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章大厳
しょうだいげん



登場:第72〜103話
肩書:先代北斗曹家拳伝承者
流派:北斗曹家拳
CV:加藤精三

 北斗曹家拳伝承者。章烈山の実父。張太炎の師父。

 かつてとの間に張太炎を設けるが、実は妻が婚姻前に宿していた赤の他人の子であり、それを知って激怒。親子共々殺そうとするが、ためらい無く母の後を追って自害しようとした太炎の心の強さを目にし、あえてその子に北斗曹家拳を伝承することを決めた。一方、実子である章烈山に対しては、その小心翼々たる性格では武芸家にはなれぬとして、政治家としての道を歩ませた。

 その後、太炎が己に復讐しようとしている事を見抜きながらも、あえて北斗曹家拳の極意を伝授。その数年後、一子相伝の掟によって太炎と闘い敗北。死ぬ間際に、己は烈山を心から愛していたからこそ、一子相伝の宿命を背負わせたくなかったのだという事を明かした。

 TVアニメ版では、北斗の道士と共に、張太炎と拳志郎の戦いの行く末を見守り、己の頭上に死兆星が輝いた事から、己と太炎との宿命の闘いが訪れようとしている事を予見した。



 容姿だけで言うならラスボスでもおかしくないお方。とにかく威圧感が凄い。実際、老人にしてはかなり高身長に見える。流石は烈山の実の親といったところか。大厳の場合は、それに加えて相当な闘気も纏っていたからこそ、あの烈山よりも大きく見えたのだろう。闘気の量によって視覚的にサイズが変動するというシステムに関しては今更語るまでもあるまい。

 しかしそれほどの風貌を持っていたにも関わらず、大厳の戦闘描写は一切無かった。実に残念だ。無論、彼の闘うところが見たかったというのもあるが、正規の北斗曹家拳が見れなかったというのが一番残念だ。張太炎が披露した曹家拳は、剛を柔に組みなおした拳であり、繰り出した爆龍陽炎突や幻夢百奇脚も全てオリジナルの技であった。我々は一度として本来の北斗曹家拳を目に出来ていないのだ。太炎は、いずれ自分も弟子に殺される運命だと語っているが、その前にちゃんとした曹家拳を弟子に伝えられるのか非常に心配である。

 彼の大雑把なイメージとしては「拳のためなら無茶苦茶するけど実は息子大好きだったツンデレ父ちゃん」といった感じだが、よくよく考えてみれば彼は特に何も酷いことはしていない。太炎が彼への復讐心で拳を磨いていたために、非情な人だというイメージがついてしまっているだけだ。太炎は母の死を恨んでいたようだが、そんなもん腹の中の子供を隠して嫁いできたほうが悪いに決まっている。しかも彼女の死は自害。大厳に殺されたわけではないのだ(殺す気まんまんではあったが)。それで師を恨むというのはお門違いである。

 だが大厳にとっては、その憎しみは必要不可欠であった。太炎が稀代の天才児であることを見抜いたものの、彼は母を追って死にたがっていた。そんな太炎に拳の道を歩ませるには、復讐という目的を掲げさせるより他に方法はなかったのだろう。北斗曹家拳をより高みに到達させるため、大厳は冷酷で非情な男を演じ続け、いつか太炎が己を超えていく日を待ち続けていたのである。結果的には憎しみの拳では拳志郎には届かなかった。しかし五叉門党二番星から大厳の本心を聞いたことで、太炎の拳は更に格を上げ、遂には大厳を超えるに至った。間接的にとは言え、まさにベストのタイミングで「デレ」コマンドを使う事により、大厳のアイドルプロデュース計画がここに完結したのである。

 普通に考えれば、弟子の育成法としては余りにもヒネくれたやり方ではある。しかし、これはこれでメリットもある。北斗曹家拳は、師が弟子に倒されていくのが宿命なわけだが、これはそう、南斗鳳凰拳と同じシステムだ。だが皆もご存知の通り、サウザーは愛する師オウガイを自らの手で殺してしまったことで、愛を捨ててしまった。師殺しシステムの被害者となってしまったわけだ。しかし同じシステムであっても、大厳のように己を憎ませておけば、弟子は師を殺すことに何の躊躇いも無い。故に殺害後に愛に彷徨する事も無い。つまりこのシステムに関して言えば、オウガイより大厳の育成法の方が、幾分かマシだということである。しかしサウザーが師を殺した後に狂ったのに対し、太炎は師への殺気を隠すために"狂ったフリ"を演じていた。師殺しの前後、マジもんと偽もんの違いはあれど、結局どちらも狂ってしまっているのである。やめちまえそんなシステム。