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第壱話
『呪縛の街』
第弐話
『禁じられた拳』
第参話
『男が哀しみを背負うとき』
登場人物 流派・奥義 STAFF・CAST 小説差込漫画



第弐話 「禁じられた拳」




出立

 サンガが死んだことにより、神としての立場から開放されたビスタとサーラ。だがビスタがサンガより受けた傷は、思いのほか深かった。劇症型の破傷風菌に侵されたビスタの命は残り二日・・・。薬がある自由の村へ戻るには、ジープを使っても往復四日はかかってしまうのだという。残された唯一の方法、それは北の山脈「クリフランド」を通り抜ける以外に無かった。だがそこは、クリフランダーなる殺人集団が支配する、不帰の地であった。自らその役目をかって出たケンは、旅立つ前にサーラに告げた。まだ"神"であるお前達ならば、民を動かすことが出来る。サンガの手下たちが襲ってきても、民がお前たちを守ってくれる―――と。今のこの状況では、民たちにかけられた信仰という名の呪縛を利用する以外に道は無かった。




セイジ

 ケンシロウが国を離れた事を確認し、歓喜に沸くサンガの手下達。だが彼らが城に戻ろうとしたその時、マントを纏った一人の男が現れた。続いて、彼を追うかのように現れた二人の僧―――。その額に刻まれた蒼い刻印は、彼らがクリフランダーであることの証であった。
 彼らの使う拳は門外不出を掟とする修験の拳であった。二人の僧は、その掟を破り山を降りたマントの男、セイジを殺すため、追っ手として遣わされた刺客だったのである。だが、2対1という人数差も意味を成さぬほど、彼らの力の差は大きかった。命を賭して放たれる二人の攻撃も、セイジの前には全く通用しなかった。そしてセイジの拳が僧達の身体を撃ちぬいたその瞬間―――、二人の身体は破裂音と共に肉片と化した。それはまさに、ケンシロウの北斗神拳と瓜二つの拳法であった。

 呆気に取られるサンガの手下達に向かい、セイジは言った。サンガが築き上げたこの街の全てを俺が支配する―――。セイジが拳を学び、山を降りたのも、すべてはその野望を果たすための第一歩に過ぎなかった。目の前で圧倒的な力を見せ付けたセイジに対し、もはやサンガの手下たちには服従以外の選択肢は残されていなかった。

 城内にいたサーラを捕え、あっけなく城を手に入れたセイジは、まずサンガの死体の下へ案内するよう命じてきた。地下に安置された"それ"を見た瞬間、セイジは怒りの形相で棺を蹴り壊し、飛び出したその死体を踏み潰した。サンガに向けられた異常なまでの憎しみ・・・。それは全て、今日の日の復讐を果たすため、セイジを突き動かしてきたものに他ならなかった。そして、サンガのものを全て奪い取ること復讐を果たさんとするセイジにとって、"神"であるサーラの力は必要不可欠なものであった・・・。




クリフランダー

 自由の村へ向け、険しい山道を走り続けるケンシロウ。だが渓谷の道へと差し掛かったとき、突如崖の上の巨大な石像が崩れ、無数の岩塊となって転がり落ちてきた。それは、侵入者を追い返さんとするクリフランダー達の最初の警告であった。忠告に耳を貸さぬケンシロウに対し、容赦ない攻撃を開始するクリフランダー達。圧倒的な力量差で、襲い掛かってくる僧達を蹴散らしてゆくケンシロウであったが、彼らには一向に怯む様子はなかった。何人たりともこの道を通すわけにはいかない―――。彼らにとってその掟は、命を捨ててでも遵守せねばならない重き宿命なのであった。

 門の前までたどり着いたケンシロウに、クリフランダー最強を誇る男、ジネンが立ちはだかる。だが彼の取ったその構えに、ケンシロウは敏感に反応した。北斗天帰拳―――。それは紛れも無く、北斗神拳の奥義のひとつであった。彼らが使う拳法の名は"北門の拳"。北斗神拳と同じく、北斗七星から生まれた密拳であった。





