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ジャギ編
(38話〜44話)

 牙一族が壊滅したことで、ケン達の用心棒としての仕事は終わった。だがケンにはまだ片付けねばならない事が残っていた。レイが追い続ける「七つの傷」。自らの胸に刻まれたそれを、レイの前で披露するケンシロウ。だがレイは、ケンを疑いなどしなかった。アイリを救ってくれただけでなく、秘孔で彼女の目の光までも取り戻してくれたケンは、もはやレイにとってかけがえの無い友となっていたのだった。

 アイリを連れ去った男は、いつもヘルメットで顔を隠していたという。その話を聞いたケンシロウには、思い当たる人物がいた。それは、かつて北斗神拳の伝承者の座を巡って競い合った、3人の義兄のうちの一人であった。危険な旅路となる事を予感するケンは、リンとバットのことをレイに託し、一人荒野へと旅立つのだった。

 黒いヘルメット。そして胸に七つの傷。各地で非道な行いを繰り返していたその男は、胸の傷を見せて人々に問う。「俺の名を言ってみろ!」。自らを「ケンシロウ」と名乗ったその男が使ったのは紛れも無く北斗神拳であった。しかしその手には、拳法家にはあるまじき銃が携えられていた。

 とある村では、その「ケンシロウ」の胸像を村人に見せ、答えられなければ首を切断するという処刑が行われていた。そんな中、"本物の"ケンシロウが一味の前に現れる。ケンが語ったヘルメットの男の正体・・・それはかつて兄と呼んだ男、ジャギであった。
 ジャギの一味を倒し、聞き出したアジトの場所へと向かうケン。その道中、巨大な石に繋がれたまま砂漠を歩く子供と遭遇する。その少年・アキは、目がケンシロウと似ているというだけでジャギに目を付けられ、砂漠に棄てられたのであった。息絶えたアキを抱えて村へと訪れたケンは、彼の兄であるマコからボウガンを向けられる。アキを殺した「ケンシロウ」として・・・。ジャギを増長させた、かつての己の甘さを悔いるケンは、マコの怒りの矢をその体で受け止め、必ずジャギへと届けることを約束するのだった。

 ジャギがケンシロウを憎む理由。それは、メットの下に隠された彼の頭部にあった。数年前・・・北斗神拳の伝承者がケンシロウに決まったことに納得できなかったジャギは、ケンシロウを殴りつけて辞退を迫った。だが逆にケンの反撃を受け、秘孔を突かれたことで、頭部を覆う拘束具無しでは生きられない体となってしまったのだった。

 遂に再会を果たした因縁の兄弟。その闘いの場としてジャギが選んだのは、アジトである高層ビルの屋上であった。己がケンシロウに劣っている筈が無いと、技と暗器を織り交ぜた攻撃で攻め立てるジャギ。だがケンの前では、ジャギの姑息な技は何一つ通用しなかった。しかしジャギには奥の手があった。ガスタンクの燃料を使い、屋上を火の海と変えたのである。勝利を確信したジャギは、冥土の土産にと、ある事実を明かした。それは、シンを唆して狂気に走らせたのが自分だという衝撃の告白であった。

 怒りに震えるケンシロウは、屋上の床を崩壊させるという方法で炎を鎮火し、ジャギへと迫る。対するジャギは、何処かで会得した南斗聖拳で対抗するも、付け焼刃の拳がケンシロウに通用するはずも無かった。シンの怒り、ユリアの怒り、殺されたアキとその兄マコの怒り、そしてケン自身の怒り。叩き込まれた四度の怒拳は、ジャギの頭を覆っていた拘束具を吹き飛ばし、その頭部を破裂させた。闘いは終わった。だが死際にジャギが残した言葉は、再びケンを死闘へと誘うこととなった。ジャギの他に二人、ケンシロウには兄と呼んだ男達がいた。彼らが生きていることを知った今、ケンは彼らに会わねばならなかった。一子相伝の北斗神拳、その伝承者として・・・。



