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[第111話]
あいつはいつ目覚めるのか‥‥!?

 ハルに命を救われた髭面の旅人は、ハルの働くバーで身を休めていた。ハルに絡んできた酔っ払いに対して凄んで見せたりはするものの、もはややりあうだけの体力もないのか、男はすぐにまた横になってしまった。興醒めしたその客が帰ると、ハルは助けてくれたお礼だと言って旅人にサツマイモをプレゼント。しかしそれは、ハルが店で働いて稼いだ己の昼飯であった。自らの空腹をおしてまで見ず知らずの旅人に食料を与えたそのハルの優しさに、旅人は心底感謝するのだった。

 その時、右頬に傷のある男が、帝都兵をひき連れてバーの中へと入ってきた。男は店内を見回すと、帽子を被ったひとりの男に目をつけ、言葉もなくその男の前へと着席。そのまま取り出した手配書を一枚一枚めくり始めた。男の名はゲルド。新たにこの街の司刑官として配属されてきた男であった。手配書をめくるゲルドの手が止まる。目の前に座る男が、手配書に記されている10000ジュドルの賞金首、ヘルゲと一致したのである。彼は、天帝に反逆したレジスタンス・赤龍党の残党として手配されていた男だったのだ。もはや隠し通すことは出来ないとふんだヘルゲは、テーブルに飾ってあった花瓶を持ち上げ、ゲルドの頭を殴打。しかし強靭なゲルドの頭には傷一つ負わせることは出来ず、逆にパンチ一発でのされ、ゲルドの配下によって捕まえられてしまうのだった。

 バーを出ようとしたゲルドは、店の隅で横たわる、例の旅人の姿に気づいた。そのフードの奥に見える薄汚い旅人の顔が、ゲルドの知る「ある男」の顔と重なったのである。ゲルドは自らの疑問を解決せんと、突如その旅人の背に強烈な蹴りを放った。旅人がゲルドの知るその男ならば、やられっぱなしで黙っているわけがなかったからだ。しかし報復して来るどころか何の反応も示さないその旅人を見たゲルドは、違和感が勘違いであったことを確信し、高笑いを挙げてバーを後にしたのだった。

 ゲルドは元天帝軍特殊部隊の隊長にまで登り詰めた男で、その中でも最も残忍な性格を持つと言われた男であった。しかし赤龍党に激しい恨みを持つ彼は、その役職を捨ててまでわざわざこの村の司刑官となり、天帝に反逆する者を抹殺するためにやって来たのだ。客のその話を耳にしたハルは、店の仕事を途中で切り上げ、自分の家へと走り帰ってしまった。

 家に帰ったハルは、早速父親のムハリに事のあらましを伝えた。ムハリはレジスタンス部隊・赤龍党の参謀として活躍した男であった。そして、あのゲルドの右頬に傷を付けた張本人でもあったのだ。天帝軍との最後の決戦でつけたその傷を恨むゲルドは、己を殺すためにこの村へとやって来たのだ、と語るムハリ。とその時、ムハリは突如咳き込み、吐血した。ムハリの体はもはや病によって長く生きることが出来なくなっていたのだ。自らの息子に迷惑ばかりかけてていることを気遣うムハリであったが、村の者達は皆ムハリを自分達のために戦ってくれた英雄として見ていた。ハルにとってムハリはかけがえのない自慢の父親だったのだ。2人は日が暮れたら村を出ようと約束。ハルは早速足となる車を探しに出掛けたが、もはやムハリの体は長旅に耐えられる状態ではなかった・・・

 例のバーでの話題は、北斗の軍の話へと変わっていった。バットとリンという若いリーダーを筆頭に組まれた精鋭部隊・北斗の軍は、天帝部隊を相手に勇敢に戦いを挑んでいるのだという。その話は側で寝ていた旅人の耳にも届いていた。

 赤龍党の残党が集まるという家を発見したゲルドの部隊は、ダイナマイトを投げ入れ、奇襲攻撃を開始した。小屋から逃げ出してきた者達も残さず捕らえ、次々と惨殺していくゲルド。しかし、ゲルドの怒りはムハリを殺すまでは収まる事はなかった。その当のムハリは、騒ぎを聞きつけて現場の直ぐ側までやって来ていた。同胞達が次々と殺されていく様を目撃したムハリは、意を決してゲルドの前へその姿を現した。病に蝕まれたムハリの体ではゲルドに勝てる見込みは少なかった。しかし、戦いの中を生きてきた己の死に場所もまた戦いの中なのだと、ムハリは決めていたのだった。

 車を手に入れて家に戻ってきたハルであったが、そこに父の姿はなかった。父ムハリは今まさに宿命の戦いの最中にいた。ゲルドの振り回す長大刀の前に防戦一方のムハリ。自分が勝つチャンスは一瞬、そう思ったムハリは、遂に意を決してゲルドへと突進。ゲルドの振り回した大刀を跳躍でかわし、その剣を突き立てんと飛びかかる。しかしすぐにゲルドは大刀の矛先を切り返し、空中で無防備になったムハリの体に強烈な斬撃を喰らわせた。現場へと駆けつけたハルが目にしたのは、鮮血を吹きながら落下する父の姿であった。

 勇気を忘れず、強い男になれ。北斗神拳の伝承者、ケンシロウさんのように。そう言い残し息絶えたムハリの亡骸の前で、涙に暮れるハル。そこに現れたのは、あの旅人であった。ムハリがやられたとの報はすぐに村中へと広がり、バーにいた彼の耳にも入っていたのだ。父は勇敢で、自分の誇りだった。そういって旅人に告げたハルの目には、ある決意が宿っていた。

