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ヒューイ



登場:原作(110話) TVアニメ版(84〜85話)
   ユリア伝、真北斗無双、北斗が如く、他
肩書:南斗五車星
流派:五車風裂拳(TVアニメ版) 五車風仁拳(外伝)
CV:曽我部和恭(TVアニメ版)
   石塚堅(激打2)
   土田大(ユリア伝、リバイブ)
   金本涼輔(真北斗無双)
   一条和矢(DD北斗の拳)

 南斗最後の将を守護する「南斗五車星」の一人。通称 風のヒューイ。同じ五車星である炎のシュレンの弟星にあたる。風を友とし、風の中に真空を走らせる拳の使い手であり、その真空の力は鋼鉄をも断ち割る。

 南斗最後の将にとって仇なす存在である拳王を止めるため、風の旅団を率いて出撃。各地の拳王侵攻隊を次々と襲撃し、その名を轟かせることで、拳王の本隊をおびき出すことに成功した。南斗最後の将、そして五車星が動いたことを告げた後、果敢にも拳王に飛び掛かったが、巨大な拳の一撃で全身を粉砕され、傷一つ付けることもできずに敗北、絶命した。

 かつて拳王軍がサザンクロスへと進撃した際には、リハク等と共に街へと先回りし、シュレンと二人で拳王軍を偵察。その動向をリハクに報告した。


 TVアニメ版では、ラオウと戦う前にケンシロウのもとへ。逃亡を図ろうとしていた拳王新兵募集隊ダビデ達を抹殺した後、ケンシロウとの勝負を所望し、攻撃を仕掛けた。しかし交錯した瞬間に秘孔を突かれ右腕を負傷。ケンシロウの実力を認め、いずれ自分ではない南斗五車星の男が貴方を迎えに来ると言い残し去った。

 アニメオリジナルキャラとして弟のシオンが登場した他、拳法に五車風烈拳という名前が付けられている。また、自らが拳王に挑んだのは、相手をおびき出してその力を見極めるという風の役割を果たすためだったという設定が加えられている。


 『真救世主伝説北斗の拳 ユリア伝』では、南斗最後の将の命令を受けてレイの捕獲作戦を実行。シュレン、フドウとの連携プレイでレイを捕え、その喉元に手刀をつきつけて抵抗しないよう告げた。

 『ジュウザ外伝 彷徨の雲』では、シュレンと共にジュウザの元を訪れ、将のもとに戻るよう説得。ジュウザを動かす事はできなかったが、いずれ宿命がジュウザを導くとして、その場は引き下がった。その後、魔狼へと変わったリュウガと遭遇し、兄弟二人がかりで挑むも、天狼凍牙拳によって二人まとめて蹴散らされた。バトル中には、己の風とシュレンの炎をミックスさせるという協力技を披露している。
 また、幼少期にジュウザ等と共にリハクの下に集められ、将を守る宿命を持った者として訓練を受けるというエピソードが描かれた。ジュウザに才で遅れをとるものの、己たちの宿命を全うせんと拳の道に邁進する姿が描かれている。

 『北斗の拳外伝 金翼のガルダ』では、将の居城に近付こうとするガルダを止めるため部隊を率いて出陣。南斗神鳥拳の奥義の前にあえなく敗北するも、あえて生かすことで無力を嘆かせるという屈辱を与えられた。その後、シュレンに助太刀する形で再びガルダに挑むも、同士討ちを誘発され二度目の敗北。更には将の城にてフドウ、シュレンと共に3人がかりで3度目の戦いを挑んだが、それでもほぼ互角の戦いに持ち込むのが精一杯だった。

 原作1話以前の話を描いた『小説 ケンシロウ外伝』では、リハクの密命を受け、シュレンと共にケンシロウの動向を監視。シンに敗れた後のケンシロウの動きを追ううち、クマムシに襲われていた崑崙村の一団を救い、共にナザニエルへ。そこで殉教にとりつかれた人々の異様な姿を目撃し、ケンシロウが救世主として如何に彼等を救うのかというその一部始終を見届けた。

 『北斗の拳イチゴ味 五車星GAI伝 其之一 Red Blue』では、風仁拳の内弟子として拳を学んでいた少年時代にシュレンと出会った時のエピソードが描かれている。幼くして歴代の風仁拳伝承者を陵駕し、六聖拳に匹敵するほどの可能性を秘めていたが、その才ゆえに対等に足る相手も友も無く、孤独な日々を送っていた。しかしリハクの導きによって訪れた炎燐拳のシュレンと戦い、己と同世代の互角の強さを持つその男との出会いが、ヒューイの運命に変革を齎すこととなった。
 作中にはヒューイの師も登場している。




 日本漫画史におけるキング・オブ・被ワンパン。それがこの男、ヒューイである。ワ○パンマンがいくら人気を博そうが、コミックスが売れようが、「ワンパンでやられたキャラクター」として最もフェイマスなキャラクターは、未来永劫ヒューイなのである。少なくとも私の中では。




