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牙一族編
(26話〜37話)
 女に変装して盗賊達を惹き付け、殺した彼らの死体から食料を奪う。南斗聖拳の一つ、南斗水鳥拳の使い手であるその男は、どんな手段を使ってでも生き延びねばならない理由があった。胸に七つの傷を持つ男を見つけ出し、その手で殺すという目的を果たすまでは・・・

 トヨの子供達の面倒を見ると名乗り出た村があった。だがそこは牙一族なる野盗団に狙われており、ケンがそこの用心棒をすることが条件であった。村へと訪れたケンは、村のリーダーであるマミヤと出会う。そしてもう一人、あの南斗水鳥拳の男・レイもまた、用心棒としてその村に雇われていた。実は牙一族と内通していたレイであったが、ケンシロウの強さを見たレイはあっさりと寝返り、牙一族達を惨殺した。それも全ては、七つの傷の男を殺すための処世術なのであった。

 その時、別の牙一族の部隊が村の外に現れた。彼らに捕らえられたマミヤの弟・コウは、兄弟たちの復讐だとしてその場で処刑されてしまう。村のリーダーとして気丈に振舞うマミヤであったが、両親の墓の前では溢れる涙を止めることができなかった。
 その夜、レイとケンシロウは、コウを殺した牙一族の部隊を壊滅させた。彼らを動かしたのは、マミヤの涙であった。レイも元々は情厚き男であった。そんな彼を変えたもの。それが、両親を殺し、妹のアイリを連れ去った「七つの傷の男」なのであった。

 牙一族の頭であり、一族全員の親父である牙大王は、用心棒である2人への憎しみを募らせる。奴等にも同じ苦しみを味合わせてやる。その復讐のため、2人身内を調べ上げた牙一族は、野盗に捕らわれていたアイリを強奪する・・・。

 牙一族を壊滅させるため、アジトへと乗り込んだケンシロウ、レイ、マミヤ。その3人の前に、アイリを人質に取った牙一族の本隊が姿を現した。突然の妹との再会にレイは自我を失い、アイリを助けようとしたマミヤもまた牙大王の手に捕らわれてしまう。そんな中、牙大王は、ケンシロウとレイに互いに殺しあうよう命じてきた。互角の拳である北斗と南斗が闘えば、相打ちになることを、牙大王は知っていたのである。そしてその言い伝え通り、戦いの果てに二人は互いの拳を受け、絶命してしまう。しかし、油断した牙大王が人質を放した瞬間、突如二人は息を吹き返した。北斗神拳秘伝 聖極輪。戦いの前にケンシロウがとったその構えは、互いに仮死状態となる秘孔を突きあうための合図だったのであった。

 まんまと人質を取り返された牙大王は、華山鋼鎧呼法にて全身を鋼鉄の鎧と変化させてきた。それは、殴りつけた鉄骨をひん曲げるほどの硬度であったが、秘孔 大胸筋を突かれた瞬間、その肉体はぶよぶよの脂肪へと変わり果てた。岩山両斬波で頭をカチ割られ、絶命する牙大王。それは同時に、牙一族という組織の壊滅を意味していた。



