TOP

トキ



登場:原作(32話〜77話)TVアニメ版(38話)
   トキ外伝、トキ伝、北斗無双、北斗が如く、他多数
肩書:北斗四兄弟の次兄
流派:北斗神拳
CV:土師孝也(TVアニメ、AC版、PS版)
   木村雅史(パンチマニア)
   佐藤晴男(激打2)
   田中秀幸(新・北斗の拳)
   堀内賢雄(真救世主伝説、スマショ、リバイブ)
   東地宏樹(天の覇王)
   関智一(北斗無双、DD北斗の拳)
   諏訪部順一(イチゴ味)
   咲野俊介(北斗が如く)
  [少年期]
   鳥海勝美(TV)
   太田哲治(真救世主伝説シリーズ)
   岡本信彦(天の覇王)

身体データ
身長:188cm
体重:95kg
スリーサイズ:125・87・107
首廻り:43cm
(※別誌では体重98kg、B130 W92 H105との記述もある)


 北斗四兄弟の次男。ラオウカイオウの実弟。北斗神拳の歴史の中で最も華麗な技を持ち、死ぬ直前に天国を味わうという北斗有情拳の使い手。死の灰によって不治の病に冒されており、残る生を人の命を助けるために費やす聖人。

 ラオウ、ケンシロウと共に修羅の国から送り出され、リュウケンの養子に。兄ラオウを超えたいという思いのもと、北斗神拳伝承者を目指す道を選んだ。やがて才能が開花し、心技体すべてに非の打ち所のない拳士へと成長。次期伝承者の座に最も近い男であったが、ケンシロウとユリアをかばって死の灰を浴び、不治の病を発病。伝承者への道を諦め、北斗神拳を用いて人々を救う医療の道へと進んだ。

 旅の中で、病人が捨てられる絶望の村へと辿りつき、北斗神拳の力で村人達の病を治療。蘇った村は「奇跡の村」と呼ばれたが、拳王軍によってトキが捕らえられ、その後トキに化けたアミバが村を支配。人々は「木人形」と呼ばれる秘孔の実験台にされ、村は死に絶えた。

 カサンドラの牢獄に幽閉されていたが、訪れたケンシロウの手によって解放。その後、マミヤの村へと訪れ、ラオウと闘おうとしていたケンシロウを静止。秘孔でケンシロウの動きを封じ、己とラオウと闘いを見せることで、伝承者の拳を高めようとした。

 その後、秘孔心霊台によってレイの寿命を延ばしたり、サウザーに挑もうとするケンシロウを助けに向かったりと、主にサポート役として活動。だが死期が間近に迫ったことから、残る生を拳士として全うしたいと願い、実の兄ラオウとの最後の戦いへ。「兄の拳を自らの手で封じる」という幼き頃の約束を果たすため、死力を尽くして闘うが、刹活孔による偽りの剛拳は戦いの中で徐々に弱り行き、敗北。拳士としての自分に止めを刺され、余生は安らかに生きるよう告げられた。

 晩年は診療所にて患者達の治療を続けていたが、リュウガの襲撃を受け、へと連行。ケンシロウから怒りを引き出すための生贄とされた。だが止めは刺されておらず、訪れたケンシロウに対し、リュウガもまた時代のために犠牲となった男であることを告げ、この世の平安をケンシロウに託して天へと帰った。


 TVアニメ版では、奇跡の村へと現われた頃から既に白髪と化しており(原作ではまだ黒髪)、それに合わせてアミバの髪も白髪にされた。尚、声を務められた土師孝也氏は、アミバの声も担当されている。


