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彪白鳳
ひょうはくほう



登場:第109〜123話
肩書:飛燕の兄弟子
流派:極十字聖拳
CV:島田敏(パチンコ)

 極十字聖拳の使い手。流飛燕の兄弟子。白鬼の名で恐れられている。共産党に属する革命戦士。

 幼き頃、義賊を働いて捕らえられ、逆さに吊るされていた時に魏瑞鷹と対面。貧乏を憎むその気持ちを買われ、極十字聖拳を学ぶこととなった。後に、弟に似た流飛燕を助け、彼も弟子にして欲しいと瑞鷹に頼み込み、共に師の拳を伝承した。

 飛燕が拳志郎抹殺の依頼を断ったため、その代役として選出。北斗神拳を超えるという師の思いに応えるため、拳志郎に戦いを挑んだ。しかしその最中、倒れた街灯から子供を庇う拳志郎の姿を見て、己の仁義に従いその場は退いた。
 その後、上海へと訪れた流飛燕と再会。エリカと共に共産党員のアジトに匿うが、ナチス軍の狙撃を受けて死亡。死の間際、既に死兆星を見ていたことを明かし、飛燕を守ることこそが己の生きがいであったと語った。



 彼と拳志郎の闘いは少し珍しい。まず彼が流派の二番手であること。北斗の拳ではファルコとソリア、三羅将など、同じ流派の者と複数回戦う例があるが、蒼天の拳で同一の流派の拳士二人と拳を交えるのは極十字聖拳だけ。故に、メイン(流飛燕)と闘る前に前哨戦のような形で拳志郎と闘ったのは、この彪白鳳だけなのだ。そういったポジションのキャラクターに求められるのは、拳法の強さを知らしめた上で、「これより更に強いのがいるのか・・・」と読者に絶望感を与えることだが、勝負が早々に順延になってしまったため、その役目は思ったほど果たされなかった。白鳳も勝負の続きを楽しみにしていたようだが、それは我々も同じ気持ちだ。何故死んだし。

 もう一つのレアケースは、二人の勝負の場に、大勢の観客がいたこと。蒼天の拳で拳志郎のバトルが繰り広げられる際、その場には殆ど観戦者がいない。いや、いるのだろうが、北斗の拳におけるバット&リンのように、戦いを見ながら解説まがいのことをしてみたり、いい場面で「ああ!」と声をあげるようなカットが挿入されないのだ。ただ拳を交える二人の想いだけが交錯する・・・。そんな闘いも勿論良いのだが、北斗の拳を見慣れた我々とすれば、第三者の茶々が入るのもそれはそれで楽しみだったりする。故に、そういう意味でももう少し戦いが続いて欲しかった。まあ、戦いが中断されたのは、その観客達がいたせいなんだけどね。


 ところで、先に「二番手」と言った後でなんだが、彼は本当に飛燕より劣っているのだろうか。少なくとも明確にそう書かれている場面は無い。白鳳が飛燕の「代役」として登場したことと、「(飛燕のほうが)白鳳より早い」という拳志郎の台詞がそう思わせているだけだ。そりゃ拳が早いにこしたことはないが、ガタイを見れば判るとおり、白鳳はどう考えてもスピードよりパワータイプだ。拳の威力だけなら飛燕を上回っている可能性はあるだろう。

 もうひとつ、彼の死の原因も評価を下げる一因になっている。刺客に気づかずに窓を開け、そのままスナイプされてしまったというのは中々のお粗末さんだ。まあ銃弾自体は飛燕たちの盾になるためにあえて避けなかったらしいが、周囲を取り囲む殺気に気付かなかったのは事実。でもまあ、拳士たちの中にもそういうのが苦手な人だっているかもしれないじゃん。半径4メートルしか円が届かないお侍さんもいるわけだし。

 個人的には、白鳳のほうが強くなる条件は揃っていたと思うんですよね。拳を学び始めたのも白鳳が先だし、飛燕は幼少期に病気持ちで身体が弱かった。師・魏瑞鷹も、白鳳は進んで内弟子に迎えたのに対し、飛燕は中々受け入れようとはしなかった。それはつまり白鳳の方が素材としての上だと考えていたからだろう。そして飛燕はただ生きるために瑞鷹の内弟子になったのに対し、白鳳には「貧乏を殺す」という、ふわっとしながらも確固たる目的があった。目標が有った白鳳より、目標の無かった飛燕のほうが強くなったというのはどうも腑に落ちない。

 いや・・・もしかしたらそれこそが、白鳳の拳を滞らせたのかもしれない。拳法家がいくら強くなろうとも「貧乏を殺す」―――、つまり貧富の差を無くすことなど出来はしない。故に白鳳は、最強を目指すのではなく、平等なる社会を目指すという理念を掲げる共産党のために拳を使うことを決めたのだ。だが、極十字聖拳を最強とするという師の悲願を叶えたいのも事実。故に白鳳は、その役目を弟弟子の飛燕に託したのだろう。
 おそらく白鳳が共産党に入った時点では、まだ白鳳のほうが力は上だったと思われる。しかし幸か不幸か、死鳥鬼と呼ばれる飛燕は、自身を「人殺ししか能が無い」と評するほどの拳法馬鹿であった。それはまさに、生涯を拳に費やした師・魏瑞鷹の生き様そのもの。ついでになまり癖も師そのもの。そんな飛燕ならきっと己など軽く飛び越え、そして師をも超え、打倒北斗神拳という極十字聖拳の悲願を果たしてくれると信じ、白鳳は拳の道から一歩引いたのではないか。
 しかし彼は、死兆星を見てしまった。己に残された命はあとわずか・・・。そんな矢先、自らのもとに舞い込んだ閻王討伐の依頼。もしかしたら自分はそこで死ぬかもしれない。そしてその敗北は極十字聖拳に汚点を残すことになるかもしれない。だがそれでも白鳳は、拳志郎に戦いを挑んだ。それは、自らもまた最強を追い求めた一人として、最後は拳法家として死にたいと願ったからなのだろう。

 かつて魏瑞鷹は白鳳に言った。お前をこの世で誰よりも強くしてやろうと。劉家拳の天才といわれた瑞鷹の真贋に紛れなどあろうはずはない。その言葉通り、白鳳には最強となりうる素質があったのだろう。だが白鳳は、この国を変えたいという強い意志を持っていた。そしてそれ以上に、死に別れた弟にそっくりな飛燕への愛情が強すぎた。飛燕や瑞鷹をも超える史上最強の極十字聖拳の拳士は、彼自の優しさ、強い信念によって幻と消えてしまったのである。