・鉄仮面
ドラマ「スケバン刑事II」で、南野陽子演じる麻宮サキがジャギと同じデザインの鉄仮面を被っていますが、これはジャギのほうが先なのでスケバン側がパクったと考えられます。ちなみにヨーヨーで闘う女子というネタはスケバン刑事(原作漫画)のほうが先です。
・胸像
ジャギの上半身を象った胸像。近年のゲームではジャギ自身が武器として使用したり、数十個も複製品があったりとオモチャにされています。ちなみにこの胸像を作った人物は、ジャギ外伝に登場しますが、ジャギの事をジャギと呼びまくったせいで殺されてしまう哀れな最期を迎えます。
・マコ、ケンシロウにボウガンを向ける
アミバの場合は本人が頑張ってトキに似せようと努力してるフシがあるので見紛っても仕方ない部分はありますが(そうか?)、正直ジャギとケンシロウを見間違うかね・・・?とは思います。身長こそケンシロウ185cm、ジャギ179cmなのでメット分入れるとほぼ同じにはなりますけど、それ以外でいうと七つの傷以外は何一つ似てませんしね・・・・。まあそれだけあの傷が特徴的なんでしょうけど。
・北斗神拳伝承者争いに敗れた者の末路
ジャギによると、北斗神拳の伝承者争いに敗れた者は、拳を奪われたり、記憶を奪われたりしたらしい。そしてそれが北斗神拳1800年の掟なのだという。しかし先代伝承者になれなかったコウリュウはのんのんと暮らしていたし、ラオウも自分の拳を覇道に用いると宣言しなければリュウケンに拳を封じられることはなかった。つまりジャギが挙げた例は、あくまで北斗神拳を悪しきことに使おうとした者のみに行われる制裁であり、本当はそこまで厳格な掟は存在しないのかもしれない。
・ケンシロウ、伝承者辞退を迫るジャギに秘孔を突く
さすがにちょっとやりすぎじゃね?と思う。まあ今までの鬱積もあるだろうし、他にも色々とジャギが悪行してた可能性もあるけど、長年共に拳の道を歩んできた兄に頭部破裂の秘孔、突くかね?せめて記憶抹消とかで妥協できなかったのか?
・ジャギが闘いの場に選んだのは高さ200mのビルの屋上
日本国内にある高さ200メートル(ジャスト)のビルは6つ。その内、99年以前に建てられたのは損保ジャパンの本社ビルとORC200の2つのみ。損保ジャパン本社は東京なので、KING軍の領土内となる。このことから、ジャギが居を構えていたのは大阪ということになる。
・・・まあ、あのビルとORCは全然形違うんだけどね。冗談です冗談。
・ジャギの南斗聖拳は誰から?
2016年現在でも、まだこの謎は明らかになっていない。しかし陽の拳と言われる南斗聖拳は北斗神拳と違い、数多くの流派が存在し、しかも一子相伝ではないのだからその使い手は星の数ほど存在するだろう。つまり原作に登場していない人物から修ったとしても何も不思議ではないわけで、そもそも特定しようとすること自体無理がある話しなのである。それでも強いて誰か特定しろと言われたらアミバだと思うけど。
・ケンシロウ、4人の怒りをジャギにぶつける
シン、ユリア、マコ&アキ、そして己自身の怒りをジャギにぶつけたケンシロウ。しかしジャギにアイリを浚われ、両親をも殺されたレイの怒りは完全にスルーされた。これは何故なのだろうか。それは、レイの抱いた怒りが、彼自身を不幸にしてしまったからである。餓狼となったレイは己が生き延びるために多くの殺戮を繰り返した。彼の「怒り」は「罪」へと変化してしまったのだ。それは、もはやケンシロウが代わりに怒りを晴らしたところで片付く事ではないのである。シン、ユリア、アキと違い、レイにはまだ命がある。その生の中で彼がやらねばならないのは、怒りを晴らすことではなく、その怒りが生んだ殺戮行為の贖罪なのだ。

【TVアニメ版での主な変更点】
ジャギから北斗神拳を盗んだ男が原作とは別の男に変更。ケンとのやりとりも変わっている。
アキが死なない
マコの「足が悪い」という設定が「病弱」に変更。容姿も原作と少し違う。
マコがケンシロウをボウガンで撃とうとした理由が、ジャギに秘孔で操られていたからに変更

≪牙一族編 アミバ編