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赤鯱
あかしゃち



登場:原作(161〜186話)TVアニメ版(123〜138話)
   ラオウ伝激闘の章、真北斗無双、他
肩書:海賊団「双胴の鯱」の船長
武器:発射式の鍵爪、硫酸樽等
CV:郷里大輔(TVアニメ版)
   角田信朗(真救世主伝説)
   稲田徹(真北斗無双)

 海賊「双胴の鯱」の頭(かしら)。シャチの父。かつて拳王に仕えており、時が来れば拳王と共に修羅の国へ渡るはずだったが、拳王の死により実現しなかった。
 その後、自らの部下100人と共に修羅の国へと攻め入ったが、15歳にも満たない修羅一人に全滅させられ、右目と右手を喪失。更には当時15歳の息子シャチを修羅の国に置き去りにしたまま逃亡する結果となってしまった。

 数年後、海賊として海を徘徊していたとき、ケンシロウと遭遇。ケンに敗北し、手下達が全員逃亡してしまったため、自ら操舵してケンを修羅の国へと運んだ。そして、もし息子シャチが生きていたならケンシロウに連れ帰ってもらう約束を交わし、沿岸で側で停泊してケンを待ち続けた。

 その後、ケンがカイオウに捕らわれた事を聞きつけ、手下達と共にカイオウの城へ。海賊流の戦い方でカイオウを怯ませ、ケンを救出し、更には息子シャチと数年ぶりの再会を果たした。しかしカイオウに止めのモリを打ち込もうとしたとき、逆にボウガンの矢で胸を貫かれてしまい、最期はシャチの胸に抱かれながら絶命した。


 TVアニメ版では、失った100人の部下の霊が騒ぐ声を聞いて、修羅の国へと上陸。修羅に襲われていたレイアタオを救いだし、彼女からシャチが生きていることを告げられるシーンが追加された。
 カイオウの城では、ケンをかばってボウガンを受けたり、ケンシロウと共に戦うようシャチに遺言を残したりなどといったシーンも。138話では、手下達による盛大な弔いが行われた。


 『真救世主伝説 ラオウ伝 激闘の章』では、レイナと共に、岸壁でラオウを待ち続けるという形で登場。黒王が届けたラオウの遺灰と、レイナを乗せ、修羅の国へと渡った。




北斗は彼とシャチみたいな親子鷹が非情に稀な作品である。それゆえ印象深くなってしかるべきな筈なのだが、時折彼らが親子だという事を忘れそうになってしまう。それほどに彼らは、各々でキャラを確立しているのだ。赤鯱の場合、ケンシロウを救いだしたあの屈指の名場面だけで、シャチの評価を上回ると言ってもいいだろう。アニメ138話ではストーリー中の1/4は彼の葬儀に費やされている。決して主要キャラとはいえない男のこの優遇振りを見ても、キャラの確立具合がわかるというものだ。

 「天の覇王」への登場を期待していたのだが、残念ながら彼ら双胴の鯱がいかにして拳王軍と結びついたかのエピソードは明らかにされなかった。その代わりといっては何だが、「ラオウ伝 激闘の章」には角田信朗氏のお声で登場。チョイ役ながら、その存在感を大きく示した。しかしその所為で、ひとつ問題が起こった。彼は一体何故に修羅の国に攻め込んだのかという事だ。

 ポイントとなるのは赤鯱の目と腕の喪失である。赤鯱が拳王様に修羅の国に渡るかどうか聞いたあの場面では、彼はまだ五体満足であった。つまりまだ修羅の国には攻め入っていないという事だ。ではこの場面はいつ頃の事なのだろう。

