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トキ伝
ストーリー 登場人物 流派・奥義 STAFF



ストーリー


序章


 トキとラオウの約束の地―――。幼き頃、北斗神拳への道を歩み始めたその場所に、二人は訪れていた。かつて交わした「約束」を果たすために・・・

 1800年の長きに渡り受け継がれてきた暗殺拳、北斗神拳。先代伝承者リュウケンは、その一子相伝の拳を伝承すべく、養子達を迎えた。だが、時代は同時に三人の天才を世に送り出した。そして宿命は、その天才の一人に、哀しくも過酷な試練を与えた。その男の名は、トキと言った―――。





天才の悲劇


 華麗な舞の如きトキの演武。舞い落ちる葉全てに正確に穴を穿つそのトキの拳は、まるで氷の刃のようであった。しかし、ラオウはそれを鼻で笑い、言った。その拳ではおれの肉体は貫くことは出来ない。北斗神拳に美しさは必要ない、と。トキとラオウ。伝承者はこの二人のどちらかに間違いないと、ケンは思っていた。そして、ラオウを伝承者にしてはいけないという事も・・・。

 医者のサラがリュウケンに告げたのは、余りにも哀しき報せであった。トキの命はあと数年―――。彼の身体は、既に大病に犯されているというのである。トキ自身も、その事を知っていた。だが、トキはそれを皆に語ろうとはしなかった。トキが伝承者から身を引けば、ケンもまた辞退し、伝承者はラオウとなる。それが、北斗神拳の宿命を歪めるであろう事を、トキは理解していたのだった。

 リュウケンに己の道を問われたトキは、答えた。激化する戦争の果てに待つのは、核による世界の崩壊。有史以前の状態に戻った乱世を治めるのが、北斗神拳伝承者の宿命・・・。時代が新たな伝承者を求めるのであれば、私はその伝承者を見守っていきたい、と。病さえなければ、間違いなく伝承者となっていたであろう男、トキ。その哀しき天才のの言葉に、リュウケンは涙を流すのであった。


 そして世界は炎に包まれた―――。
 トキとケンシロウ、ユリアの三人は、死の灰から逃れるため、シェルターへと辿り着いていた。しかし、トキは二人を中に押し込み、自らは外に残る事を選んだ。全てをケンシロウに託す―――。自らを犠牲し、トキはケンにその想いを伝えたのであった。






意志を継ぐ者


 伝承者がケンシロウに決まった日・・・。トキは、旅立ちの意志を固めていた。病に倒れた人々のため、北斗神拳を医術として役立てだい。それがトキの望んだ、自らの生きる道であった。
 心に秘めた愛。その花言葉をもつマーガレットを、ユリアへと渡し、トキは一人北斗の寺院を後にする。だがその行く手でトキを待ち伏せていたのは、サラであった。彼女は言った。医者として、病のトキを一人にするわけにはいかない。そしてなにより、このトキの旅には意志を継ぐ者が必要なはずだ、と。旅が辛く苦しいものになる事は判っていた。しかし、それでもサラは、トキについていく道を選んだのだった。


 トキとサラの旅は続いた。雨の日も、雪の日も、二人は旅を続け、人々を癒し続けた。やがて二人は、後に「トキの村」と呼ばれる村へと辿り着いた―――。
 その頃、ケンシロウは暴力の荒野をさすらい、弱き者達のために血を流していた。そしていつしか人々は、彼のことを救世主と呼び始めていた。
 一方、ラオウは自らを拳王と名乗り、地上の覇者たらんとその猛威を振るい続けていた。だが、そんなラオウにも恐れる存在があった。味方であれば百万の援軍となり、敵ならばいつ忍び寄るかも知れぬ死神にも等しい存在、それがトキであった。トキを恐れたラオウは、村人達の命と引き換えにトキを捕らえ、カサンドラへと幽閉したのだった・・・