 「トキ外伝 銀の聖者」では、トキを主人公とした物語が展開。世話役のラモと共に「奇跡の村」を蘇らせ、雲のジュウザと協力してZEED等の盗賊達から村を守るというエピソードが描かれた。
 その後、メディスンシティーに出張診療へと赴いた隙に、村はアミバの支配下に。自らは拳王軍に足止めされ、リュウガを退けるも、拳王との闘いに身体が耐えられず、そのままカサンドラに幽閉。生きる意味を見失うが、ケンシロウやユリアが生きていることを知り、仮死状態となってケンシロウの到着を待ち続けた。
 ラオウとの最後の闘いでは、自分が兄を超えねばならないという宿業に捉われていた事を知り、本当に救われたのは自分であった事を知り、涙した。
 過去編では、北斗神拳伝承者に選ばれた直後に死兆星を目撃。同時に、自らが拳を学んでいたのは孤独に怯えていたが故であることを悟り、死の灰を浴びることで伝承者の道を自ら閉ざした、という設定になっていた。


 「ラオウ外伝 天の覇王」では、自らが救世主と呼ばれ始めた事を拳王軍に危惧され、刺客として送られてきたアミバと対決。有情拳で撃退したものの、ウサの口より、既にアミバが自らになりすまして多くの人々を殺していた事実を知らされた。その後、覇道に手を貸せとのラオウの要求を拒否し、更にラオウとの戦いをも拒んだため、カサンドラにて幽閉される事になった。

 「真救世主伝説北斗の拳 ラオウ伝 殉愛の章」では、怪我人として運ばれてきた幼馴染のレイナと数年ぶりに再会。ラオウの覇道に協力するよう頼まれるが、力で押さえつけた平和に意味は無いとして断った。後に、聖帝軍との戦いで背に矢を受けたレイナを再び介抱した。

 「真救世主伝説北斗の拳 ユリア伝」では、死を目前に控えたレイから、南斗最後の将に渡して欲しいといって白髪の束を受託。後に患者として南斗最後の将が運ばれてきたため、遺髪を渡し、レイの凄絶なる生き様を伝えた。

 「真救世主伝説北斗の拳 トキ伝」では、死の灰を浴びる以前から、既に重病に冒されていたという設定に。ケンシロウに伝承者を託すという意味を込め、自ら死の灰を浴びることで、その意思を伝えた。その後、女医のサラと共に旅立ち、数多くの人々を治療。カサンドラから解放された後、一旦村へと戻るが、ラオウとの決着の為に再び出発。敗北するものの、生きて再びまた村へと戻り、サラと再会した。

 真救世主伝説シリーズでは、総じて「トキの村」なる場所に定住している。



[解説]
 北斗の拳の中盤以降は、ケンシロウとラオウ様の対決模様が話の本筋にあった。その中で多くのキャラクターが登場したが、彼らは所詮他所様。「兄弟喧嘩」を、周囲からやいやい言っているだけのガヤに過ぎなかった。そんな激烈なる喧嘩の中に唯一割って入れたのは、もう一人の兄弟であるこの男。二人を凌駕する才能を持ちながら、その優しさゆえに拳の道を断たれた悲劇の天才、トキであった。

 ケンシロウはトキの事を「心技体 どれをとっても非の打ち所が無い」と評していたが、それは正に的を射た表現であった。特に「心」の部分は、聖者と呼ばれる程の優しさを持っており、問題児だらけの作品の中で、特に際立っていた。北斗の拳で本当にマトモだったと言える拳士は、このトキとシュウくらいのものだろう。そんな二人が「不治の病」と「視力喪失」という大きなハンディを背負わされているというのが切ない。不幸な時代だ。

 そしてもちろん「技」「体」のほうも、作中最高と言っていい程の能力を備えていた。しかし技はともかく、体のほうは、死の灰を浴びたことによって大きく損なわれてしまった。不治の病に冒された彼の体は、少し動いただけで咳き込んで吐血するほどに弱りきっていた。
 しかし、それでも彼は強かった。北斗の拳が誇る最強ツートップであるケンシロウとラオウ様に全く引けを取ることなく、互角以上に渡り合ったのである。もし彼が病を得ず、北斗神拳の伝承者となっていたらどうなっていたのか。ケンシロウやラオウ様を更に凌ぐほどの拳士となっていたのだろうか。訪れる事のなかった未来への想像力をかき立てられてしまう程に、我々は彼の底知れぬ才能に魅せられてしまっているのだ。


