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五車炎情拳
ごしゃえんじょうけん



流派: 五車星 炎の拳
使用: ・シュレン (対 ラオウの部下)
 …北斗の拳(112話)アニメ版(86、87話)
・シュレン (対 ラオウ)
 …激打2
・シュレン (対 ガルダ)
 …金翼のガルダ
登場: 北斗の拳/アニメ版/北斗の拳3/激打2/リバイブ/
モバイル真・北斗無双


 南斗五車星の一人、炎のシュレンの奥義。燐を用いて両掌に炎を発生させ、円を描くように敵を切り裂く。左右から同時に襲い掛かってきたラオウの部下2人をまとめて斬殺し、その亡骸を炎に包んだ。

 TVアニメ版ではその前に襲撃してきた拳王部隊相手にも使用している。

 『北斗の拳外伝 金翼のガルダ』では、ガルダを相手に使用。ヒューイとガルダを挟むように位置取り、シュレンはこの奥義を、ヒューイは五車風仁拳繰り出しながらガルダに突進した。しかし温度差による屈折を利用されて同士討ちを誘発され、技を出す前に潰された。

 『北斗の拳3(FC)』では、何故か山のフドウが使う事が出来た。




 ほかに名前出てきてないし、これがシュレンが使う拳法なんだろうな〜と長年思っていたのだが、イチゴ味外伝にて「炎燐拳」という拳法が登場してしまった。んまあ、炎情拳のほうは"五車"がついてるから、「シュレンが五車星入りした後に炎燐拳を改良して五車炎情拳を創始した」とも考えられるが・・・まあどっちでもいいや。

 この拳ウリはやっぱり炎だが、この炎の存在は五車炎情拳にどんな影響を及ぼしているのだろう。五車炎情拳を出した時、相手は切断されると同時に燃えている。ここで疑問なのは、相手を燃やす必要があったのかということ。正直いって切った時点で死んでるんだから、燃える事がさほど威力増につながっているとは思えない。燃えたから切れ味が増すということもないだろう。熱で焼き切っているという風にも見えない。
 では切断で相手を殺せなかった時・・・・傷を負わせる程度に終わった場合はどうか。これはかなり炎は効果的だ。なんせ傷口の中が燃えるのである。いくら鍛えた人間でも皮膚を一枚めくった先は鍛えようの無い弱点である。そこを直に燃やされるというのは醒鋭孔をも上回る激痛であろう。この特性こそが五車炎情拳の真の強みなのではないか。シュレンの場合、作中で戦った相手が自分より弱すぎた、または強すぎたために「傷を負わす」という場面がなく、故にその真価を発揮できなかったのである。

 もう一つ、この炎がもたらすのは、火を怖がるという動物の本能を突いた威嚇効果であろう。シュレンは拳王が嗾けた背水の男達に対し、まず双方の頭を鷲掴みし、手から発火させた炎で二人の頭部を燃やした。このままでも二人は死んでいた可能性はあるが、焼くだけでは南斗聖拳の持つ破壊力には遠く及ばない。あれはあくまで五車炎情拳を炸裂させるための前フリ。突然の発火によって相手を怯ませることを目的としているのだ。そう聞くと地味に思えるが、一瞬のスキが命取りとなる超人級の戦いにおいては、その効果は計り知れない。動物は火を怖がる。それは意思や覚悟でどうにかなるモのではない。本能が恐怖しているからだ。そして恐怖は隙を誘う。闘気をめぐらせて鋼鉄と化した肉体も、恐怖を感じたその瞬間だけは弛緩し無防備な姿をさらすことになる。その隙を逃さずに確実に相手を仕留める。それがシュレン本来の戦闘スタイルなのだ。しかしラオウ様には全くその戦法は通用しなかった。それもそのはず。彼は直前に闘った二人を相手に思いっきり炎を見せてしまっていたからだ。流石に拳王様でも突然目の前で炎を出されれば「むう!」と驚きの声を挙げられていた可能性は否定できない。何故彼はこの大一番にそんな壮大なネタバレをしてしまったのだろうか。

 もう一つ、別角度からこの拳の魅力を挙げるとするなら、やはり格好良いという点だろう。炎に魅入ってしまうという経験は、誰しも一度は体験したことがあるはず。あの圧倒的な熱量に、攻撃性を掻き立てる灼熱の紅色、それでいて心を和ませる揺らめき。炎というものは一言で言い表せない神秘的な魅力を幾つも備えている。アニメでシュレンは自らの城に火を放ち、帰る場所を無くすことによって部下達を鼓舞した。だが、部下達の闘争心を高めたのはそのシュレンの精神ではない。あの大きな城が業火の中で灰となっていくという何処か現実感のない光景が、部下達のアドレナリンを放出させ、テンションを極限に高めたのであろう。シュレン自身も炎の中に魅力を感じ、常にその赤い揺らめきに闘争心を煽られてきたのだと思う。案外これが炎情拳の炎がもたらす一番大きな力なのかもしれない。