刹活孔


 月日は流れ―――。
 不落の街カサンドラは、ケンシロウの手によって陥落した。長きに渡り幽閉されていたトキであったが、その力は衰えてはいなかった。剣を振り上げた拳王の手下達は、トキの北斗有情拳により、快楽の中で死んでいったのだった。
 カサンドラ陥落の報は、すぐにラオウにも入れられた。トキとケンシロウが手を組めば、聖帝以上に厄介な敵となる。その事を知りつつも、ラオウはトキを殺さず、幽閉という方法を選んだ。それは、二人に交わされたある「約束」を果たすためであった。


 ケンとサウザーの戦いを見届けた後・・・トキは、自らの村へと帰ってきていた。だがそれは、サラに別れを告げるためであった。兄弟が交わした「約束」。トキとラオウの闘いは、避けることのできない二人の宿命なのであった。私の魂はケンシロウと、お前の中にある。憧れであったトキのその言葉に、サラは涙をとめることは出来なかった。ラオウと渡り合うための唯一の秘孔、刹活孔。凄まじい激痛の果てに、今トキは最期の力を得ようとしていた。






死闘


 様々な苦難の経て実現した、ラオウとの最期の闘い。動と静、烈と粛。互いの拳はまるで正反対であったが、トキの拳は決してラオウに後れを取っていなかった。トキの拳を高めたもの・・・それはラオウの存在に他ならなかった。

 幼き頃・・・愛犬を殺されたトキは、その幼き身体で、仇の大男を圧倒した。トキは日頃から道場を覗き、密かに拳法を身に付けていたのである。お前も北斗神拳を身に付けたいのか。そのリュウケンの問いに、トキは黙って頷いた。それがラオウと伝承者を争う道であろうとも。全ては、兄ラオウを超えたいがために・・・

 氷の刃と評された連撃も、背後を取っての攻撃も、ラオウの前には通用しなかった。無意識無想のラオウの拳の前では、トキの柔の拳は意味を成さなかったのである。勝利を確信し、渾身の一撃を振り下ろすラオウ。だがトキは、その拳を力で受け止めた。それはまさに、ラオウと同じ剛の拳であった。最後の戦いまで封印されていたというそのトキの剛拳は、ラオウの頭上に死兆星を呼んだのであった。

 北斗神拳奥義、闘勁呼法。圧縮された闘気が、二人の拳に込められる。大地が震える激闘の中、宙へ逃げたラオウの隙を、トキは見逃さなかった。華麗に舞うトキの天翔百裂拳が、ラオウの身体に突き刺さる。崩れ落ちたその身体に、更に止めの一撃が放たれ、勝負は決した―――かに思えた。だが、トキの拳は効いてはいなかった。もはやトキの拳には、ラオウを倒せるだけの闘気は残されていなかったのである。二人の宿命の幕を閉じたのは、トキの拳ではなく、ラオウの剛拳であった。






約束


 ラオウはトキの剛拳の秘密を見抜いていた。一瞬の剛力を得ることのできる秘孔、刹活孔・・・。命を代償とするその秘孔なくしては闘えないほどに、もはやトキの身体は病に蝕まれていたのだった。あまりにも哀しきその弟の宿命は、ラオウの涙を伝わせた。幼き日、捨て去った筈の涙を・・・。
 これが貴様が目指した兄ラオウの拳だ!勝負を決するラオウの最期の一撃が振り下ろされる。だがその拳が貫いたのは、トキではなかった。大地を貫いたその拳は、トキを殺した哀しき宿命への恨みの一撃であった。幼き日に咎めたトキの涙を、最早ラオウに止めることなど出来なかった。いずれ訪れるケンシロウとの戦いの時を予言し、ラオウは再び覇道へと戻っていったのだった。

 かつてラオウはトキに言った。もし俺が道を誤ったときは、お前の拳で俺の拳を封じてくれ、と。それが、二人の間に交わされた「約束」であった。果たせなかったその「約束」は、トキの涙と共に、ケンシロウへと託されたのであった。

 一陣の風が、サラの顔を撫でる。気配の先に立っていたのは、いつもと同じ、優しい笑顔を浮かべたトキであった。抑えきれぬ涙を零し、サラは帰ってきたトキの胸へと飛び込んでいた―――。