 しかし、彼はストーリーの流れに大きな影響を与えたというわけではない。彼は、初めて登場したときから既に死ぬことが決まっていた。ケンシロウとラオウに並び称されようとも、いずれ脱落することは確定しており、極論を言えば「トキがいなくても話は成り立っていた」のだ。だがその場合、北斗の拳という作品が名作たりえることは無かっただろう。ケンシロウとラオウ様を骨太なキャラクターへと成長させ、作品を成功へと導いたのは、トキという存在があったからこそなのだ。

 当初、トキはケンシロウが成長するためのキーマンとして登場した。彼とケンシロウの再会をラオウ様が恐れていたという設定からもそれは明らかだ。その役目を果たすが如く、トキはラオウに決死の闘いを挑み、己の死と引き換えにケンシロウを成長させようとした。だが結局ケンシロウを秘孔縛から解き放ち、彼をラオウと互角に戦わせたのは、リンの涙がもたらした「心の力」であった。トキの影響が無かったとは言わないが、当初予定されていたほどの「キーマン」としては描かれなかったのだ。

 その後も特にトキの力を借りることなく、結局ケンシロウはサウザーまでも撃破した。その頃のケンはもう殆ど成熟しきっており、トキが手を貸すような存在でもなくなっていた。

 そこでトキの役割は大きくシフトチェンジされた。作品が目指すゴールはケンシロウとラオウ様の最終決戦。そこに今足りないのは、ケンシロウの実力より、むしろラオウ様のバックグラウンド。そこにトキを大きく絡ませていくために生み出されたのが、「ラオウとトキは本当の兄弟」という設定であった。


 そして迎えし宿命の兄弟対決。もはや戦える身体ではないにも関わらず、死と引き換えに得た剛拳でトキはラオウと互角以上に渡り合った。兄を超えたいという思いのため、そして幼き日の約束を果たすために。優しき男の中に残されていた拳士としての熱き炎は、トキという男の新たなる一面を見せた。そして弟の非情なる運命に涙したラオウもまた、今まで決して見せることの無かった覇王の情を垣間見せた。

 「もし俺が道を誤ったときはおまえの手でおれの拳を封じてくれ」。かつてトキは、ラオウよりそう告げられた。その約束を果たすことはできなかったが、トキの命を賭けた闘いは、ラオウに枯れたはずの涙を呼び戻した。愛を捨てて覇道を往く事が誤った道なのだとすれば、トキはその彷徨せし兄を僅かながらも正しき道へと引き戻したと言える。この僅かな揺らぎが後のユリアへの涙、哀しみに繋がり、そしてあの悔い無き最期に繋がったのならば、それはもうラオウの拳を封じること以上に、彼を救済したと言えるのではないだろうか

 こうしてケンシロウとラオウは、更にキャラクターとしての厚みを増した。特にラオウは、人生における最大の強敵と呼べる男を倒した事で、もはや主人公に比肩する程の存在にまで高められた。トキという最高の男が犠牲となったことで、ケンシロウとラオウという最強にして最高の二人が完成したのである。


 その後、刹活孔によって全ての力を使いきったトキは、もはや生きているのがやっとの状態となっていた。にも関わらず、彼の「お役目」は終わらなかった。リュウガによって、ケンシロウを怒らせるための"生贄"とされたのだ。
 トキの最期に対しては、色々な意見があるだろう。ラオウ様との闘いで死んでいたほうが良かったという声も多く耳にする。せめてリュウガなどというサイコキラーと一緒ではなく、医者を続けながら静かに最期を迎えさせてやりたかったという思いは私も同じだ。だが彼の役割は、二人の兄弟のための礎となること。そのために彼は再び血を流し、自らの命を引き換えに、哀しみと怒りを力へと変える事をケンシロウに教えた。それは、「ケンシロウを成長させる」という、彼が一番最初に与えられた役目でもあった。