 ヒントとなるのは「この国で二人の男を倒さねばならぬのだ。同門・・・そして弟と呼ぶ二人の男を」という拳王様の台詞と、「やつを倒せばもうこの国はオレ達がもらったようなもの」という野盗の台詞である。二人の弟、つまりケンシロウとトキ。トキがまだこのときカサンドラに幽閉されていたとすれば、この台詞はおかしい。トキを倒した後でもおかしい。よって最低でもカサンドラ崩壊〜トキ敗北、の期間内であることが予想される。そして、野盗の台詞によると、拳王様はこの時、既にこの国を半ば手中にしていると考えられる。ということは、サウザーの聖帝軍が壊滅し、事実上拳王軍の一強時代に突入した後である可能性は高い。よって導き出されるのは、この場面はサウザー死後〜トキ敗北、の頃であると推測される。コウリュウを倒す前後といったところか。

 そしてその後赤鯱は修羅の国へと攻め込み、目と腕を喪失した。今までならこれは、拳王様がお亡くなりになり、その意思をついで半ばヤケクソで特攻したものだと考えられていた。しかし、それを覆したのが「ラオウ伝 激闘の章」だ。この物語の中で、赤鯱は既に目と腕を喪失している。だが、まだ拳王様は生きているのだ。つまり赤鯱は、拳王様の「ここで待て」という命令を無視して、独断で修羅の国へと攻め込んだということになってしまうのである。一体彼が命令に逆らってまで修羅の国へと赴いた理由はなんだったのだろうか。

 攻め込んだ理由ではないが、海を渡った理由ならある。それはコセムだ。命をかけて海を渡り、拳王様に修羅の国を救うよう依頼したあのボロである。(当時はボロではないが)。紳士である拳王様が、大事な客人であるコセムに再び命をかけて海を渡らせたとは考えにくい。赤鯱に、彼を修羅の国まで送るよう命じた可能性は十分にあるだろう。そしてこのとき、その事件は起こったのだと思われる。

 ここからは完全な推測だが、おそらくコセムを無事上陸させた後、彼らは修羅に絡まれたのではないかと思う。そして、彼らはそれを撃退したのだ。砂蜘蛛程の達人でない修羅なら、彼らでも十分に戦えることは、アニメで既に証明されている。ケンシロウの船をボロクズにしたあのくらいのラッシュをかければ、並の修羅ならすぐ倒せるだろう。そして、これが彼らに火をつけたのではないかと思う。修羅といってもこんなもの。手足れ揃いの俺達100人なら、修羅の国に先制攻撃をかけることも出来る。ひとつの勝利が、もともと好戦的な彼らに自信を与え、やがてそれは全員に連鎖した。今攻め入る事が命令違反だと知っている赤鯱も、100人の部下達による勝鬨と空気に飲まれ、正気を失った。武器を手に、一気に浜へと突撃する男達。そしてそこに待ち受ける一人の天才修羅。待ち受けていたのは、最悪の結末だった……なんてのはどうか。

 無論これは最初に書いたとおり、わたしの勝手な想像だが、これを裏付ける理由は有る。まず、息子シャチがその船に同船していたという点だ。もし赤鯱たちが最初から修羅の国に攻め入る気で海を渡ったのなら、そんな危険な任務に息子を同行させていただろうか。本来ならコセムを送り届けるだけの、比較的安全な航海だった故に、シャチも同船を許されていたのではないかと考えられる。もう一つは、赤鯱が100人の部下達の事をいつまでも引きずっているという点だ。確かにかわいい部下達だったかもしれないが、少し思い入れが強すぎる気がする。戦争を仕掛けて死んだのなら、それは戦士としての生き様を全うしたという事であり、ここまで引きずるのは変だ。これはもしかしたら、赤鯱が彼らの死に責任を感じているからなのではないだろうか。上記のような話があったとした場合、赤鯱には彼らを止める事が出来る立場にあった。ちゃんと拳王様の命令どおりに自重していれば、彼らは死ななくて済んだはず。彼らの命は己の愚さ故に失われたのだと感じているからこそ、いつまでも100人の部下の霊を背負って生きているんじゃないだろうか。