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[第22話]
第一部完結
ユリア永遠に‥‥
そしてシンよ!


 サザンクロスの街までやってきたリンとバット。2人はケンの生存を半ば諦めかけていたが、リンはそれを認めようとはせず、頑としてその場を離れようとはしなかった。ケンは死んだんだ。受け入れねばならない辛い現実をリンに悟らしめようとするバット。しかし次の瞬間、バットは、その自分の考えが間違いであることを知った。朝の光の向こうから歩いてきたのは、間違いなく生きたケンシロウの姿だった。ケンとの再会を心から喜ぶ二人。しかし、ケンの顔はまた直ぐに厳しい表情へと変わった。目の前に迫った宿命の戦いが、ケンの血を沸き上がらせたのだ。そしてケンとシンにとって長すぎる一日が始まった。

 炎の中に消えたユリアの町、サザンクロス。その残骸を見下ろしながら、シンはまた新たな町をユリアのために築く事を誓う。しかし、そのシンの言葉に、ユリアは何の反応も示さなかった。

 城の中に残っていたシンの親衛隊員達を北斗旋風連撃で蹴散らしたケンは遂に宿敵・シンの元へと辿り着いた。一年ぶりに宿敵の姿を目にし、再燃する怒りと感動に身を震わせるケン。そして恋人・ユリアとの再会は、辛い旅の傷をすべて癒すかのようにケンを安堵させた。だがユリアは、ケンの呼びかけにも眉一つ動かすことはなかった。ユリアはお前のことなど忘れたのだ。哀しき現実をケンに告げるシン。しかし、ケンの目には涙が溢れていた。ユリアが生きていた・・・ケンにとってはそれだけで十分であった。

 宿命の対決は、シンの南斗千首龍撃から幕を上げた。だがその高速の突きを、ケンは苦もなく捕らえてしまった。皮肉にもシンの教えた執念が、ケンを一年前とは別人にさせてしまったのだ。ケンの成長を認めたくないシンは、一年前にケンを葬った技、南斗獄殺拳を放つ。迎え撃つケンも、あの時と同じ北斗飛衛拳で対抗。空中で交錯する2人。だが、膝を付いたのはシンの方であった。一年前の再現は、勝者だけを逆転させたのだった。

 とその時、突如ケンの背後からシンの部下が襲いかかってきた。だが宿敵との対決で神経を研ぎ澄ましているケンに攻撃が当たるはずもなく、闇討ちは失敗。万策尽き、追いつめられるシン。だが、シンの勝利への執念は信じられない暴挙を生んだ。ケンを強くした執念。その元であるユリアを消せば、ケンの執念は半減する。そう考えたシンは、迷うことなく愛するユリアをその手にかけたのだ。崩れ落ちるユリア。勝ち誇るシン。だがその行為は、執念をも越えるケンの怒りを爆発させてしまう結果となった。

 シンの突きが、ケンの左手を貫く。だがそれは、己の拳からシンを逃がさぬための布石であった。全ての怒りと哀しみを込め、全力の拳を撃ち放つケン。その怒拳は、ガードしたシンの手を吹き飛ばし、宿敵の体へと突き刺さった。そして立て続けに放たれた北斗十字斬は、長かった旅の終わりと宿命の対決に幕を下ろしたのだった。

 自らの紋章、ブラッディークロスの形に秘孔を刻まれたシンは、残り3分の命となった。死闘を終え、横たわるユリアに駆け寄るケン。だがユリアの体に触れた瞬間、ケンは驚愕した。なんとそのユリアは、精巧に作られた人形だったのだ。困惑するケンの問いかけに、シンは頬を涙で濡らしながら、哀しき現実を語りはじめた・・・

 燃え盛るサザンクロスの街を見つめるシンとユリア。しかし、シンの野望は潰えていなかった。新たに軍団を作り、サザンクロス以上の都を建設することをユリアに誓うシン。しかし、それを聞いたユリアが流したのは哀しみの涙であった。自分がいる限りシンはいつまでも殺戮を繰り返してしまう。その哀しき現実に、もうユリアは耐えられなくなっていた。そして、その悲しみの螺旋を壊すためにユリアが選んだのは、自らの死であった。俺のために生き続けてくれ!そのケンとの最後の約束を守れなかった事を悔いながら、ユリアはゆっくりと城から身を投じ、その命を絶ったのだった。

 シンもケンシロウと同じく心からユリアを愛していた。しかしユリアの中にはいつもケンシロウがいた。だからシンはサザンクロスを造り、富と権力と名声を得てユリアに振り向いて欲しかったのである。だがユリアの死んでしまった今、全ては虚しい物と化してしまったのであった。

 ケンに突いた秘孔が、シンの死期を近づける。だがシンは、ケンシロウの拳で死ぬことを拒んだ。強敵の拳だからこそシンは殺られるわけにはいかなかったのだ。ユリアと同じく、自らが作り上げた街に向かってシンはその身を投じた。そしてケンは、自分と同じ女を愛した強敵の為に、自らの手で墓に葬ったのだった。
放映日:85年3月21日


[漫画版との違い]
・ケンの身を安否するリンとバットのもとにケンが現れるシーン追加
・バット城の中についてこない
・KINGの親衛隊とケンが戦うシーン追加
・原作ではシンの前にハートが登場するが、アニメでは既に死んでいるためなし。
・ユリアを貫いた際、原作では椅子も貫通したがアニメではユリアのみ。
・一年前と同じく、北斗飛衛拳と南斗獄殺拳でぶつかりあうシーン追加

・シンの肩当てが壊れた理由が北斗飛衛拳を受けたからに変更
・十字斬 残りの命1分→3分
・ユリアが飛び降りた理由は「シンがサザンクロスを完成させたから」でなく「シンがサザンクロス以上の都作ろうとしたから」


・トキ、シュウと一緒
シンがケンシロウの前にユリア人形を置いておき、そして殺すフリをしたのは何故なのか。執念を半減させて勝つため?それはないでしょう。ケンと共に修行をしてきたシンが、北斗神拳の真髄が怒りであると言うことを知らないとは思えない。おそらくシンは半ば負けるだろうという覚悟をしていたのではないか。自分が勝てればそれで良い。しかしもし自分がケンシロウに負けるのならば、ユリアには是が非でもケンシロウと一緒になって欲しい、そう思い、ケンを怒らせた。そうやってケンに非情の血と哀しみをまとわせる事によって、ケンがラオウを越えるために必要不可欠な物を与えたのだ。つまり自らの命を犠牲にしようとしてまでケンを強くした、そう、シンもまたトキ、シュウと同じくらい「ケンのため」に生きた男なのだ。彼が殉じたのはユリアではなくケンシロウにだったのかも知れない。
・北斗旋風連撃
奥義名が漢字で出てるのにケンがそれを喋らないってのは後にも先にもここだけなんですな。シンへの怒りがひしひしと伝わるいい演出だと思います。しかしどうせ喋らせないのなら奥義名つけるなよと思ったのは私だけかしら。まあつけてくれたほうが嬉しいんだけど。


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