ストーリー要点抜粋&考察

【トキ】
・トキ、演舞での北斗百裂拳で、舞い落ちるイチョウの葉全てに正確に穴を穿つ
銀の聖者や、小説ケンシロウ外伝でのケンシロウも同様の技を披露
・トキは死の灰を浴びる前から既に重病に犯されており、余命数年となっていた。それがなければ、リュウケンも次期伝承者はトキを指名するはずだった。
このほうがシェルターの外に残った理由が自然に感じられるね。
・トキはケンシロウを伝承者争いから辞退させないため、自分だけシェルターの外に残り伝承者の宿命をケンシロウへと託すという意思表示をした。
結果的にケンにその意志は伝わったようだが、「ユリアを守ってやれ。任せたぞケンシロウ」だけでは伝わりきらなかった可能性もあるので、伝承者の事にも触れたほうが良かったような気がするよ。
・トキ、「心に秘めた愛」の花言葉を持つマーガレットをユリアへと渡す。
フラグっぽいエピソードだが、特にユリア伝等で触れられている様子は無い。
・ケンシロウが伝承者に決まった後、トキとサラは北斗寺院を発ち、人々を救う旅へ。
リュウケンが殺された後にかけつけたとかいう件は?
・トキ、人々を救いながら旅を続け、のちにトキの村と呼ばれる地へ。そこで拳王軍に捕らえられる。
トキが拳王軍に捕らえられた場所は原作では不明だが、本作ではトキの村というになっている。ちなみに銀の聖者や天の覇王では、奇跡の村で捕らえられたということになっている。本作では奇跡の村について描かれていないが、無かった事にされているのだろうか。
・トキ、秘孔刹活孔を突き、剛拳を得る。弱ったトキの身体では突いただけで死ぬ可能性もあった。
これじゃ刹活孔は戦闘中には使えないねえ。痛がってる間にやられそう。砂蜘蛛は待っていてくれたから良かったが。

【サラ】
・北斗寺院の女医サラ。トキが重病に犯されていることをリュウケンに報告する。
秘孔も使えない女の言うことを鵜呑みにするのか。信頼されてんねんなあ。
・サラ、トキと共に人々を救う旅へ。その中でトキに秘孔術を習う。
良い目的なんだから問題ないだろうが、そんな安易に北斗神拳を伝えていいのか?

【ケンシロウ】
・ケンは自分が伝承者に選ばれるとは全く思っておらず、もし師父が自分を指名したな断るつもりでいた。断る事が出来なければ、即座にトキを次の伝承者に指名するつもりだった。
そんだけ伝承者になるつもりないのに、なんで今まで修行してきたのか?
・師父リュウケンも、兄から伝承者を継いだ故に、兄弟間での伝承は可能であるらしい。
言わずもがな兄とは霞拳志郎の事ですね。

【ラオウ】
・拳王軍、トキの村に侵攻し、村人達を人質にトキを束縛。カサンドラへ幽閉
ラオウの姿が見えないが、来てなかったのだろうか?拳王軍の兵士だけで捕らえたというのならなかなかの大金星のような気がする。




原作からの追加&変更シーン

【核シェルター】

・トキ、ケン、ユリア以外の者達は、既に避難した後で、残るはこの三人だけ。
・残されたシェルターは、トキたちの向かっていた所のみ。
・原作の、あと何人しか入れないといったようなやりとりはカット。
・二週間後に扉を開けて再会するシーンはカット。


【カサンドラ】

・ウイグル戦〜カシム死亡まではカット
・レイやマミヤは登場せず。
・原作では一度掴んだ剣を離してから有情拳を使うが、本作では剣をつかんだまま。
・原作では「北斗有情破顔拳」まで言うが、本作では北斗有情拳のみ。


【ラオウvsトキ】

・原作ではトキに拳の連打を叩き込む前にラオウ泣くが、本作では刹活孔を露わにした後。
・ラオウがトキに泣くなと告げる回想シーンを除く、全ての過去エピソードがカット。
・二人の墓も登場せず。
・トキの約束(道を誤ったラオウの拳を封じる)を、ケンが継ぐ事を明言するシーンが追加。