悪夢

 峡谷にかけられた一本の丸太に、一人の少年がしがみついている。少年がその橋を渡り終えようとしたその時、向こうの岩壁に立つ男が、その丸太を足で蹴落とした。必死に男にしがみつき、少年は言う。「父さん、何故・・・!」だが男は答えることなく、ゆっくりとその手を引き離し、己の息子を峡谷の中へと放り捨てた―――。それは、毎夜悪夢として繰り返される、セイジの忌まわしき過去の記憶であった。

 地下牢に監禁していたサーラを連れ出し、寝台の上でゆっくりとその身体に迫るセイジ。無抵抗を装うサーラであったが、その身体が重なった瞬間、彼女の指がセイジの秘孔を捕らえた。秘孔椎神―――。突かれたセイジの体はピクリとも動けなくなる・・・筈であった。だが、北門の拳で鍛え上げられたセイジの身体には、サーラの秘孔術は通用しなかった。逆に秘孔を突き返され、サーラは深い眠りの中へと落とされたのであった。

 暫くの後・・・。牢番のチェスの目を盗み、トビは密かに牢屋から抜け出していた。だがそんなトビの目に飛び込んできたのは、バルコニーで佇む半裸姿のサーラの姿であった。何が起こったのか、すべてを理解したトビの目には、怒りと哀しみの涙が溢れていた。





使命

 ジネンの連打を悉く躱すケンシロウに対し、ジネンはケンの攻撃を全く捉えることが出来なかった。闘気を込めれば拳は読まれる―――。修験の拳である北門の拳には、主戦場での実践力が欠落していることを、ケンは見抜いていたのだった。

 勝敗が決したその時、固く閉ざされていた山院の門が開かれた。姿を現した北門の拳の老師は、既にケンの正体に気が付いていた。彼らが学ぶ北門の拳の"開祖の拳"である、北斗神拳。その正統伝承者であるケンシロウは、彼らクリフランダー達にとって神にも等しい存在なのであった。

 400年前の北斗神拳の伝承者争いに敗れし者が創始したと言われる修験の拳。それが、北門の拳の正体であった。以降その拳の使い手達は、断崖絶壁を住処とし、永きに渡ってこの拳法を守り続けていたのであった。そして彼らがその道を頑なに通さなかった理由―――、その答えは、寺院の奥にある巨大な鉄の扉の向こうにあった。扉に描かれた放射能のマークは、かつてここが兵器の廃棄場であった事を意味していた。文明が崩壊した今でも、力を欲してこの兵器を欲しがるものは後を絶たない。故に彼らはこの地を封印し、秘密と共に消えゆく宿命を受け入れたのであった。彼らの身体に刻まれた刺青は、その非情の宿命を受け入れた者だけに与えられる、誓いの証なのであった。

 足止めしたお詫びとして血清を受け取り、ラストランドへの帰路につくケンシロウ。だが旅立ちの前に、老師はケンに告げた。門外不出の掟を破り、遁走した者がいる―――。男の名はセイジ。狂気じみた拳への執着心で、奥義を二年で極めたというその天才の正体・・・それは、あのサンガの息子であった。





野犬

 自らが手中に収めた街並みを見下ろし、父サンガへの復讐を成した喜びを噛み締めるセイジ。その男の謀略を止めんと、背後から短剣をつきたてるサーラであったが、刃ですらその肉体を貫く事は出来なかった。だがその時、サーラの目があるものを捉えた。セイジの首筋にある、獣による傷跡・・・。かつてサーラは、そこに傷を負った一人の"少年"と出会っていた。

