TOP


[第119話]
帝都にこだます天帝の泣き声!
ファルコはいずこに‥‥


 ジャコウは、夢の中で北斗の幻影に脅かされていた。かつて命を奪われかけた、恐怖の暴凶星ラオウ。そしてそのラオウよりも大きな謎の影。目覚めたときはその正体を理解できなかったジャコウであったが、それはもはや現実のものとなってジャコウの直ぐ側にまで近づいていた。息咳かけて部屋へと飛び込んできた兵達が伝えたのは、ケンシロウが中央帝都へと現れたとの報であった。ラオウをも倒した伝説の男、ケンシロウ。先程の大きな影がケンシロウであることを確信したジャコウは、総力を挙げてその男を抹殺するよう命令を飛ばす・・・

 中央帝都へと続く第一の門。そこを守る守備隊を難なく蹴散らしたケンであったが、その時、足下に何者かの投げた槍が突き刺さった。青の将軍ボルツ。ショウキの敵でもあるその元斗の戦士が、ケンの行く手を阻む最初の刺客であった。見張り塔から飛び降りたボルツは、闘気で槍を作り出す元斗青槍飛拳にて先制攻撃。難なくかわされたものの、今度は間髪入れずに無数の闘気の刃を飛ばす元斗百閃槍光で追い打ちをかける。乱れ飛ぶ蒼い刃をガードして固まったケンに対し、闘気の槍を突き刺そうとするボルツ。しかしケンは、その炎の如き熱を持つ剣を片手で受け止めてしまった。残るもう一方の手で放たれた連撃が、ボルツの肉体を殴打する。門へと吹き飛ばされたボルツは、自らの破裂の衝撃で、第一の門を開門させてしまうのであった。

 圧倒的な強さで進軍するケンの姿を、中央帝都の中から見下ろすファルコ。その背後にはミュウの姿があった。ファルコは天帝の居場所を聞き出すためのスパイとして、ミュウをジャコウの側近として送り込んでいたのだ。しかし思いの外硬いジャコウの口からは、未だ何の情報も得ることは出来ていなかった。全ては己の責任・・・。自らの甘さ故に悲劇を招いた事を知るファルコは、ラオウのあの時の言葉を思い出していた。

 ジャコウを直ぐに殺せ。さもなくばファルコにとって最大の災いとなろう。ラオウはそう忠告し、元斗の村を去っていった。心を決め、ジャコウを滅殺しようと歩をつめるファルコ。しかしその時、追いつめられたジャコウは、その模様を見つめていたファルコの母を指差した。ファルコの母は、ジャコウの育ての親でもあった。ファルコの甘さを知るジャコウは、その母親の前でファルコが自分を殺せる筈がないと考えたのだ。一度は意を決して拳を振り上げたファルコであったが、彼にはそれを振り下ろすだけの非情の心がなかった。こうして生きながらえたジャコウは、己の身を守るため、母が死んだと同時に天帝を拐かし、幽閉したのであった・・・

 ジャコウが天帝の名の下に築いたこの城の何処かに天帝は幽閉されている。自らが招いた混乱、その始末を己の手でつけんため、ファルコは遂に動くことを決意した。たとえ、己の代で元斗皇拳2000年の歴史が途切れることになろうとも・・・

 高圧の電流が走る第二の門も、ケンシロウをとめることは出来なかった。何事もなかったかのように柵を力でこじ開け、更に内部へと侵攻するケン。その報告を受けたジャコウは、悪夢が現実のものとなろうとしていることを知るのだった。とその時、部屋の明かりが一斉にシャットダウン。闇の中に浮かび上がる北斗七星の幻影は、ジャコウを乱心させてしまう。刃を抜いたジャコウは、己の部下達を次々と切り裂き始めた。

 光が落ちたと同時に、ファルコはジャコウの下へと駆けていた。天空の闇に光るは北斗、闇はを北斗を思い出し、闇がジャコウを脅えさせる。そして狂った果てに、ジャコウが恐怖のあまりに天帝を殺すであろうことを、ファルコは予測していたのだ。ファルコが駆けつけたとき、ジャコウは緑光の将軍、タイガの足に刃を突き立てていた。静まるよう説得するファルコに、ジャコウは直ちにケンシロウを倒すよう命令を下す。北斗と元斗、天帝を守るべき2つの星による戦いは、もはや避けることができない状況となっていた。

 数に任せて襲いかかるものの、ケンが振り回すヌンチャクの前に次々と吹き飛んでいく守衛兵達。恐れ慄き逃げ出した彼等の後を継いで現れたのは、金色の鎧を纏った兵達であった。彼等はファルコ直轄の兵であった。ファルコのためにいつ死んでも良いと考えている彼等は、今までの兵とは信条が違っていた。ケンの攻撃を喰らっても、しぶとくケンの足を掴み、先へ進ませまいとするファルコ兵達。その彼等のファルコを信ずる思いは、ついにケンの歩を止めた。主門の前に佇み、中央帝都を見上げるケンの瞳は、ファルコの到来を誘っていた。