 結局彼は、最後まで主役にはなれない、助演男優賞どまりの男であった。しかしそれは彼自身が選んだ生き方。ケンシロウとユリアを助けるため、一人シェルターの外に残ることを選んだ時から、彼の月見草としての人生は決定されたのだ。
 だがトキに後悔はなかったであろう。彼がケンシロウを助けたのは、己にはない救世の力をそこに見たから。そしてその読み通り、成長したケンシロウの手によって、世界は光を取り戻した。トキの望んだ夢が、医療により多くの人々の命を救うことなのだとすれば、ケンシロウによる救世は、そのトキの夢を一番大きな形で叶えたという事になる。

 そして暴走した兄ラオウを止めるという約束もまたケンシロウによって果たされた。本音を言えば自分の手で成し遂げたかっただろう。だがケンシロウにとっての強敵であり、そしてラオウにとっても唯一の強敵であったトキは、二人の一番近くでその戦いを見届けることができた。そしてトキは思ったはずだ。199X年のあの日の決断が、間違っていなかったことを。全てが終わったとき、兄ラオウの全てを目指した男として、彼は天国でこう叫んだことだろう。「わが生涯に一片の悔いなし!」と。






●シェルターに入れなかった件

 199X年、世界は核の炎に包まれた。いくら北斗神拳を身につけようとも核に耐えうるはずもなく、トキとケンシロウ、そしてユリアの三人もまたシェルターへの避難を余儀なくされた。だが彼らが辿りついたとき、中は既に避難した子供達によってスシ詰め状態。中にいた養育施設の保育士と思わしき女性は、トキ達に対してこう言った。「ここはもうひとり…いえ…どうつめてもふたりまでです!」と。思案の末、トキは自らが犠牲となることを選び、ケンとユリアを中へと押し込んで扉を閉めた。そして死の灰を浴び、伝承者への道を断念したのだった。

 トキにまつわるエピソードの中でも特に有名なこのシーン。だが読者の心に残ったのは、トキの優しさではなく、別ポイントへの疑問であった。

描写を見る限り、
トキ一人分が入れるだけのスペースはあったのではないのか?

例え入れなくても
子供を肩車すれば良かったのではないのか?
と思えてしまうのだ。





しかし、多くの人は勘違いをしている。
ケンシロウ達が入ったのはシェルターではない。
シェルターへと通じる巨大なエレベーターなのだ。


 通常、核シェルターというのは地下深くに作られるもの。あそこに居た人々は、これからその昇降機に乗って地下のフロアへと降りていく所だったのである。トキが入れなかったのは、スペース的な問題ではなく、重量制限にひっかかったからなのだ。

 「ババアが"どう詰めても"って言ってるじゃねーか」と反論される人がいるかもしれない。だがそれは先入観が生んだ誤解である。
 よく見ると、女性は「どうつめても」と、平仮名で喋っている。あのギュウギュウ詰めの状態を見て我々は「どう詰めても」であると勝手に思い込んでしまっていたが、実はあの台詞の漢字表記は「積めても」だったのだ。つまりあと大人2人分の積載量が限界だと彼女は言っていたのである。実際、「北斗の拳 トキ外伝 銀の聖者」では、まさに今語った設定がそのまま採用されている。


なぜあれがエレベーターだと断言できるのか。
それは、あの空間がシェルターと呼ぶにはあまり狭すぎるからだ。

 扉が閉められた後、ケンシロウ達あの中で2週間もの時を過ごした。もしケン達が入ったあの部屋がシェルターなのだとすれば、中にいた人たちは2週間もの間、あのスシ詰め状態の中、立ちっぱなしで過ごした事になる。ケンシロウはともかく、ユリアや子供達にそんな真似が出来るはずが無い。つまりあそこは人間が居住する場所ではないということ。あの部屋の先に、もっと快適に過ごせる場所…最低でも全員が横になれるだけの広いスペースが必ず存在していたのだ。その場所こそがシェルターであり、あのスシ詰め部屋はそこに移動するまでのエレベーターに過ぎないと考えるのが自然なのである。
 同時に、これによって「肩車をすれば入れた」という意見は完全に論破できたと言えるだろう。入れたところでその後どうすんねんと。