 数年前、渓谷へと遊びに来ていたサーラは、駆け寄ってきた子犬に手を触れようとし、その母犬に襲われそうになったことがあった。だがその時、一人の少年がサーラの盾となり、その危機を救った。首筋に牙を受けた少年は、怒りの形相で野犬を睨みつける。だがそれは、犬に向けられた怒りではなかった。父に捨てられた少年にとって、犬ですら我が仔を守ろうとする現実が、彼に激しい怒りを思い出させていたのだった。そして今―――、サーラの中で全てが繋がった。あの時の命の恩人がセイジである事。そして彼が憎む"父親"とは、サンガである事―――。





反乱

 翌朝、見張りに立つ城の門番達は、驚愕の光景を目にした。武器を手にしたラストランドの民たちが、集団となって城に突撃してきたのである。その反乱の中心にいたのはトビであった。昨夜、ビスタを抱えて街へと逃れたトビは、得意の話術で民達の心を掌握し、反乱を起こさせたのである。ドーハ様を傷つけたセイジを倒せ―――。神ドーハの兄であるトビの言葉に呼応し、猛攻撃を仕掛ける国民達。対するセイジの兵隊達も、総力を挙げて民衆を迎え撃つ。いまやラストランドは、街全体が大きな戦場と化していた。だがその大規模な反乱にも、セイジは一歩も引くつもりは無かった。彼にとってこの戦は、サンガのラストランドの終焉であり、そして己の新たなラストランドの始まりを意味していたのだった。




<小説版とOVA版の違い>
小説版でのみ描かれたシーンや、OVA版で変更されたシーンなどを紹介。


●セイジ登場

・セイジの追手2人は、OVAではサイドカーにのってくるが、小説では漆黒の悍馬。
・OVAでは生き残りの兵全員でセイジに忠誠を誓うが、小説では逃げ送れたチェスだけが捕まえられ、その後副官にとして配下につく。
・OVAでは地下の洞窟にサンガの棺が安置されているが、小説では地下は出てこないため、修練場に置いてある。


●ケンシロウ vs 北門の拳

小説版ではケンシロウがクリフランドを通らないため、全く別のストーリーになっている。

<小説版でのケンシロウ vs 北門の拳>
血清を手に入れるため、ジープで自由の村へと戻ったケンシロウ。だがそこには、セイジ抹殺のために送り出された二人の修験僧、シマとレンが待ち構えていた。伝え聞いていた風貌から、ケンシロウをセイジと勘違いした二人は、捨て身の戦法でケンシロウへと襲い掛かる。だが完全に裏をかいたはずの奇襲攻撃も、ケンシロウには通用しなかった。
相手がセイジではないことを知った二人は、事のあらましをケンシロウに語り始めた。己達の拳が北門の拳である事。セイジという男が掟を破り、門外不出のその拳を野に持ち出した事。そして、禁を犯した者には開祖の罰が下るという言い伝えがある事―――。そこまで語ったその時、シマの中に閃光が走った。山奥の院に祭られる、開祖を模してつくられたという闘神像。ケンシロウの瞳は、その像と同じ哀しみを宿していたのである。目の前の男が、開祖の拳「北斗神拳」の伝承者である事を知った二人は、己の掌の北斗七星を涙でぬらしていた。


・「クリフランド」「クリフランダー」という名称はOVA版のみ。
・OVAではビスタの命があと2日で、クリフランドを通らなければ間に合わないというストーリーだったが、小説では普通に自由の村に薬を取りに戻る。故にケンシロウはクリフランドへも行かないし、老師やジネンも出てこないし、北門の拳が兵器を400年守り続けているというエピソード等も一切無い。


●セイジ、ラストランドの王に

・OVA版ではセイジが胸の秘孔を突いてサーラを気絶させるが、小説ではセイジがサーラに秘孔「椎神」を突き返し、意識は残したまま身体の自由を奪う。
・チェスがトビをいたぶるのはムチではなく剣。
・OVAでトビがサーラを見たのはバルコニーに立つ姿だが、小説では水が溜めてある洗い場。
・セイジが野犬に噛まれるシーンは、OVAでは子犬と母犬しか出てこないが、小説ではその前に数匹の野犬をセイジが返り討ちにするシーンがある。