 自らを呼ぶケンの眼に意を決したファルコは、己の部下のサイヤを呼び寄せた。ファルコがサイヤへと託したもの、それは中央帝都の中心部に仕掛けられた爆弾の起爆装置であった。自分が負ければ、ジャコウは北斗を恐れるあまり、すべてを天帝の責任にして逃亡する。そうなるくらいなら、天帝、ジャコウをも巻き込んですべてを破壊してしまった方がいいとファルコは考えたのである。しかし、ただひとつファルコには心残りがあった。心あらずもジャコウに仕え、天帝の居場所を探ってくれた恋人ミュウ。彼女をもその爆発に巻き込んでしまうであろうことを、ファルコは憂いていたのである。だがその悩みに始末をつけたのは、他ならぬミュウ本人であった。2人の会話を聞いていたミュウは、自らに爆破装置のボタンを押させてほしいと進言してきたのである。愛するファルコの死は、自らの死。一人残されるくらいなら死を選ぶ、そのミュウの言葉により、ファルコの迷いは全て消え去った。纏っていた天帝のマントを脱ぎ捨てたファルコは、かわりに元斗の紋章の刻まれたマントをその身へ巻きつけた。それは、帝都の将軍としてではなく、元斗皇拳二千年の歴史を背負う伝承者として戦うという意思の表れであった。天帝の生死、元斗の歴史、そして己自信の愛を賭け、ファルコは宿命の闘いへと向かう・・・

 ケンシロウとファルコ。帝都へと続く主門がゆっくりと開かれたとき、遂に両名が顔を合わせた。部下達から信任厚きそのファルコが悪党ではないことを知るケンは、戦わずしてこの場を引くよう打診する。しかし、天帝の命、そして元斗の歴史をも背負ったファルコには退路などなかった。開戦を告げるかのように放たれた金色の闘気が、ヌンチャクを破壊し、ケンの左肩をかすめる。対してケンの放った闘気もまた、元斗のマントを破り裂き、ファルコの左肩に血を誘った。ファルコに一片の気の迷いもないことを悟ったケンは、全力で己の拳を振ることを誓う。そしてファルコもまた、死を賭けて闘うことを近い、闘気を爆発させた。本来なら歩を揃え、天帝のために同じ道を進む北斗と元斗。その二人の凄まじき拳の衝突は天をも割った。と、その瞬間、リンの中にある声が走り抜けた。それは、姿すら知らぬ天帝が、涙と共に己を呼ぶ声であった。
放映日:87年6月4日


[漫画版との違い]
・ケンシロウvsボルツが追加
・シーノがやられて第一の門が破られたという報告が、第一の門の守備隊と交戦中というものに変更
・原作でミュウに天帝の居場所が特定できたか尋ねるのは第二の門のやり取りの後だが、アニメでは第一の門の後。
・原作でファルコの母の涙のエピソードが語られるのはサイヤを呼んだ後だが、アニメではこの時のミュウとの会話の中。
・第二の門の時、リーダー格の兵が塀越しに棒で殴られるシーン削除
・原作で帝都の光がおちるのは、総督直轄軍が敗れた報の時ときだが、アニメでは第2の門の守備隊がやられたと言う報の後。また、総督直轄軍はアニメでは登場せず。
・原作では第二の門を通過してすぐにヌンチャクを使い始めたが、アニメでは最後の門の前にきてからに変更。
・ケンの足を掴むのが、ヌンチャクでこかされた兵から、普通にヌンチャクでぶっとばされた兵に変更。
・サイヤの容姿が原作に比べて青年っぽく変更。
・元斗のマントをとめるためのマント留めを、ミュウから受け取るシーンが追加
・原作でリンが天帝の声を聞くのは戦いが始まって暫く経ってからだが、アニメでは始まってすぐ。



・やりたい放題
ボルツまずこの青光将軍ボルツがお相手しよう!」
まずって・・・負ける気まんまんじゃないっすか・・・
んで、闘気で槍をこしらえるのはいいとしても、それをケンさん
手づかみしちゃってるよ
おそらく北斗キャラ数居れど、
闘気を固形物に出来るのは彼くらいのもんではないか。
そして断末魔、
「あっ あっ あおーっ!」って。青光だからって、ベタベタやな。
んでもって、
その爆発でおそらく鉄製と思われる門が破壊。
どうもアニメ北斗では、北斗神拳による爆死は軽いダイナマイト並みの威力があるらしい。
秘孔による器官操作で体内にガスを蓄積させ、それを爆発させているのだろうか。
元斗皇拳の使い手の中では一番出番の少ないボルツさんですが、わずか2分くらいの戦闘でやりきった感がありますな・・・
・ファルコおかん
あの祈りは、助けてやってくれって意味じゃなくて、死に行くジャコウへの「ナンマンダブ」だったんじゃなかろうか。
・顔
ファルコ 「ミュウ。まだ天帝が捕らわれている場所はわからぬか」
ミュウ 「はい。ジャコウの口は思いのほか重く・・・」


ファルコ 「・・・・・」





なんでそんな顔やねん。


第118話へ≪ ≫第120話へ