 そして、トキがあの場所で被爆していたことも重要な事だと考える。あそこまで死の灰が来ていたということは、通路の先には扉はなく、この部屋の扉が最初の遮蔽物であったということ。だが通常、核シェルターというものは二重扉の構造で作られる。つまりトキが閉めたあの扉が第一の扉であり、その更に奥に二枚目の扉があった可能性が高い。そしてその先にあった部屋こそがシェルターだ考えられるのだ。


 以上の事から、トキが早合点して自爆したという考えが間違いであることはわかってもらえたかと思う。彼が扉の中に入れなかったのは間違いなく、そしてそれが彼の宿命だったのだ。
 正直、この場面においてより問題視すべきは、この三人が一緒に居たことの方だ。北斗の寺院は険峻な山の上にある。にも関わらず、彼らの駆けつけたシェルターにこれだけ多くの民間人がいたということは、きっと三人で市街地へ遊びに出かけていたからだろう。修行中の身でありながら美人のナオンを連れて三人でイチャイチャしてるからこういう目に遭うのである。この日も汗くさい道場で孤独に修業に励んでおられたからこそラオウ様は難なく被害を回避することが出来たわけであり、それつまり非リアこそが最強無敵であることの証明なのである。




●奇跡の村での出来事は実際にあったのか?

 かつて死を待つだけの者達が捨てられし絶望の村があった。だがトキという男が起こす奇跡の力によって、人々はみるみる快復。村は活気を取り戻した。しかし、トキが村を空けた数日の間に盗賊達が村を襲撃。多くの村人が虐殺され、その凄惨な様を目にしたトキは、怒りの余りに我を忘れ、盗賊たちを皆殺しにした。例えようも無い悲しみを得たトキは、自らの夢が戯言であることを悟り、冷酷な殺人鬼へと生まれ変わった――――。

 これがアミバの語った、奇跡の村の悲劇の顛末である。が、もちろん最後の「冷酷な殺人鬼へ〜」のくだりはアミバによる創作であり、事実ではない。

 ではそのひとつ前、「凄惨な様を目にしたトキは、怒りの余りに我を忘れて盗賊たちを皆殺しにした」。これは果たして事実なのだろうか。
 「この村でやつを襲った悲劇は本当だ」とアミバは言っているが、悲劇というのは盗賊に襲われたという所までであり、その盗賊たちをトキが皆殺しにしたのかまでは言及されていない。果たしてやったのは本物のトキなのか。それともトキに成り代わったアミバの所業なのか。


 「ラオウ外伝 天の覇王」の中では、トキが盗賊のリーダーだけを殺し、それに慄いて部下達は逃亡するという内容に変更されていた。かなりマイルドになっているとはいえ、実行者はトキということになっている。

 一方で「トキ外伝 銀の聖者」においては、トキは村に戻る前に拳王軍に捕えられた。その後、トキに扮したアミバが盗賊たちを村にけしかけ、それをアミバ自身が殲滅させるという自作自演を行った。つまり実行者はアミバとして描かれている。

 このように作品によって解釈も違うため、正しい答えを導き出すことは難しい。しかし、彼は「聖者」と呼ばれるほどに優しい心を持った男。いくら激怒したとはいえ、あのような凄惨な殺戮を行ったりするだろうか。


 いや、する。彼はしちゃう男だ。

 トキには、幼い頃に愛犬ココを射殺され、怒りでプッツンしたという過去がある。自身の5倍はあろう身の丈の大男を蹴り倒し、マウントをとってボッコボコにしたのだ。
 その後、厳しい修行によって精神を鍛えられ、さらに大人になったことで、彼は何事にも動じない平常心を手に入れたかに思われていた。しかし結局芯の部分は治っておらず、結局彼は奇跡の村にて人生二度目のプッツンをしてしまったのだ。

 北斗神拳の真髄は怒りだという。だが怒りの余りに我を忘れてしまっては、それを力に変えることは出来ない。高ぶった感情を制御できないという事がトキの唯一の弱点であり、彼が哀しみの極地である無想転生を会得できなかった理由なのかもしれない。