 悪に立ち向かったムハリの勇気ある死は、元赤龍党の男達を立ち上がらせた。ゲルド達を倒すための決起集会が行われる中、ハルもその体にダイナマイトを巻き付けていた。父の勇敢な生き様を、ハルは自らの死を持って継ごうとしようとしていたのであった。

 宿敵ムハリを倒し、勝利の美酒に酔いしれるゲルド。しかしその宴は、赤龍党の残党が屋敷に火を放ったとの報によって打ち切られた。奇襲成功させ、次々と館の中へと突撃する赤龍党達。だが実戦から離れていた彼らでは、聖帝軍と戦うには力不足であった。人数で優っているにもかかわらず、切り倒されてゆく赤龍党。進退窮まった彼等に止めを刺そうと帝都兵が飛びかかったその時、何者かが彼の剣を止めた。それは、あの髭面の旅人であった。旅人はゆっくりとその兵から手を離すが、兵の体はまるで魔法でも駆けられた化のようにピクリとも動かない。正体の見えぬ目の前の男に不気味なものを感じながらも、帝都兵達は一斉に男に向かって襲撃。しかし男が蹴りを一発放っただけで、彼等の頭はまるで風船のように破裂していった。その拳は正しくあの北斗神拳であった。

 ゲルドの元へとやって来たハルは、父の仇・ゲルドと共にダイナマイトで自爆しようとする。まだ若いお前が死ぬことはないと仲間に制止されるハルであったが、父を失ったハルにもはや未練などなかった。火を付ける前に貴様の手を切り落とす、とゲルドが脅しても、父の勇気を背負うハルに怯えはない。その瞳にムハリと同じ苛立ちを感じたゲルドは、ハルを一刀のもとに斬り捨てようと大刀を振りかざす。だがその時、どこからともなく飛んできたマントがゲルドの顔を覆った。それは、あの旅人が今までその体に纏っていたものであった。突如現れた謎の男に飛びかかって行く帝都兵達。しかしその攻撃が男に到達する前に彼等の頭は次々と弾けていく。そして、男が破り裂いた服の下からは、鮮やかな七つの傷が描かれた胸が現れた。北斗神拳、そして七つの傷。ゲルドの目の前に立っていたその男はまさしく、手配書の最後のページに記されてる伝説の男、ケンシロウであった。

 報奨金は無限。ケンシロウにかけられたその賞金に目をくらませ、ケンへと斬りかかるゲルド。しかし得意の大刀はあっさりと破壊され、持ち替えた刀を振り回しても全く当たらない。何度も背後をとられ、ケンの怒りの拳を喰らったゲルドその肉体を崩壊させ死亡したのだった。今際の際にゲルドがケンに告げたのは、自らの背後にある天帝という存在であった。ムハリの教えを忘れずに生きよ。勇気を持つという事の真の意味を、ケンはハルに身をもって教えたのであった。そしてケンシロウが向かう新たな場所とは・・・

 郡都Gの付近の村の司刑隊が全滅。それはまさしくケンが崩壊させた、ゲルドの部隊の事であった。しかし、その報を聞いてもジャコウはいささかの関心も示さなかった。巨大権力を手に入れたジャコウにとって、もはや小さな事件など些細な事に過ぎなかったのだ。己を照らす照明を更に増やすよう指示し、ジャコウは己の地位に酔い続けるのであった。
放映日:87年3月19日


[漫画版との違い]
・アニメオリジナルストーリー


・珍しいアニオリ
北斗の拳2では珍しい完全オリジナルの回。
今回は第一話で死にかけだったケンの華麗なる復活を描いた回なのだが、個人的には(バレバレではあるけど)あのボロっちいマントを纏ったままで、正体を曖昧にしたまま終わらせたほうがよかった気がする。それだけでも十分復活は印象付けれるし、今回で正体明かしての復活となると、原作のあの黒王に乗って観衆の前に現れるカッコイイ復活劇のインパクトが薄れてしまう気がするんですよな。
でも酒場で、リンとバットの活躍を耳にしてやる気出した、みたいなエピソードはいいねぇ。
・ぐだぐだ

ゲルド様に締め上げられる元赤龍党の人。
ピンチです
ムハリの手配書を突きつけて居場所を問うゲルド様。
あれれ、なんか目の前の人と似てますね。ちゃんとキャラをかきわけたほうがいいんじゃないですか?
と思った矢先、いきなり男の毛の色と服の色が微妙に変わりました。
何が起こった!?
男はゲルド様に突き飛ばされて、壁に衝突。
・・・ってヒゲがなくなったYO!!髪色と服は戻ったけど!もうわけわからねー!
・ぐだぐだ場面を考える
なんでヒゲがなくなったのか。それは、彼がつけヒゲだったからなのではないだろうか。何故つけひげを!?もしや、彼はムハリの影武者だったのでは?でもゲルドや司刑隊には躊躇なく見破られてたなぁ・・・。そういえば、ダイナマイトで炙り出された赤龍党の残党達の中には、彼のほかにもムハリによくにたヒゲモジャが結構いた。このもっさりヒゲは、謎に包まれた赤龍党のリーダーの容姿を真似たものなのかも。つけひげも、リーダーの憧れたゆえのものなのかもしれない。いやまてよ、今回は司刑隊の中にも、そしてケンまでもがヒゲだった。なんだ。単なるヒゲマニアが作画しただけか。


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