 彼の散り様は、それはそれは見事なものであった。上の画像には、その魅力が全て詰まっている。構え→跳躍→攻撃→反撃→驚愕→被弾→墜落というこの完璧な流れを、キッチリと2ページに収めたこの見開きは、もはや芸術と域と言えるだろう。余りに大げな前フリをしないことで過度な雑魚臭を防ぎ、ほんの僅かながら読者に期待を抱かせてからの豪快な昇天。ラオウ様の拳を己の身体程の大きさに錯覚することで、両者の間にある圧倒的な戦力差を表現するという身体を張った演出。殴る側と殴られる側、両者の表現力が最高レベルで合致したからこそ生まれた伝説のシーンと言えるだろう。


 彼がそんな被ワンパンマンとなってしまった原因はハッキリしている。それは、「跳躍」したことだ。あの拳王を前にして、動きの制限される空中に身を投げ出すなど、殺してくれと言っているようなもの。完全なる悪手である。彼が選ぶべきは地上戦だった。「風」の異名を持つ男なのだから、スピードには自信があった筈。その速さを活かして攪乱すれば、あれほどの瞬殺劇にはならなかっただろう。

 敵を本気で倒したいなら、最低でも胴より上への攻撃が求められる。だがあの時、拳王は馬上にいた。更にあの黒王号の大きさを加味すると、拳王はヒューイよりかなり高い位置に居た事になる。故にヒューイは、ジャンプという行為に及んだのだと考えられる。

 しかしそれならまず最初に黒王を攻撃するという選択肢もあった。「将を射んとすればまず馬を射よ」という故事が生まれたように、馬上の相手を討つ為にはまずその身を預ける馬から崩して行くのがセオリーだ。そもそもヒューイの目的は拳王の進軍を止める事だった。ならば拳王の"足"である黒王を狙うのは当然の策であり、実際ジュウザは黒王を奪う事でそれを成した。状況的にはどう考えても黒王の方に焦点を絞るべきだったのだ。何故ヒューイはそれを怠ったのか。

 私が思うに、おそらく彼は「馬上は不利」という情報を重視しすぎたのではないかと思う。その根拠となったのは、かつてマミヤの村で行われたケンシロウとラオウ様の闘いだ。あの一件は、当然五車星達の耳にも届いていただろう。あの時、ケンシロウはしきりに拳王に対して馬上の不利を説いていた。そしてトキの登場を受けて、拳王は"本気"で戦うために馬から下りていた。これらの情報を総合した結果、五車星は「拳王を馬から下ろさない」という戦術を選んだのだ。拳王が舐めプをしている隙を見逃さず、一気に勝負をかける事が、あの化物を倒しうる唯一の方法と踏んだのである。だが黒王を攻撃してしまっては、その千載一遇のチャンスが失われてしまう。黒王を倒して拳王の足を奪うよりも、黒王に騎乗し続けてもらう事で拳王を討つワンチャンを作り出す。そんなプランを描いてしまったのだ。

 その考え方自体は間違ってはいなかったのかもしれない。だが彼らは、あまりにも各々の力量を見誤りすぎた。拳王の力を「100」とするなら、ヒューイは己自身の力を「60」くらいと見積もっていたのだろう。だが残念ながら現実は「3」であった。馬上の拳王が本気の力を出せず、100の力が50や30に下がろうが、どっちみち「3」のヒューイに勝ち目など無かったのだ。その分析力の低さが、彼らに淡い夢を抱かせ、「跳躍」という暴挙を生んでしまったのである。



 まあ闘いの中でどんな戦法を用いようが、敗北という未来は覆せなかっただろう。なので跳躍したことの罪は大きくは問わない。それよりも問題なのは、そもそも彼が犠牲になったことに意味はあったのかということだ。彼は一体何のために動き、何のために拳王をおびき出し、何のために死んだのだろうか。

 五車星の目的は、拳王を将のもとに近付けぬこと。フドウがケンシロウと合流したとき、ラオウ様はまだ居城におられた。最後の将の事は認識こそしていたが、特に気に留めてはおられなかったのだ。なのにヒューイは、拳王侵攻隊を襲いまくることで拳王を煽り、将への興味を抱かせてしまった。目的と行動が全く一致していないのだ


 TVアニメ版では、「相手をおびき出してその力を見極める」事が風の役割だという設定が与えられている。ヒューイの弟のシオンが、命を賭して兄の散り様をリハクに報告することで、その役目は確かに果たされた。だがそれに何の意味があったのか。本当に五車星の一人を失ってまで行うべき作戦だったのか。

 本当にそれでラオウ様の力量を計れていたのならまだ救いもあるだろう。だが結局リハクは拳王の力を大きく見誤り、城に準備したチンケな罠は1秒でゴミと化した。それと同時に、ヒューイの死もまた1ミリも報われることの無い無駄死にと化したのである。

 そもそもヒューイが出撃したのも自分の意思ではなく、リハクの命令を受けてのことだろう。アニメでは、リハクからの出撃命令書が届けられるシーンも確認できる。リハクの命で出撃し、リハクのために命を落としたのに、当のリハクはその死を全く活かす事も無く全力でゴミ箱にダンクシュートを決めたのだ。許しがたきジジイである。