういって不安を覚える一同であったが、ケンはトキが簡単に死ぬような男でないことを知っていた。
放映日:85年7月18日


[漫画版との違い]
奇跡の村に着いたレイ・マミヤ・バットがネバダ率いるトキ(アミバ)の親衛隊と闘うシーン追加
戦癰をつかれて地に倒されたケンに、アミバが「靴を嘗めろ」と指示するシーン追加
・アミバの前で南斗水鳥拳でやられた男が、アミバの親友兼親衛隊隊長ネバダだという設定追加
・どいつもこいつもトキトキ言われて怒ったアミバは、原作では床をぶちこわしたが、アニメではひびが入るだけ
・アミバの断末魔が「うわらば」から「拳王様〜!!」に。
・その後レイに軽い拳王の説明を受け、この時点でケンシロウが拳王の存在を知る。



・愛は最強

アミバの親衛隊と闘うことになったレイ、マミヤ、そしてバットの3人。いつものように戦闘中何処にいたのかってな具合に隠れるのかと思いきや、なんとおもむろに
謎のポーズを取り出すバット。何をする気だ!?とおもいきや、なんとバットは斬りかかってきたアミバ親衛隊に強烈な突き上げアッパーカットを炸裂!!うそーん!!そして一言「おまえはもう死んでいる」マジか!!喰らったヤロウも仰天して「ほ、ほんとか!!」「3秒後だ。」カウントダウンを開始するバット。ゼロと共に絶叫を挙げるアミバ親衛隊。・・・しかし何も起こらず、バットと言えば「あ〜たたたたたたたた」という叫び声と共に遙か彼方へと走り去っていた・・・。ただの爆笑シーンで済ませてはいけない。あのバットが、秘孔を突かれて身体能力の上がったアミバの部下にパンチを当てているのだ!これはえらいことである。一体バットの身に何が起こったのか!?おそらくこれは愛の力だ。この先の城にリンが捕らえられているという事実を知ったバットは、そのリンへの愛で信じられない力を生み出したのである。よく考えてみれば、あの修羅の国でリンを連れたヒョウを助けたとき、バットは一騎当千の修羅に大きな風穴を空けている。あれは銃だとか国王の北斗剛鼻波だと言われてきたが、あれこそがバットの燃え上がる愛の力だったのだ。北斗の拳キャラの中で最強の愛戦士はバットだったのである。
・やはり天才
殴られたという理由でトキに酷い恨みを抱いたアミバ。アミバは今まで己を殴ってきた奴等にもそんな恨みを抱いてきたのだろうか?いや、とてもそんな素振りはない。あったとしても、もう既にその恨みは晴らしてきているのだろう。そう、殺してきたのだ。つまりアミバは、己に拳を浴びせた者はすべて殺しているのである。アミバは事実上無敗だったのだ。更にあれほど軽く殴られてあれほどの怒りということは、その殴られた数すらもほとんど皆無と言っていいのだろう。南斗聖拳の修行中も含めてアミバはほとんど殴られていないって事だ。すげぇ。やはり天才。
・賛否両論
アミバファンにとって一番残念なのは、「うわらば」を言ってくれなかったことだろう。最近ではパンマニやPS北斗で念願が叶ったとはいえ、当時のアミバファンは哀しんだ筈だ。しかし拳王様ファンである私は、逆に嬉しかった。というかアミバを見直した。あの男が死の直面に立たされてまさか拳王様の名を出すなんて思わなかったからだ。そんなに忠義心の熱い男だとは知らなかった。


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