●サウザーの体の謎をどこで知ったのか

 北斗神拳を無力化するサウザーの「帝王の体」。その秘密は、心臓の位置が左右逆、そして秘孔の位置も表裏逆という特殊な構造にあった。その謎を解けぬが故に、拳王様はサウザーとの戦いを避けていた。だが覇権を成すためにはいずれ決着をつけねばならぬ相手。密かに謎の正体を探っていたと考えられる。「真救世主伝説 ラオウ伝 激闘の章」では、軍を挙げて諜報にあたらせていたくらいだ。

 だがその答えは思いのほか直ぐ近くにあった。トキがご存知だったのだ。長らく監獄に囚われ、外界との接触を絶たれていた男が、どこからそんな情報を仕入れることが出来たのか。

 そもそもトキは「体の謎の秘密」を知る以前に、「北斗神拳が通用しない」という事をどこで知ったのだろうか。謎も勿論だが、こちらにしたってそうそう知りうる機会があるとは思えない。
 この事実を知っていたのは、ラオウのトキの二人だけだった。知りえる機会が限られていることを考えると、二人は同じタイミングでこの秘密を知った可能性が高い。つまりは北斗神拳の修業時代に発覚したと考えられる(ラオウ外伝では拳王軍創設後のサウザーとの戦いで発覚していたが、ここでは無視する)。

 南斗十人組手が行われた事を考えても、北斗と南斗は修業時代から交流があった可能性が高い。ならば年齢の近いラオウ様とサウザーが散打を行う機会もあったはず。そしてその中で、ラオウ様はサウザーに秘孔が効かない事に気付き、そしてそれを見ていたトキもまた異常を察したのだ。
 その際、ラオウ様は謎の正体を特定することが出来なかった。だがトキには思い当たる節があった。心臓をはじめとした全ての内臓が左右逆に作られるという「内臓逆位」。5000人に1人といわれるその身体を、サウザーは有しているのではないかと気付いたのだ。何故ならトキは、北斗神拳を医学に活かしたいと考え、その分野の知識に長けていたからだ。

 あとはその仮説が事実であるかを確かめるのみ。その方法は、カルテを確認することだ。サウザーが己の体の事を把握していたということは、核戦争が起こる以前に、然るべき医療機関で診察を受けたという事。ならばその際に作られたカルテが存在するはず。トキは若くして医院のようなものを開いていたのだから、医療界にも繋がりがあったと考えられ、独自のコネクションを使ってサウザーのカルテを目にし、己の仮説が正しかったことを確認したのだ。




●トキの故郷問題

 トキがおよそ6〜7歳と思われし頃、彼は兄ラオウ、そして赤子のケンシロウと共に国を発ち、海を渡って日本へと赴いた。北斗神拳伝承者リュウケンの養子となり、北斗神拳を学ぶためだ。
 しかしケンシロウはともかく、ラオウ、トキの二人はすぐにリュウケンの養子となったわけではないらしい。第100話で描かれた回想シーンによると、彼らはどこか別の場所で修練を積んでいたようだ。そして両親が死んだ後、リュウケンと初対面を果たし、養子入りしている。


 そしてその場所には、彼らの両親と、後にラオウとトキが入る墓も建立されていた。
 数年後、成長してこの地に戻ってきたトキは、このように発言している。

「ここはわたしの故郷
 わたしはここで生まれそだった」



 だがこれはおかしい。

 先述の通り、トキはおよそ6〜7歳頃に修羅の国からやってきた。あの墓がある場所で暮らしたのは、成長具合から見ても長くて1〜2年程度だと思われる。にも関わらず、あの場所を「故郷」と言い、「生まれそだった」と発言しているのだ。これは一体どういうことなのか。

 そもそも、まずあそこに両親の墓があることがおかしい。トキ達の母は、修羅の国にある凱武殿で、ケンシロウたちをかばって亡くなっている。養子入りするよりもかなり前であるし、彼女の遺体はカイオウが盗み出して溶岩地帯に埋めた。故に日本に墓があるはずが無いのだ。



