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[第120話]
ついに天帝の正体が見えた!!

 リンを呼ぶ天帝の声。その正体を確かめるため、バットとリンは中央帝都へ乗り込むことを決めた。そしてアインもまた、大きな手柄を立ててくることを愛娘に約束し、2人の後に続く。

 北斗と元斗。死力を尽くした二人の男の戦いが始まった。ファルコの元斗白華弾を紙一重で交わしたケンは、そのままファルコへと連撃を放ち、ファルコもまたそれに激しく拳を交錯させる・・・

 空を見あげるリハクは、2つに割れた天が何を示しているのかを悟った。それぞれが天を持っている・・・。その言葉の真意に、バット達は徐々に近づきつつあった。帝都兵をなぎ倒しながら城内を進む一向。次第に強くなっていく天帝の声を辿り、バット達は下層へと歩を進める・・・

 その頃、ジャコウの部屋には、帝都兵に殴打されるミュウとサイヤの姿があった。ファルコと2人のやりとりを全て密偵により伝えられたジャコウは、彼等の裏切り行為を知ったのである。転がり落ちた起爆装置を見て怒り狂ったジャコウは、2人を殴り殺すよう指示。命じられた帝都兵は、ミュウ、そして彼女をかばうサイヤに次々と棒を叩きつける。だが、突如彼の持っていた武器が手の中から消えた。いつの間にか彼の背後に迫っていたバットが一瞬のうちに武器を奪ったのである。突然現れた侵入者に驚くジャコウであったが、彼が一番驚いたのは、奧に隠れていたリンの姿をを捕らえた瞬間であった。

 飛びかかってきた兵を、バットはアッサリと一蹴。兵が全て外に出払い警備が手薄になっていたため、早くも残るはジャコウ一人となった。追い詰められ、アインに鼻を潰されたジャコウは、最後の抵抗といわんばかりに椅子に仕掛けられた催涙スプレーを吹きつける。視界を奪われたバット達は、それでもなんとかジャコウの姿を捉えようと宙に手を漂わせる。だが、その腕を止めたのはミュウであった。天帝の命はジャコウが握っている。故にジャコウに逆らう事ができず、今こうしてケンシロウと命を懸けた闘いを繰り広げているファルコのためにも、ミュウはジャコウを今殺させるわけにはいかなかったのである。それならば無理矢理吐かせればいい。そういって2人は再びジャコウに接近するが、突如強烈な闘気の弾が2人の体を吹っ飛ばした。緑光の将軍タイガが、現場へと駆けつけたのである。タイガの元斗緑光飛弾をかわしたアインは、空中からの攻撃を試みる。しかし宙で無防備になったアインの体は、緑光飛弾の恰好の的であった。まともに闘気を喰らい、苦しむアインのもとに、リンとバットが駆け寄る。そしてサイヤもまた、衝撃で吹っ飛ばされたミュウのもとへ。5人が一箇所へ固まったそのチャンスをジャコウは見逃さなかった。部屋の装飾品に隠されたボタンをジャコウが押した瞬間、5人は開いた床へと飲み込まれ、地下へと落下してしまったのであった。

 死闘を続けるケンとファルコ。天は二つ、貴様等の中にも天帝はいる。ファルコのその言葉の意味をケンはまだ理解することは出来なかった。しかし、バット達は遂にその真実へと辿りついてた。地下の採掘場へと落とされた5人が、薄暗いその中で出会った人物、それはリンと瓜二つの顔をした女であった。彼女の名はルイ。彼女こそが、リンを呼び続けていた天帝その人であった。

 天を割り、今日の乱れを呼んだのは若き日の自分。ケンとの死闘の最中、ファルコはその引き金となった日の事とを思い出していた。

 毛布にくるまれて眠る2人の赤子。その子等は、先代の天帝が産み落とした双子であった。掟に従えばいい。そう言って片方の赤子を抱え上げたジャコウは、ファルコにその子を殺すよう命じた。2つの星を残せばやがて天は二つに割れる。二つ星は天にとって災いをもたらす。天帝が双子であった場合、その片方を殺すのも元斗皇拳伝承者としての非情なる使命であったのだ。掟を破ることは天帝に逆らうこと、非情なるジャコウの言葉が、ファルコに重くのしかかっていた。