・ビスタ、燭台が胸に刺さった傷が元で劇症型の破傷風菌に犯される。のこり2日の命に。
破傷風は、土壌や錆びた釘、金物などで負った傷がもとで発症する。劇症型というのは、進行が早く、症状が激しい病気の事。自分用メモ。
・ビスタを治すための血清は自由の村に戻らないと手に入らない。しかし道を熟知したトビでも往復四日はかかる。
みんなで車のって自由の村に向かえばいいんじゃない?もう国とかどうでもいいだろ。
・セイジは僅か2年で北門の拳 を習得した天才。
シャチが学んだのも多分それくらいだし、バランも独学であれだけ秘孔使えりゃ天才だよなー。でもみんな悉く早死にするんだよな。
・セイジ、サンガの死体を確認。棺をぶち壊し、亡骸を踏み潰す。
きれいな顔してるだろ・・・嘘みたいだろ?死んでるんだぜ、それで。・・・っていうか、もっとケンさんにグチャグチャにされてた筈なんだが。
・セイジ、かつて谷にかけられた丸太を渡っていた時、父サンガに丸太ごと谷底へと落とされる。
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・サーラ、セイジに椎神を突いて動きを止めようとするが効果なし。北門の拳 を極めた人間の秘孔に女子供の力は通用しない。
要するに両者に大きな実力差、というか"気"の量の隔たりがあると効果は無いと言う事ですね。ケンさんがアミバの戦癰を敗れたのも、そういうことなんだろうな。
・北門の拳 は所詮は修験の拳。主戦場で磨かれた北斗神拳の敵ではない。
もともと伝承者になれなかった者が作った拳だから、奥義とかも全部伝わってないだろうし、門外不出なんだから進化のしようもないな。がんばって兵器を守ってるみたいだけど、そこらの南斗の拳士一人にも負けそうだ。
・ジネン、ケンシロウの動きを全く捉えることができず、何も出来ぬまま敗北。放たれる闘気が動きを全て悟らせてしまっている。闘気を封じてこそ技は活きる。
なんか蒼天の拳の拳志郎vs金克栄を思い起こさせるような一方的な決着。あれはなんだったんだ?無想転生か?それともただ気配消しただけか?
・北門の拳 の老師、ケンシロウの目を見て、開祖の拳の伝承者である事を悟る。
ジュウケイと張太炎を合体させたような奴だ・・・
・北門の拳 は、およそ400年前の北斗神拳伝承者争いに敗れた者が作り上げた修験の拳。
400年前っていうと、だいたい1600年頃だな。関が原の頃だ。蒼天の拳には本能寺の変の時代の伝承者が登場しているので、おそらくその次の代くらいの伝承者争いの事を指してるんじゃなかろうか。
・クリフランダー達の寺院の中には、核戦争時の兵器の廃棄場がある。彼等はその兵器が悪人の手に渡らないため、永久に守り続けることを使命としている。
それは偉いけど、それならもっと厳重に隠せよ。ボタンポチッっで幕が開いて扉丸見えって・・・せめてコンクリとかで塗り固めたら?
・チェス、トビが拷問で死んだと思い込み、牢屋の扉を開ける。その隙にトビ逃亡。
なんで開けたし
・北門の拳 は門外不出。掟が破られたとき、必ずや開祖の拳の裁きが下る。
たしか大乗南拳にも同じような言い伝えがあったな。北斗神拳伝承者はなんか問題おこるたびに現れなけりならないという宿命をもってるんだな。
・サーラはかつて峡谷で野犬に襲われた際、セイジに助けられた事があった。
今回の作画 第参話の作画
 差がエグい

・トビ、伝聞屋ならではの喋りで民衆を動かす。神ドーハの名のもとに反乱を起こす。
ドーハ(ビスタ)の口添えもなしに、よく自分がドーハの兄だって信じ込ませられたな。普通あんな小汚い男がそんな事言っても、誰も信じてくれないよ。まあそのへんは流石伝聞屋ってところなんだろう。