 この答えを紐解く鍵は、リュウケンの養子となる前にラオウとトキが暮らしていた場所にある。

 あそこに立てられていた墓は4人分。ラオウ、トキ、死んだ母親、そしてもう一人はトキ達の父親の分であった。もしかしてあの地は、トキ達の父親が暮らしていた場所なのではないだろうか。海を渡ったラオウとトキは、父親を頼ってあの場所へと訪れ、そこで共に暮らしていたのではないか。トキ達の父親に関しては、作中で殆ど言及されていない。「ラオウ達を養子として引き取ってもらうようリュウケンに頼んでいた」という以外に情報が無いのだ。ならば修羅の国でなく、日本に住んでいたとしても特に矛盾はない。
 ラオウ、トキが日本へ渡る事になったと知り、彼らがすぐにリュウケンの養子となれないと知った父親は、一足先に日本へと渡り、彼らの住む場所、そして修行できる環境を用意していたのではないだろうか。だが病によって死期が近いと感じた父親は、二人を養子とする件をリュウケンに頼み、間も無く死んだのだ。これで少なくとも、「父親の墓」があそこにあった事に関しては辻褄があう。

 だが問題は母の方だ。彼女は確かに修羅の国で死んだ。なのに何故日本でもう一度死んだことになっているのだろう。

 だがよく内容を見返してみると、別にあの時に両親が死んだとはどこにも書かれていない。「泣いても父や母は帰って来ん」とラオウが発言しているだけで、つい最近二人が死んだとは書かれていないのだ。つまり、トキの涙は、つい先日の父の死を受けてのものであり、それに合わせて母親の死に対しても「思い出し泣き」をしていただけとも考えられるのだ。

 それでも母の墓があるのは不自然だが、これはおそらく分骨であろう。修羅の国を出るときにラオウが遺骨の一部を持参したのだ。本来ならそんな事は許されないだろうが、カイオウが変なところに埋め直してくれていたおかげで、割と簡単に持っていくことができたのだと思われる。


 だがこの問題の真の謎は他にある。そう、大人になってからのトキの発言だ。
「ここは私の故郷。わたしはここで生まれ育った」
トキが修羅の国で育ち、そして海を渡って日本へ来たことは確実であり、明らかに発言内容と矛盾している。何故トキはこのような嘘を言ったのか。


 しかし、この謎を解く鍵もやはり彼らの父親にある。

 先ほど、彼らの父親は「ラオウとトキが日本で暮らせる場所を用意するために日本へと渡った」と書いたが、それをさらに飛躍させて考えてみる。父親が二人のために用意したあの場所は、新たに用意したものではなく、もともと「実家」だった場所なのではないだろうか。つまり二人の父親は日本人だったということだ。

 その場合、新たな可能性が生まれる。トキは本当にあの場所(墓のある場所)で生まれていたという可能性だ。

 トキを身篭った後、両親は二人揃って父親の故郷である日本へと里帰りをしており、そこでトキを出産した。そしてトキは暫く日本で育てられ、数年後に修羅の国へと戻ったのだとすれば、「ここは私の故郷。わたしはここで生まれそだった」発言も矛盾はなくなる。
 原作でトキが修羅の国に居る姿は確認できるが、一番若いものでも4〜5歳。つまりそのくらいの年になるまでは日本に住んでいたとしてもおかしくはないのだ。


流れをまとめると

・母者、カイオウ、ラオウを修羅の国で出産
       ↓
・父者と母者、トキを身篭った後に日本へ
       ↓
・母者、日本でトキを出産。
       ↓
・トキ、3歳頃まで日本で育つ←「生まれ育った」発言成立!
       ↓
・トキ、両親と共に修羅の国へ
       ↓
・母者死亡。溶岩地帯に埋葬される。
       ↓
・ラオウとトキの日本行き決定
 父者、先に日本の実家へ
       ↓
・ラオウとトキ、海を渡り父者の実家へ
 二人で修行の日々を送る
       ↓
・父者死亡。母者の遺骨(分骨)と共に埋葬される
 ラオウとトキはリュウケンの養子に


 「殆ど情報がない」という父親の設定を逆手に取り、ものすごく都合よく解釈することで、なんとかこじつけられました。ありがとうございました。