 全ては掟の為、そう自分に言い聞かせたファルコは、ゆっくりと闘気の刃を赤子へと近づける。だが赤子が目を覚ました瞬間、目前まで迫っていたファルコの手から闘気が消えてしまった。目前に迫っていた危機など知る由も泣く、ファルコの小指をつかみ、無邪気にそれを吸い始める赤子。やはり自分は人間の心を捨てることは出来ない。そう思ったファルコは、リンの出生の秘密を隠し、信頼のおける知人にリンを預けたのだった。


 成長したリンを見た時、ファルコは驚愕した。そして、天帝の子が北斗と結びついていたという皮肉な現実に、運命を感じずにはいられなかった。哀しき二つ星の運命に終止符を打たんがため、自分の行為が生んだ悲劇をすべてその背に背負い、ファルコはケンとの闘いに臨む・・・

 元斗皇拳奥義衝の輪にてダウンを奪ったファルコは、続けざまに宙からケンに蹴りかかる。寸前で起きあがったケンはそれを拳で迎撃しようとするが、元斗皇拳の奥義・天衝舞は、ファルコの巨体をその拳の上に降り立たせてしまった。そのままファルコが放った闘気によってケンは再びダウン。しかし、その鬼神の強さを見せるファルコに対し、ケンは秘孔上血海にて自らの右足の自由を奪ってしまった。義足ではわずかに間合いに踏み込めない。ならば自らもそれに合わせて闘う。それが北斗神拳伝承者の闘い方であった。

 妹リンを探すルイの手は、まるで見当違いに宙を彷徨っていた。光も射し込まぬこの作業場に閉じこめられていたルイは、その視力を無くしてしまっていたのだ。ルイの傷だらけの手を、涙を流し、リンが握りしめる。かたや天帝としてその身を幽閉された姉と、外界に出され、闘いの中を生きてきた妹。悲運の姉妹は、遂に奇跡の再会を果たしたのであった。
放映日:87年6月11日


[漫画版との違い]
・原作では階段のところで、リン&バットは天帝の声のする下階へ、アインはジャコウのいる上階へと向かうが、アニメでは共にジャコウの部屋へに変更。ただし進んだのは、下階。
・ミュウたちをいたぶるのがジャスクから、帝都兵に。それをぶっとばすのが、アインからバットに変更。
・襲い掛かろうとするアイン(+バット)に、ジャコウが椅子に仕掛けられた目潰しの霧を吹きかけるシーン追加
・バット&アイン vs タイガが追加
・罠で落とされるのが、ミュウがアインの拳を止めた時から、タイガとの戦闘中に変更。
・原作では最下層の倉庫からバットとリンは穴へと落ちるが、アニメではアイン達とともにジャコウに落とされる。
・衝の輪〜上血海の流れは、原作では戦いが始まって直ぐだが、アニメではファルコが天帝についての質問を打ち切った後。



・監禁期間
ルイは一体どのくらい幽閉されていたのだろう。キーとなるのは、ジャコウがいまの帝都を築き上げるまでにかかった期間だろう。あれだけの人員、建築物、貨幣制度の確立を考えても、1年や2年ということはないはず。普通に考えても5年は欲しいところだ。その間ルイはずっとあんな場所にいたということなのか・・・・。普通の人間なら発狂して死ぬんじゃないか。それでもしっかり気丈に生き続けたいた辺りが、天帝の血の成せる技なのか?
・どの拳?
原作じゃ上血海突いたあとの胸への一撃を受けて「すさまじき拳だ」とのファルコのお褒めの言葉を頂くのだが、アニメじゃこの回の冒頭でそれを言うわけですね。でも前回の終わり際にその一撃を貰っているわけではない。じゃあその一撃はどこにいったのかというと、今回のラストあたりに回されている。つまりその一撃を貰ってないのに「すさまじき拳だ」とファルコは言っちゃってるんですな。なんというタイムパラドックス・・・


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