・女装
初登場時、マントを被って女のフリをし、盗賊達を惹き付けていたレイ。しかしいくら身体を隠そうと、185cm100kgの身体を女と思わせるのは無理がある。肩当をつけていれば尚更だ。何故盗賊達はああも見事に引っ掛かってしまったのだろうか。
南斗水鳥拳の真髄は、あの爆発的な突進力を生み出す足の動きにある。そしてもう一つが、華麗さだ。最終的にユダが負けたのも、その華麗さに魅了されたのが敗因とあった。レイ外伝での記述によると、南斗水鳥拳は男拳・女拳の2つによって成り立っており、その中でも柔なる流れを持つ女拳は、非常に優雅で華麗な動きを持っているという。レイはその歩法を師リンレイより学び、自らの物とした。もしかしてレイは、女装した際にこの南斗水鳥拳・女拳の動きを用いていたのではないだろうか。ゴツい体格という違和感を消し去るくらいの艶っぽい動きで盗賊達を魅了した、これもまた南斗水鳥拳の奥義だったのではないか。もしかしたら最後にユダを魅了したのもその奥義の進化系なのかもしれない。
レイの初登場シーンが実は最後のユダ撃破シーンの伏線だったなんてことは・・・まさかね。
・すぐ脱がす
なにかとすぐマミヤを裸にしてしまうレイ。何故彼はそんな事をするのか。好きな娘にスカートめくりしてしまう子供のようなイタズラ心なのだろうか。いや、そうではない。女性の裸・・・具体的に言うとおっぱいは、レイにとって安らぎのシンボルなのである。水浴び場でマミヤのタオルをはぎ取ったとき、レイの目は非常にやさしい眼差しに変化した。先ほどまではリンに「人を助けるような人間の眼じゃない」と言われていた瞳が、おっぱいを見た瞬間に安らぎに包まれたのである。同じような場面はレイ外伝にもあり、原作以上の切れたナイフ状態だったレイが、女王エバと一夜を共にした時だけ餓狼状態から解放されいた。これもまたエバのおっぱいが齎した安息の時間だったのだろう。アイリを失い獣となったレイが、人間としての理性を保ち続ける唯一の方法。それが、定期的におっぱいを見ることだったのである。そこにスケベ心は存在しない。怒りと苦しみの中で悶え続けるレイが、母性の優しさを求める事は至極当然であり、それがおっぱいへと集約されただけの話なのである。決して恥ずべきことではないのだ。
ただマミヤを裸にした件は、絶対にアイリには黙っていて欲しいと彼が懇願したであろうことは想像に難くない。
・牙一族の情報網
調査の結果、北斗の男に身内はいないと結論付けた牙一族。だがその後、レイがちょろっと調べただけでケンシロウには3人の兄弟がいることが明らかとなった。何故アイリを見つけ出したほど優秀な探索能力を持つ牙一族が、ケンの兄弟たちは調べられなかったのだろうか。いや、彼らは見つけていたのかもしれない。その上で彼らの強さを目の当たりにし、とても人質になどとれる奴等ではいと判断して親父に黙っていたのかもしれない。もしくは迂闊にラオウ様などに近付いてぶっ殺されてしまったため、情報が持ち帰られなかったとも考えられる。
・ケンシロウを見て怯えるマダラ
野性味溢れるマダラは、ケンシロウの周囲に漂う死の匂いを本能的に感じて恐怖したらしい。
・・・・あれ?それってリュウケンがやった虎試験の時の拳王様そのものでは?ってことはケンさんの拳も暗殺拳じゃないという事になってしまうんですが・・・・。普段からモヒカンども相手に大立ち回りしすぎて暗殺拳とかどうでもよくなっちゃったのかな・・・。
・北斗と南斗が戦えば相討ち
と牙大王は言っているが、実際問題これは誤った認識であると言わざるを得ない。そもそもこれを口にしていたのは牙大王だけで、これ以前から北斗と南斗は表裏一体だの陰と陽だとといわれてはいたが、互角とは言われていなかった。では何故牙大王はそう思い込んでしまっていたのだろう。それは、北斗と南斗が口裏を合わせてこの言い伝えを流布していたからだと思われる。この2つの流派でどちらが強いかと言われれば、そりゃもちろん北斗神拳なのだから、プライドの高い南斗側にしてみれば互角と言われることに不満は無かろう。北斗側にしても本来は暗殺拳なのだから必要以上に強さを誇示して目立つ必要はなく、また互角と周囲に認識させておけば、牙大王の時みたいに聖極輪での相打ちに信憑性が生まれ、作戦が成功しやすくなるのだ。
・レイが秘孔をつく
聖極輪での打ち合わせの後、ケンシロウとレイは互いに仮死状態になる秘孔を突き合った。ということは、南斗聖拳の使い手であるレイがケンシロウに秘孔を突いたということになる。一見するとありえない事のように思えるが、そうでもない。あのバットだってリンから記憶を奪う秘孔を突いているのだから、レイほどの拳の達人が突けない筈はないのだ。おそらく、秘孔にも難易度があり、仮死状態や記憶消失といった「比較的現実に起こりえる現象」を起こす程度のものは北斗拳士以外でも突くことができるレベルなのだろう。

【TVアニメ版での主な変更点】
原作ではマミヤの村の長老がトヨの子供達を預かることになったことから村に向かうが、アニメでは牙一族に襲われていたトラックをケンが助けたことで、その運転手たちに連れられて村へと訪れる
レイが村へと入る前に牙一族が一度村へと攻め込み、ケンに撃退される
レイに撃退された牙一族が、自分たちの仲間に引き込むというシーンが追加
誕生日を迎えたマミヤのために長老がケーキを焼くシーンが追加。コウはそのケーキに乗せる野いちごを摘むために村の外に出て、牙一族に捕らわれるという流れに変更されている。
牙一族のアジトに向かう途中、ギバラ率いる牙一族の部隊と戦うシーンが追加
死んだ兄弟たちを弔うための生贄を手に入れるため、ゴジバが部隊を率いて村を襲うというシーンが追加
アニメではマダラがやられた後にアイリが登場する
ゴジバがやられるのは原作ではマミヤが人質にとられた直後だが、アニメではケンとレイの戦いが終わった後
人質が取り返された牙大王が、爆薬で地割れを起こし、地形を溶岩地帯へと変えるというシーンが追加。ケン、レイ、マミヤ&アイリと戦力を分断される。
岩山両斬波を喰らった後、牙大王が溶岩に落ちていくシーンが追加

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