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アミバ編
(45話〜51話)

 千八百年の長きにわたり受け継がれてきた一子相伝の北斗神拳。だが先代伝承者であるリュウケンは男児に恵まれず、四人の子を養子として迎えた。長兄ラオウ、次兄トキ、三男ジャギ、そして末弟ケンシロウ。兄弟間で伝承者の座を巡り競い合った結果、選ばれたのは末弟のケンシロウであった。そして今、ケンはその伝承者争いに終止符を打つべく、残る二人の兄に会おうとしていた。

 とある町に訪れたケンは、自暴自棄になって暴れる巨漢の男と出会う。彼は、「奇跡の村」と呼ばれる村の唯一の生き残りであった。奇跡の村・・・そこは、怪我人や病人が溢れる、死を待つだけの村であった。しかし突如現れた救世主・トキの起こす奇跡によって、村は蘇った。だがその男は、一夜にして変貌した。村人たちを木人形(デク)と呼び、人体実験を繰り返し、村は死に絶えたというのである。それを証明するかのように、最後の生き残りであったその男もまた、ケンの目の前で無残な死を迎えるのだった。

 北斗神拳を拳法としてではなく、医学として活かしたい。かつてトキは、そんな夢を描いていた。あの優しかったトキが殺人鬼になるなど在り得ない。そう思うケンシロウであったが、トキの館では、今日もまた秘孔の究明と称した人体実験が行われていた。
 その人体実験に耐えうる人材を集めるために組織された部隊、木人形狩り隊。この日、彼らが木人形候補として目を付けたのは、よりによってケンシロウであった。トキの秘孔によって数倍の筋力を得たギュウキ、同じく凄まじい跳躍力を得たハブを一蹴したケンシロウは、真相を確かめるべく、トキのもとへと向かう。

 奇跡の村の噂を聞きやってきた夫婦は、トキの治療に望みを託し、息子ユウの治療を依頼する。だが秘孔を突かれたその少年は、ケンシロウが訪れた時には、既にその命を奪われていた。俺が変わったのではない。時代が医学より暴力を必要としたのだ。そう言って笑みを浮かべるトキに、昔の面影はなかった。彼を変えたもの。それは、奇跡の村を襲った悲劇であった。自らが蘇らせた村が、野盗の襲撃によって壊滅させられたトキは、怒りに我を忘れて盗賊達を皆殺しにした。そしてその深い悲しみの中でトキは悟った。人々を救うことなど戯言・・・北斗神拳はやはり殺人道なのだということを。

 ユウの母を盾にするという外道な方法で、ケンシロウの秘孔を捉えるトキ。全身の動きを封じられ、絶体絶命に追い込まれるケンであったが、その時、レイが現れた。彼の口からもたらされた目の前の「トキ」の正体・・・・それは、かつてのレイの同門であるアミバという男であった。己を天才と疑わぬアミバは、トキにその自尊心を傷つけられたことで憎しみを抱き、自らがトキとなってその名を殺人鬼へと貶めたのであった。

 秘孔封じによってアミバの秘孔縛から脱したケンシロウは、その非道なる偽者への制裁を開始する。正体が明かされた今、「トキ」と信じて従ってきた手下たちも、もはやアミバの命令には耳を貸さなかった。北斗残悔積歩拳―――。秘孔 膝限を突かれたアミバは、意思とは無関係に後退し、城から身を躍らせながら爆死したのだった。



・トキの髪の色
奇跡の村に現れた時のトキの髪は黒い。これに違和感を感じる人もいるようだが、別に変でもなんでもない。何故ならトキの髪が白くなったのは、死の灰を浴びた瞬間ではないからだ。あの場面はただ灰を被って白く見えていただけで、下地はちゃんと黒のままなのが見て取れる。結構勘違いしてる人多いのよね。
・時速200kmのパンチ
ハブに掴まり木人形にされてしまった元ヘビー級のボクサーさん。彼のパンチは時速200km(自称)らしい。ちなみに現実での一流ボクサーのパンチは約40kmが限度とのこと。・・・・すげーじゃんこの人。パンチスピード倍にする必要なんかないじゃん。
・死のパワーゲーム
勝ったら食料一ヵ月分というエサに釣られ、ギュウキとの腕相撲勝負に挑んでしまったデブ。結局は秘孔でパワーアップしたギュウキには勝つことが出来ず、電ノコで右手を切り落とされてしまったわけだが、そうなる前にケンは彼を助けられたんじゃないか。勿論それは可能だっただろう。しかしケンはあえて助けなかったのだ。何故ならそのデブもまた、かつてプロレスラーを絞め殺したという殺人者だったからだ。
・トキは盗賊を皆殺しにしたのか
トキが奇跡の村を数日留守にした時、その隙を狙って攻めてきた盗賊により、村は蹂躙された。アミバも「この村でやつを襲った悲劇は本当だ」と言っているので、この事件があったことは間違いないだろう。だがその後、トキが盗賊達を皆殺しにしたというアミバの供述は本当なのだろうか。それともここからはアミバの狂言だったのだろうか。おそらく私は後者だと思う。トキが盗賊達を皆殺しにしたのだとしたら、その後もトキは村に残って復興に助力しただろう。その日常の中で、誰にも気付かれることなくトキが拳王軍に捕まるような事があるだろうか。そうすると、トキ外伝で描かれたように、トキが外出中に拳王軍に掴まり、入れ替わりで村へと現れたアミバが盗賊を壊滅させてそのままトキとして居付いたという流れが一番自然に思える。
・おまえをトキ様だと思っていたからついてきた
いやトキとかトキじゃないとか・・・この人今しがた目の前で親子をぶっ殺しましたよね。そんな下衆野郎な時点で正体が誰だろうと従っちゃ駄目でしょ。そんな言い訳通用しませんよ君たち。
・アミバ流北斗神拳は失敗だったのか?
アミバの指が破裂したのは、自分の筋力を倍加させる秘孔が失敗したからか、それともケンが事前に秘孔を突いていたからなのか。真相はわからない。だがアミバがこの秘孔を知っていたのは事前に木人形を使って発見していたからであり、自分に突くからにはほぼ100%成功するという確信があったからだろう。故にこの秘孔がミスだったとは考えにくい。しかしこの秘孔が転龍呼吸法を真似たものだとするなら、ミスの可能性もある。木人形とアミバでは、潜在能力に差がありすぎたのだ。木人形程度の潜在能力なら問題なく引き出せたこの技も、アミバの潜在能力は無理矢理引き出すには余りに大きく、身体が耐えられなかったのである。故に事前の木人形実験とは違う結果が出てしまった、といったところでは無いだろうか。

【TVアニメ版での主な変更点】
リンがケンを追いかけてマミヤの村をとびだし、砂漠で行き倒れていたところをユウ達に救われ、共にアミバのもとへと訪れるという展開になる。同時に、レイ、マミヤ、バットもリンを探して村を出発し、その後を追う内にアミバのもとへと辿りつく。
トキ(アミバ)の秘孔によって獣の力を得た3人が登場。ケンシロウに襲い掛かるが敗れる。
ハブ達がやられた後、ゴウムの木人形狩り隊が現れてケンシロウと闘うが敗れる。
ユウは原作では死亡するが、アニメではケンの秘孔が間に合い生還する。
トキ(アミバ)親衛隊の隊長が、アミバの親友のネバダという設定に。レイ達の行く手を塞ぐ。
アミバの断末魔が「拳王様〜」に変更。これにより、この時点でケンが拳王の存在を知ることに。

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